開業医と勤務医の格差はある?年収や働き方の違いを解説
目次
- 開業医と勤務医の格差!年収の違いを紹介
- 開業医の年収は患者数や診療科目によって異なる
- 患者数による年収の違い
- 診療科目による年収の違い
- 開業エリアによる年収の違い
- 開業する年齢による収入の違い
- 勤務医の年収は職場や年齢によって異なる
- 診療科目による年収の違い
- 職場による年収の違い
- 病院の規模による年収の違い
- 病院のあるエリアによる年収の違い
- 年齢による年収の違い
- 開業医と勤務医の働き方の違いは?メリット・デメリットを徹底比較
- 開業医として働くメリット
- 1.自分が理想とする医療現場を実現できる
- 2.頑張った分だけ収入がアップする
- 3.業務量をコントロールできる
- 4.病院経営に関われる
- 5.人間関係のストレスを減らせる
- 6.自分の個性を出しやすい
- 開業医として働くデメリット
- 1.経営に関するリスクを背負うことになる
- 2.幅広い業務に対応する必要がある
- 3.トラブルに対して責任が大きい
- 4.上に立つ医師としてのプレッシャーが大きい
- 5.激務になってしまう可能性もある
- 6.他の病院との競争に巻き込まれやすい
- 勤務医として働くメリット
- 1.安定した収入を得られる
- 2.さまざまな専門知識を習得できる
- 3.福利厚生が充実している
- 4.トラブルに対し組織で対応してもらえる
- 5.病院内で勤務医同士のつながりができる
- 勤務医として働くデメリット
- 1.開業医ほどの収入は期待できない
- 2.業務量をコントロールしにくい
- 3.自分と病院の治療方針が合わないことがある
- 4.病院内の人間関係に疲れることがある
- 5.希望の部署で働けるとは限らない
- 勤務医として年収をアップさせる4つの方法
- 1.病院側と給与アップの交渉をしてみる
- 2.アルバイトをすることで収入アップを狙う
- 3.開業医を目指す
- 4.高い給与をもらえる病院に転職する
- 開業医と勤務医の格差は大きい
勤務医として働いていると、開業医との年収の格差が気になることもあるかもしれません。診療科目や病院の経営状況などによって年収は変わるため、必ずしも開業医の方が高収入なわけではありませんが、平均年収で比較すると開業医と勤務医の格差は大きいといえるでしょう。
本記事では、開業医と勤務医の年収格差や働き方の違いについて詳しく解説します。勤務医として年収をアップさせる方法についても解説しますので、ぜひチェックしてください。
開業医と勤務医の格差!年収の違いを紹介
厚生労働省が発表した「第21回医療経済実態調査(医療機関等調査)」によると、開業医と勤務医の平均年収は以下のとおりです。下記の数値には、給与だけでなく賞与なども含まれます。(※)
- 開業医の平均年収:約2,748万円
- 勤務医の平均年収:約1,488万円
数値だけを単純に比較すると、開業医の年収は勤務医の年収の約2倍であることが分かります。条件によっても異なりますが、勤務医として働き続けて病院長などの役職に就いたとしても、開業医の年収には届かないといったケースもあるでしょう。
ただし、上記の数値はあくまでも平均値であり、勤務医の年収は、国公立の病院に勤務しているか、医療法人に勤務しているかなどによって大きく異なります。また、勤続年数や病院の規模によっても変わってきます。
開業医の場合は、勤務医のように病院から給与をもらうわけではありません。年間の収入と支出の差が年収となります。患者数が多ければ収入アップにつながりますが、勤務医とは異なり、病院の維持費などさまざまな支出も発生します。高収入なイメージのある開業医ですが、必ずしも安定して高収入を得られるとは限らないため注意が必要です。
開業医の年収は患者数や診療科目によって異なる
開業医の平均年収は約2,748万円ですが、実際の年収は診療科目や患者数、経営状況などによって大きく変動します。それぞれの要因による年収の違いについて、詳しく見ていきましょう。
患者数による年収の違い
自分の病院を立ち上げた後、順調に患者を集めることができれば大きな収入を期待できますが、うまく集客できないと収入を得られず、経営が傾いてしまうリスクもあります。
病院を建設したときの借金を返済できない、雇っている看護師に給与を支払えなくなるといったこともあるかもしれません。そのため、開業医を目指すなら医師としての技術だけではなく、安定した病院運営をするための知識や経営手腕も必要です。開業医になったからといって、すぐに高収入を得られるわけではないことは覚えておきましょう。
診療科目による年収の違い
