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診療科/業務内容

麻酔科医の1日の仕事内容や流れ、平均年収や労働環境についても紹介

更新日: 2023/04/25
麻酔科医の1日の仕事内容や流れ、平均年収や労働環境についても紹介

麻酔科医の1日の仕事の流れは、当日に手術があるかどうかで変わります。手術がある日は業務量が多く、医療機関によっては複数の患者の麻酔管理を行うこともあります。この記事では、麻酔科医を目指す人向けに麻酔科医の仕事内容やスケジュールを紹介します。

麻酔科医の仕事内容は手術中の麻酔だけではありません。手術前の患者への説明や手術後のアフターケアなど、麻酔科医にはさまざまな役割があります。麻酔科医を目指す人は、麻酔科医の1日の仕事の流れを確認しておきましょう。

本記事では麻酔科医の役割や仕事内容、1日のスケジュール例、平均年収や労働環境についてわかりやすく解説します。

麻酔科医の役割や仕事内容は?

手術現場を中心に活躍する麻酔科医は、激務といわれることがあります。麻酔科医はどのような仕事をしているのでしょうか。実は麻酔科医には、手術中の麻酔管理だけでなく、術前診察や術後診察などの役割があります。

手術が始まる前から終わったあとまで、患者を密接にサポートするのが麻酔科医の仕事内容です。ここでは麻酔科医の役割や仕事内容を3つに分けて解説します。

術前診察

麻酔科医の仕事の一つが手術前に行う術前診察です。術前診察では患者本人の診察やカルテの確認を行い、その人の体調や既往歴に合った麻酔薬を用意します。また、術前診察では他の医師や同じ麻酔科医、手術室に所属する看護師などが集まり術前カンファレンスや麻酔カンファレンスと呼ばれるミーティングを実施するのも特徴です。術前カンファレンスでは、その日に担当する患者全員分の麻酔方法を確認したり、併症などのリスクを評価したりします。麻酔科医の仕事は個人ではなくチーム単位で行うのがポイントです。

手術中の麻酔管理

麻酔科医は専門医のひとりとして手術に立ち会い、手術中の麻酔管理を行います。麻酔の準備から導入までの流れを簡単なフローチャートにすると、基本的には以下のとおりです。

  1. 麻酔に必要な麻酔薬や麻酔器、気管挿管を行うための喉頭鏡やチューブを準備する
  2. 患者が入室したら、バイタル管理用のモニターを装着する
  3. 麻酔をする箇所(末梢静脈路)を確保し、麻酔を導入する

麻酔には、全身麻酔、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔などさまざまな種類があり、それぞれ手順が異なります。

麻酔を打つだけでなく、麻酔を打った患者の血圧・脈拍の管理(循環管理)や、十分な酸素を取り込めているかの確認(呼吸管理)も麻酔科医の大切な仕事の一つです。手術後には大きな苦痛が残らないように痛み刺激を調整し、うずき管理を実施します。医師のそばで患者の様子をモニタリングしながら、安全に手術を行えるようサポートするのが麻酔科医の役割です。

術後診察

麻酔を導入すると、患者の意識や体調に少なからず影響が出る可能性があります。そのため、手術が無事に終わったら患者本人を診察し、麻酔を投与した影響がないか、患者が強い痛みを感じていないかを確認します。

手術が終わった後の診察のことを術後診察といいます。特に手術後の痛みの大きさは、術後合併症の程度に影響を与えるため、麻酔科医を含めたチーム単位で患者のうずきを取り除くためのサポートをします。このように麻酔を打つだけでなく、患者の体調管理やアフターケアを担当するのが麻酔科医の役割です。

 

麻酔科医の1日の仕事の流れ

麻酔科医は、日々どのようなスケジュールで働いているのでしょうか。ここでは、麻酔科医の1日のスケジュール例を手術がある日、手術がない日に分けて紹介します。

手術がある日のスケジュール例

以下は手術がある日の麻酔科医のスケジュール例です。手術がある日の麻酔科医は、集中治療室(ICU)にいる患者の回診や、術前診察・術後診察、手術中の麻酔管理など、さまざまな業務をこなす必要があります。