開業医の年収は、診療科目によっても異なります。一般的な診療科目としては、内科・外科・小児科・眼科・耳鼻咽喉科・皮膚科・産婦人科・整形外科・精神科などが挙げられます。
中でも、小児科や皮膚科・整形外科の平均年収は高い傾向です。年収だけで診療科目を決めるべきではありませんが、経営を安定させたい場合は、考慮しておくとよいでしょう。
開業エリアによる年収の違い
開業するエリアによっても年収は大きく異なります。人口や競合となる病院の数など、さまざまな条件が関係するため一概には言えませんが、一般的には首都圏より地方で開業する方が高い年収を得られる傾向にあります。地方の開業医の年収が高くなる理由は、競合となる病院が少ないことや家賃が安いことなどです。
首都圏と比較すると、ライバルとなる病院が少ないため、自分の病院を選んでもらえる可能性が高くなります。病院が少ないエリアであれば、継続的に利用してもらえることも多く、安定した収入が期待できます。開業予定地の近くに既に同じ診療科目の病院があるというようなリスクも少ないでしょう。
家賃や土地代が安いことも地方で開業する大きなメリットです。自分の病院を開業する場合は、テナントビルを借りたり、土地を購入して建物を新築したりしなければなりません。首都圏で開業しようとすると、多額の家賃や土地の購入代などが発生し、大きな負担となるケースもあります。経費が膨らめば膨らむほど、その分開業のための借入金などの返済に時間がかかる場合もあるかもしれません。
地方なら比較的安い費用で開業することが可能です。開業に必要な費用が抑えられれば、それだけ経営を安定させやすくなるはずです。もちろん運営内容にもよりますが、借金をしている場合は早い段階で赤字を減らし、経営を黒字化できるため、リスクの回避につながる手段ともいえるでしょう。そのため、首都圏の病院で経験を積んでから、地元に帰って開業するというパターンも少なくないようです。
開業する年齢による収入の違い
開業する年齢によって、生涯で得られる収入は異なります。当然ですが、早いタイミングで開業した方が多くの収入を得られるでしょう。例えば、30代で開業した場合、その後の経営が順調であれば、約40年間開業医として高い収入を得ることができます。一方、実績や経験、医師としての技術がないと、開業しても患者を集められない可能性があるということに注意が必要です。
40代や50代で開業する場合、開業医として活躍できる期間は短くなりますが、スキルや実績があることから、患者からの信頼を得やすいと考えられます。患者からの信頼を獲得できれば、継続して通院してもらえるため、安定した収入を得ることができます。
金融機関からの信頼を得やすいことも、40〜50代で開業する大きなメリットです。うまく実績や経験などをアピールすれば、融資が受けやすくなります。なお、返済までの期間は短くなるため、病院の経営を安定させつつ、計画的に返済していかなければなりません。
勤務医の年収は職場や年齢によって異なる
勤務医の平均年収は約1,488万円ですが、職場や年齢などによっても異なります。平均値だけを単純に比較すると開業医よりも低くなりますが、場合によっては十分な高収入を得られるケースもあります。以下、勤務医の年収に関係する要因について詳しく見ていきましょう。
診療科目による年収の違い
開業医と同様、勤務医の年収も診療科目によって異なります。主な診療科目ごとの平均年収は、以下のとおりです。(※)
- 内科:1,247.4万円
- 外科:1,374.2万円
- 整形外科:1,289.9万円
- 脳神経外科:1,480.3万円
- 小児科:1,220.5万円
- 産科・婦人科:1,466.3万円
- 呼吸器科・消化器科・循環器科:1,267.2万円
- 精神科:1,230.2万円
- 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科:1,078.7万円
- 救急科:1,215.3万円
- 麻酔科:1,335.2万円
- 放射線科:1,103.3万円
- その他:1,171.5万円
労働政策研究・研修機構のデータによると、平均年収が最も高いのは脳神経外科で約1,480万円でした。次いで産科・婦人科が約1,466万円、外科が1,374万円、麻酔科が1,335万円という結果になっています。(※)
ただし、先にも述べましたが、上記の数値はあくまでも平均値であり、勤務医の年収は、勤続年数や病院の規模によっても変わります。
職場による年収の違い
勤務医の年収は、職場の経営形態によっても異なります。例えば、国立病院・個人病院・医療法人などが挙げられます。それぞれの経営形態の平均年収は以下のとおりです。(※)
- 国立:882.4万円
- 公立:1,347.1万円
- 公的:1,353.4万円
- 社会保険関係団体:1,280.7万円
- 医療法人:1,443.8万円
- 個人:1,414.0万円
- 学校法人:739.5万円
- その他の法人:1,406.4万円
経営形態別に見ると、最も平均年収が高いのは医療法人で約1,443万円です。次いで個人が約1,414万円、その他の法人が約1,406万円という結果になりました。(※)
規模や診療科目にもよりますが、医療法人が運営している民間病院で勤務すれば、高い年収を期待できます。逆に、学校法人や国立の病院は、他に比べ収入が低い傾向にあるようです。もちろん一概には言えませんが、目安の数値として覚えておくとよいでしょう。
病院の規模による年収の違い
病院の規模による勤務医の平均年収の違いについてもチェックしておきましょう。病床数ごとの平均年収は、以下のとおりです。(※)
- 100床未満:1,471.6万円
- 100〜299床:1,437.5万円
- 300~499床:1,350.2万円
- 500床以上:989.1万円
100床未満の小さな病院の平均年収が最も高く、約1,471万円でした。(※)また、病床数が増えるほど、平均年収が下がっていくことが分かります。小さな病院の場合、医師や看護師の人数が少なく、一人ひとりが担当する業務範囲は広くなります。担当する患者数が増えることも多いため、その分、年収が高くなる可能性があります。
病院のあるエリアによる年収の違い
どのようなエリアの病院に勤務するかによっても年収は異なります。例えば、政令指定都市や東京23区かどうかによる年収の違いは、以下のとおりです。(※)
- 政令指定都市・東京23区:1,137.3万円
- その他:1,314.7万円
政令指定都市や東京23区といった大きな街の方が、その他のエリアよりも平均年収は低いことが分かります。また、過疎地域かどうかによる平均年収の違いについても見てみましょう。
- 過疎地域:1,428.2万円
- その他:1,247.5万円
過疎地域は、その他のエリアよりも平均年収が高いという結果でした。地方都市や人口の少ないエリアで平均年収が高くなる理由としては、前述した開業エリアによる年収の違いと同様に、ライバルが少なく病院全体の収入が安定しやすいこと、家賃や土地代といった維持費が安いことなどが挙げられます。
首都圏や大都市には多くの病院があるため、なかなか患者が集まらず収入が安定しないケースもあります。地方都市においては競合が少ないため、大都市に比べ経営を安定させやすいといえるでしょう。また、病院を維持するための費用が安い分、勤務医の給与を高く設定できるという側面もあります。もちろん、首都圏でも高い給与をもらえる病院もありますが、傾向として覚えておくとよいかもしれません。
年齢による年収の違い
勤務医の平均年収は、年齢によっても異なります。年齢ごとの平均年収の違いは以下のとおりです。(※)
- 20歳代:599.0万円
- 30歳代:967.8万円
- 40歳代:1,326.6万円
- 50歳代:1,527.8万円
- 60歳代以上:1,486.6万円
30歳代までの平均年収は1,000万円以下ですが、40歳代以上になると、1,000万円以上の年収を得られるケースが多いです。なお、先述のとおり得られる年収は病院の規模や診療科目、転職回数などによっても異なります。転職によって年収アップを狙える場合もありますが、勤続年数が短くなることで退職金が減る可能性もあるため注意しましょう。
開業医と勤務医の働き方の違いは?メリット・デメリットを徹底比較
開業医と勤務医の違いは、年収だけではありません。やりがいや働き方も大きく異なるため、年収だけで判断しないようにしましょう。ここでは、開業医と勤務医のメリット・デメリットについて詳しく解説します。
開業医として働くメリット
開業医として働くことには、自分が理想とする医療現場を実現できる、頑張った分だけ収入がアップする、業務量をコントロールしやすい、病院経営に関われる、人間関係のストレスを減らせる、自分の個性を出しやすい、といったメリットがあります。各メリットの詳細は以下のとおりです。
1.自分が理想とする医療現場を実現できる
自分が理想とする医療現場を実現できることは、開業医として働く大きなメリットです。医師として働いていると、自分なりの理想や考え方が生まれてくることもあるのではないでしょうか。しかし勤務医の場合は、自分の理想とは異なる場合でも、所属する病院の方針に従わなければいけません。勤務先の方針や現場の経験などから学ぶことも多いはずですが、簡単に自分の理想を実現することはできないでしょう。
一方、開業医になれば自分の考えや理想を実現できます。患者との接し方や医療方針などを、自分の理想に沿って決めることが可能です。リラックスしてもらえるような空間にしたい、看護師が働きやすい環境をつくりたいなど、勤務医の頃に感じていた課題を解決することもできます
2.頑張った分だけ収入がアップする
頑張れば頑張るほど収入がアップすることは、開業医として働く魅力のひとつです。勤務医の場合は基本的に毎月の給与額が決まっているため、安定した収入を得られるものの、患者数が増えても収入が上がることはありません。長い期間働くことで昇給したり昇進したりして給与が増える可能性はありますが、制度の範囲内での収入アップとなります。
開業医の場合は、患者数を増やすことができれば、病院全体の利益を運営に還元できるだけではなく、運営状況がよければそれを自身の収入に反映させることもできます。そのため経営手腕によっては、一気に大幅な年収アップを実現できるケースもあるでしょう。多くの患者の治療にあたることは簡単ではありませんが、自分の努力が結果につながるため、やりがいを感じながら働けます。
3.業務量をコントロールできる
自分で業務量をコントロールできることも開業医として働くメリットです。勤務医の場合、業務量や勤務時間を自分で決められるわけではありません。
開業医の方が楽というわけではありませんが、勤務医に比べ、ある程度業務量をコントロールできることは大きなメリットです。病床のない診療所であれば、当直やオンコールに対応する必要もありません。休診日を設定することで安定した休みを確保したり、別のスタッフを採用することで自分の業務を減らしたりすることも可能です。
4.病院経営に関われる
患者の治療だけではなく、病院経営に関われることをメリットと感じる人もいるでしょう。経営には興味がないという人も多いかもしれませんが、うまく患者を集めることや、利益に関する数値を分析することに興味がある人もいるでしょう。
病院経営は、開業医にしかできない業務です。勤務医の場合は、長期間勤務してかなり上の役職に就かなければ、病院経営に関わることはできません
病院経営は難しい業務ではありますが、軌道にのり継続的に患者を集めることができれば、収入が大幅にアップするでしょう。もちろん収入を上げることが全てではありませんが、多くの患者が集まり収益を上げていることは、地域の人たちから信頼されている証でもあります。病院経営という業務を通して、医師としてのやりがいや誇りを感じることができます。
5.人間関係のストレスを減らせる
人間関係のストレスを減らせることも、開業医として働くメリットといえるかもしれません。勤務医として働いていると、病院内の人間関係に疲れてしまうこともあるでしょう
働きやすい病院環境であることは、患者との接し方や治療のパフォーマンスにも影響します。
医師は人と関わる仕事であるため、自分の病院を開業したからといって、人間関係のストレスをゼロにすることはできません。患者や採用したスタッフとの人間関係で悩むこともあり得ます。
しかし、あらかじめ経営方針や治療に関する理念などを打ち出しておけば、ある程度は自分の考え方に近いスタッフを採用できます。また、自分がトップであるため、少なくとも上司との関係性で悩むことはなくなるでしょう。
6.自分の個性を出しやすい
自分の個性を出しやすいことも、開業医として働くメリットかもしれません。勤務医として働いている場合は、その病院の歴史や院長のイメージがあり、一人ひとりの勤務医の個性を患者や関係各所へ強く印象付けられる場面は比較的少ないといえるでしょう。前述のとおり、勤務医は基本的に所属する病院の治療方針や理念に従う必要があるため、自分の個性ばかりを全面に押し出すことはできません。
もちろん一生懸命に働いていれば、患者に顔と名前を覚えてもらったり、経験を積むことで自分らしい接し方を身につけられたりはしますが、限界があります。勤務医の場合は、どうしても組織の中の一人という立ち回りをしなければならないケースが出てきます。
一方で開業医になれば、常識の範囲内であれば自分の色や個性を自由に出して働くことができます。親しみやすさをアピールすることで安心して通院してもらったり、個人の実績や経験を公開して集客したりすることも可能です。近年ではSNSなどで健康について発信している病院も増えてきていますが、開業医であればどこへ何を公開するのかの決断も、原則自分で行えます。自分の個性を好きになってもらい、継続的に利用してもらえることで、大きなやりがいを感じられるでしょう。
開業医として働くデメリット
ここまで紹介したように、開業医にはさまざまなメリットがありますが、デメリットもあるため注意が必要です。具体的なデメリットとしては、経営に関するリスクが大きい、幅広い業務に対応する必要がある、トラブルに対して責任が大きい、上に立つ医師としてのプレッシャーが大きい、他の病院との競争に巻き込まれやすい、といったことが挙げられます。それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
1.経営に関するリスクを背負うことになる
経営に関するリスクが大きいことは、開業医として働くデメリットです。
継続的に患者を集めることができれば安定した収入を得られますが、逆に患者数が少ないと経営が傾く可能性もあります。高収入を得られるチャンスがある一方で、全く利益が出ないケースもあるため注意しなければなりません。
夢のある働き方ではありますが、その分リスクも大きいため、経営に関する知識をしっかりと身につけておく必要があります。病院の経営状況は自分の生活だけではなく、家族やスタッフの生活にも影響してくるため、十分に準備をしてから開業することが重要です。
2.幅広い業務に対応する必要がある
幅広い業務に対応する必要があることも、開業医として働くデメリットのひとつといえます。勤務医の場合は、自分の担当する患者や業務内容が決まっているケースが多いですが、開業するとさまざまな仕事をこなさなければなりません。患者の診察や治療だけではなく、経営に関する業務や各種申請などの事務作業を行う必要もあります。患者を集めるためにホームページを開設したり、雇っている看護師の勤務状況を管理したりする必要もあります。
スタッフを雇って業務の一部を任せることはできますが、指示を出したり、業務の進捗状況をチェックしたりすることは必要です。治療以外の業務にも興味がある場合は問題ありませんが、医師本来の仕事に集中したい人にとっては苦痛となるかもしれません。
3.トラブルに対して責任が大きい
トラブルに対して責任が大きいことも、開業医として働くデメリットのひとつです。診療におけるトラブルのみならず、院内で起こるさまざまなトラブルに開業医は責任者として対応しなければなりません。
勤務医の場合は、所属する病院に守ってもらえることもありますが、開業医の場合は全て自分で対処する必要があります。自分のミスはもちろん、スタッフのミスについても開業医の責任となります。
医療ミスや患者からのクレームなどが発生すると、病院全体の評判が悪くなってしまいます。口コミサイトに悪評を書き込まれたり、SNSで悪いイメージを拡散されたりすることもあるため、注意しなければなりません。悪い評判が広まると患者が集まらなくなり、経営が傾いてしまう可能性もあります。自身のミスに気をつけるだけでなく、スタッフに対しても適切な管理や指導を行うことが重要です。
4.上に立つ医師としてのプレッシャーが大きい
上に立つ医師としてのプレッシャーが大きいことも、開業医のデメリットのひとつです。自分の病院を開業すると、雇っている看護師や受付スタッフの上に立ち、指導をしたり意見を取りまとめたりする必要があります。病院全体をうまく統括できず、苦労することもあるかもしれません。
勤務医の場合でも新人を指導したり、リーダー的なポジションで働いたりするケースはありますが、病院全体を取りまとめるとなると大きなプレッシャーを感じることもあるでしょう。開業する病院の規模や雇い入れるスタッフの人数にもよりますが、大きな病院になるほどプレッシャーは大きくなります。開業する際は、自身が運営していくことをイメージした上で病院の規模感を決めるのがおすすめです。
5.激務になってしまう可能性もある
先ほど、開業医のメリットとして業務量をコントロールしやすいことを挙げましたが、逆に激務になってしまう可能性もあります。開業医は、患者の診察や治療はもちろん、収支のチェックやローンを組んでいる金融機関とのやり取りなども行わなければなりません。
収入が安定していれば、スタッフを雇って業務の一部を任せることもできますが、収入が不安定な場合はスタッフを雇う余裕がなく、多くの業務を自分で処理しなければなりません。自分の業務負担を減らすためには、病院の経営を安定させつつ、信頼できるスタッフを採用する必要があります。
6.他の病院との競争に巻き込まれやすい
他の病院との競争に巻き込まれやすいことも、開業医として働くデメリットです。開業する地域にもよりますが、競合となる病院が多いエリアの場合は、なかなか患者が集まらず、経営が苦しくなるケースも考えられます。自分の病院を開業するなら、そのエリアにある競合の病院についてしっかりと調査しておくことが大切です。
競争に巻き込まれたくない場合は、首都圏などを避け、地方都市で開業するとよいでしょう。ただし、地方で開業する場合でも事前に競合の有無をチェックしておく必要はあります。
勤務医として働くメリット
年収を見ると開業医と大きな格差がある勤務医ですが、さまざまなメリットもあります。具体的なメリットとしては、安定した収入を得られること、幅広い専門知識を習得できること、充実した福利厚生を受けられること、トラブルに対し組織で対応できること、病院内で横のつながりを構築できることなどが挙げられます。以下、勤務医として働くメリットについて詳しく見ていきましょう。
1.安定した収入を得られる
安定した収入を得られることは、勤務医として働く大きなメリットです。開業医の場合は、患者の数や経営状況によって収入が大幅に変動する可能性もありますが、勤務医であれば基本的には毎月決まった額の給与を受け取れます。交通費などの各種手当やボーナスが支給されるケースも多いでしょう。
開業医のように大きな収入を得ることができなかったとしても、勤務医の収入自体一般的には高収入といえます。ある程度の収入を得ながら経済的に安定した生活を送ることができ、また、長く勤めることで上の役職に就けば、収入アップも期待できます。働きながら専門的なスキルや知識を習得し、経験を積むことで、給与の高い別の病院に転職することも可能です。
2.さまざまな専門知識を習得できる
さまざまな専門知識を習得できることも、勤務医として働くメリットのひとつです。病院に所属して働いていれば、上司や先輩の医師から指導を受けながら幅広いスキルや知識を習得できます。教育体制を整えている病院も多く、先輩と一緒に治療を行いながら知識を学んだり、分からない部分を質問したりすることも可能です。
各種の勉強会や研修会といった制度が整っている病院もあります。学習の場に積極的に参加すれば、最新の医学に関する知識やスキルを習得できます。上司や先輩、同僚の働き方を見ることでも、得るものは多いでしょう。意識的に周りを観察すれば、仕事の流れや効率的な業務の進め方、患者との適切な接し方なども学べます。
一方、開業医になると、自分で学習の機会をつくらなければなりません。そもそも病院の開業は、ある程度の専門知識やスキル、現場経験がなければ難しいものですが、開業後は自ら勉強したり、学会に参加するなどして知識を深める必要があります。
3.福利厚生が充実している
福利厚生が充実していることも勤務医のメリットです。福利厚生とは、病院が勤務医などのスタッフに対して提供する、給与以外のサービスのことです。福利厚生は、勤務医やその家族の生活の向上や健康維持を目的として提供されます。大きな病院ほど、手厚い福利厚生を受けられることが多いです。
具体的には、介護保険や雇用保険への加入、通勤手当や住宅手当、結婚や出産に伴うお祝い金の支給などが挙げられます。社員旅行やクラブ活動などを実施している病院もあるでしょう。食堂を充実させたり、予防接種の費用を補助したりするなど、勤務医が働きやすい環境の構築に力を入れている病院もあります。
開業医になると、福利厚生を提供する側となります。雇用する看護師やスタッフのことを考え、福利厚生を提供しなければなりません。
4.トラブルに対し組織で対応してもらえる
勤務医の場合は開業医と違い、トラブルには病院として対応するため、個人で全て対処しなければならないということはありません。
医師の仕事は患者の健康や生命に関わる仕事であるため、当然、責任感を持って取り組まなければなりませんが、開業医と比べると背負う責任が少ないことも、勤務医として働くメリットのひとつといえます。
何らかのトラブルが発生した場合でも、自分一人だけが責任を負う場面は少なく、上司や同僚などを含めたチームで問題解決にあたったり、リスクマネジメントの専門部署が訴訟に対応してくれたりするケースもあります。
内容によっては病院内で責任を問われることもありますが、基本的には、病院側に守ってもらいながら働けます。
5.病院内で勤務医同士のつながりができる
勤務医として働いていると、病院内で横のつながりを構築できます。同僚の医師と交流したり、情報交換をしたりすることもできます。上司や同僚、後輩などと人間関係を構築しておけば、医療に関しての知識を共有したり、仕事に関して相談することも可能です。
開業医の場合、なかなか人間関係が広がらないということも多くあります。もちろん、看護師や受付スタッフを雇うことで人間関係が広がるケースもありますが、上に立つ医師として少し距離を感じたり、経営者ならではの孤独を感じたりすることもあるかもしれません。
勤務医として働くデメリット
勤務医として働くことには、多くのメリットがあることが分かりました。一方、開業医ほどの収入を得られない、業務量をコントロールしにくい、自分と病院の治療方針が合わないことがある、病院内の人間関係に疲れることがある、希望の部署で働けるとは限らない、といったデメリットもあります。各デメリットの詳細は以下のとおりです。
1.開業医ほどの収入は期待できない
開業医ほどの収入を得られないことは、勤務医として働く大きなデメリットです。最初に紹介したとおり、開業医と勤務医の平均年収には約2倍もの格差があります。勤務する病院の規模や診療科目などによっても異なりますが、一般的には開業医ほどの収入は期待できないでしょう。
業務量や診察する患者数が増えたからといって収入がアップするというわけではないため、仕事に対するモチベーションが下がってしまうこともあるかもしれません。安定した収入は得られますが、もし物足りなさを感じる場合は、収入アップのため転職を検討してみるのもよいでしょう。
2.業務量をコントロールしにくい
業務量をコントロールしにくいことも、勤務医として働くデメリットのひとつです。勤務医の場合は、基本的に病院のシフトや勤務形態に従って働く必要があります。自由なタイミングで休みを取ることは難しい場合もあり、当直やオンコール勤務などで、多忙な生活になってしまうこともあります。
診療科目にもよりますが、医師は緊急的な対応を求められることが多い職業です。急な手術が入ったり、入院患者からの呼び出しが入ったりすることも少なくありません。また、治療だけでなく事務的な作業に追われることもあり、大学病院に所属している場合は、論文執筆をこなす必要もあります。
特に医師数の少ない病院の場合は、一人ひとりの担当する業務範囲が幅広く、時間的な余裕だけではなく、気持ちの余裕がなくなってしまうこともあるかもしれません。
3.自分と病院の治療方針が合わないことがある
医師としての働き方や治療方針など、必ずしも自分の理想や考え方のとおりにはならないことも、勤務医のデメリットです。基本的には所属する病院の理念や上司の指示に従う必要があり、自分の考え方とのギャップに悩むこともあるかもしれません。例えば、一人ひとりの患者に丁寧に接したいと思っていても、病院から効率的な対応を求められるケースもあります。
病院の方針と自分の理想が同じであれば問題ありませんが、働いているうちに疑問が生まれたり、別の考え方を実践したくなったりした場合、ジレンマが発生してしまいます。
勤めている病院に意見をあげることで、取り入れてもらえるケースもあるでしょう。とはいえ必ずしも自分と同じ考えの医師ばかりではなく、組織として動かなければならないのは事実です。
なかなか自分の意見を聞いてもらえずモヤモヤしたり、ストレスを感じたりすることもあるかもしれません。
開業医になれば、自分の理念を掲げて病院を運営していけますが、開業医ならではの苦労やデメリットも多いため、全ての人が開業医を目指す必要はありません。病院と自分の理想の違いに悩んでいる場合は、自分の考え方に合いそうな病院へ転職するのも解決策のひとつです。
4.病院内の人間関係に疲れることがある
勤務医として働いていると、上司や同僚との人間関係で苦労することもあるでしょう。上司と考え方が違って意思疎通がうまくいかない、病院内で孤立してしまっているなど、医師本来の業務以外の部分で悩みを抱えている人もいるかもしれません。
など
人間関係のストレスを完全になくすことは難しいですが、苦痛を抱えたまま同じ病院で働き続ける必要はないでしょう。人間関係の煩わしさを軽減するために開業を目指したり、働きやすい環境の病院を探して転職したりするのもおすすめです。
5.希望の部署で働けるとは限らない
希望の部署で働けるとは限らないことも、勤務医のデメリットのひとつです。運良く希望の部署に配属される可能性もありますが、病院側の都合により他の部署で働くこともあります。方針の変更により、急な人事異動を言い渡されることもあるかもしれません。仕事に慣れたタイミングで別の部署に異動になるといったケースもあります。
異動の希望を出せることもありますが、希望が通るとは限りません。基本的には部署内の仕事に特化することになるため、他部署や他科の治療を学びたいと思っても、希望がかなわないケースもあります。
勤務医として年収をアップさせる4つの方法
勤務医として年収をアップさせ、開業医との格差を埋めたいと考える人も多いでしょう。勤務医の年収をアップさせる方法としては、病院側と給与アップの交渉をする、アルバイトを掛け持ちすることで収入を増やす、開業医を目指す、給与のよい病院へ転職する、などが挙げられます。それぞれの方法について具体的に紹介します。
1.病院側と給与アップの交渉をしてみる
病院側と給与アップの交渉をしてみることは、勤務医としての収入を上げる方法のひとつです。勤務医の数が少なく、労働力不足に悩んでいる病院であれば、給与アップを検討してくれるかもしれません。誰と交渉すればよいか分からない場合は、まず上司や先輩に相談してみるのがおすすめです。
同じような意見を持つ同僚を集めて、一緒に交渉するのもよい方法です。多くの勤務医の意見が集まれば、給与アップを検討してもらえる可能性が高まります。
なお、交渉するためには、ある程度の経験や実績、スキルを保有していなければなりません。仮に辞められても問題ないと病院側に思われてしまえば、年収アップを検討してもらえない可能性があります。
そもそも交渉すること自体が簡単なことではありません。お金の話をするのはかなり勇気のいることです。仮に給与を上げてもらえたとしても、その給与に見合う働きをしなければいけないとプレッシャーを感じることもあるかもしれません。
2.アルバイトをすることで収入アップを狙う
所属している病院とは別の場所でアルバイトをすることにより、収入アップを図っている勤務医もいます。収入を安定させるために複数のアルバイトを掛け持ちしているケースも多いでしょう。
病院でのアルバイトは、一般的なアルバイトと比較すると高額の報酬をもらえることが多く、頑張って働いた分だけ収入を得られます。さまざまな病院でアルバイトをすることで、幅広い知識やスキルを習得できることも大きなメリットです。収入を上げたいという人は、アルバイトを探してみるのもひとつの方法です。
しかし、アルバイトを増やしすぎると、身体への負担が大きくなるため注意しなければなりません。無理をすると体力的にも精神的にも疲れてしまい、本来の業務に支障が出てしまう可能性もあります。本業に影響が出ないよう、うまくバランスを取りながらアルバイトをすることが大切です。
3.開業医を目指す
勤務医として収入をアップさせることに限界を感じた場合は、開業医を目指すのもよいでしょう。診療科目や規模にもよりますが、自分の病院を開業すれば、勤務医の約2倍の年収を手にすることも可能です。さらに前述のような、自分の理想どおりの医療を実現できる、業務量をコントロールしやすい、人間関係のストレスを減らせる、といったメリットもあります。
しかし、必ずしも病院経営がうまくいくとは限りません。患者が集まらず、経営が傾いてしまうリスクもあります。利益がほとんど出なかったり、開業したときの借金を返済できなくなってしまう可能性もあるでしょう。成功すれば高収入を得られるものの、失敗すると勤務医より低い収入になってしまうこともあります。
病院の開業は、誰にでもできることではありません。医療に関するスキルと経験だけではなく、経営に関する知識も必要です。開業医を目指すなら、資金や経営計画なども含めて、しっかりと準備をしておきましょう。
4.高い給与をもらえる病院に転職する
給与のよい病院へ転職することも、勤務医として年収アップを狙う方法のひとつです。アルバイトを掛け持ちすることで、収入を増やすことには限界があります。また、自分の病院を開業するのはハードルが高すぎると感じたり、そもそも、独立したり病院を経営したりすることに興味のない人もいます。
そのような場合は、新しい職場を探すのがおすすめです。勤務医の不足に悩んでいる病院も多いため、高い給与が設定されていることもあります。スキルや経験、資格などをアピールすれば、現状よりも高い給与を得ながら働ける可能性があります。
職場環境を変えることで、新しいスキルや知識を学べることも転職の大きなメリットです。病院の規模や環境が変われば、経験の幅が広がり、キャリアアップにもつながります。
開業医と勤務医の格差は大きい
今回は、開業医と勤務医の年収の格差や、勤務医として年収を上げる方法などを解説しました。単純に比較すると、開業医の平均年収は勤務医の平均年収の約2倍です。病院の規模や診療科目にもよりますが、多くの収入を得られる開業医に魅力を感じる人も多いでしょう。
さまざまなメリットのある開業医ですが、経営に関する知識がなければ病院を運営していくことはできません。大きな収入を得られる可能性がある一方で、患者がうまく集まらず、経営が傾いたり借金を抱えたりするリスクもあります。自分は経営には向かないと考えている人は、別の病院へ転職して収入アップを狙うのがおすすめです。
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