  • 午前7時00分

手術に立ち会うため、出勤して身支度を整えます。医療機関にもよりますが、手術は朝一番に予定されていることが多いため、麻酔科医の出勤時刻は比較的早めです。

  • 午前7時30分

患者が集中治療室(ICU)にいる場合は、他の医師や看護師と一緒に回診を行います。患者の容態と術後経過を確認し手術の方針を相談します。その後、麻酔科医が集合して麻酔カンファレンスを実施し認識のすり合わせを行います。

  • 午後9時00分

患者が手術室に入室したら、麻酔薬を投与するための準備をします。麻酔導入後、患者の血圧や呼吸をモニタリングし麻酔管理を行います。昼食休憩をまたぐなど長時間の手術の場合は、他の麻酔科医との交代制で手術に立ち会います。手術の終わりに差し掛かったら、麻酔薬の投与量をコントロールしスムーズな術後覚醒を促します。

  • 午後15時00分

手術が終了したら患者の術後診察を行います。覚醒後の意識レベルやうずきの有無を確認し、問題があれば担当医や看護師に報告します。

  • 午後19時00分

翌日の手術に向けた準備を行い、事故やトラブルがなければそのまま退勤します。複数の患者の手術が行われる場合は、麻酔科医が掛け持ちで対応するケースもあります。

手術がない日のスケジュール例

以下は手術がない日の麻酔科医のスケジュール例です。手術がある日と比較して、手術がない日の麻酔科医のスケジュールは比較的ゆとりがあります。主にICUカンファレンスや麻酔カンファレンスに参加し、他の勤務医との情報共有を行うのが手術がない日の業務内容です。

  • 午前7時30分

当日に手術が予定されていない場合は、手術がある日よりも遅めに出勤します。ICUカンファレンスや麻酔カンファレンスに参加し、他の麻酔科医と協力しながら患者の診察を行います。

  • 午後12時00分

昼食後、引き続き他の勤務医の手伝いをします。

  • 午後17時00分

夕方にICUカンファレンスが予定されている場合は、午前中と同様に麻酔科医として参加します。当直医師の申し送り事項を引き継いでから、翌日の準備を行います。

 

麻酔科医の平均年収を他の勤務医と比較

 

労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、麻酔科医の平均年収は約1,335万円です。(※)他の勤務医と比較して、麻酔科医の平均年収は4番目に高くなっています。

  • 診療科目別にみた医師の平均年収
診療科目 300万円未満 300~500万円未満 500~700万円未満 700~1000万円未満 1000~1500万円未満 1500~2000万円未満 2000万円以上 平均年収
内科 3.5% 7.1% 7.4% 13.5% 29.2% 28.4% 10.9% 124万7,400円
外科 2.1% 2.4% 4.7% 11.8% 27.9% 39.1% 12.1% 1,374万2,000円
整形外科 4.2% 3.8% 2.5% 12.7% 34.7% 33.1% 8.9% 1,289万9,000円
脳神経外科 1.0% 3.9% 2.9% 10.7% 21.4% 40.8% 19.4% 1,480万3,000円
小児科 2.4% 7.7% 5.9% 14.8% 33.1% 28.4% 7.7% 1,220万5,000円
産科・婦人科 0.8% 2.3% 5.4% 13.8% 27.7% 29.2% 20.8% 1,466万3,000円
呼吸器科・消化器科・循環器科 2.6% 3.3% 6.6% 10.9% 39.8% 29.6% 7.2% 1,267万2,000円
精神科 1.8% 4.1% 7.3% 18.3% 33.0% 24.8% 10.6% 1,230万2,000円
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 2.6% 8.3% 12.5% 17.3% 33.2% 22.0% 4.2% 1,078万7,000円
救急科 0.0% 6.3% 12.5% 18.8% 21.9% 25.0% 15.6% 1,215万3,000円
麻酔科 0.8% 1.6% 5.5% 16.4% 36.7% 25.0% 14.1% 1,335万2,000円
放射線科 5.3% 6.3% 11.6% 16.8% 33.7% 22.1% 4.2% 1,103万3,000円
その他 1.0% 3.9% 8.7% 17.5% 36.9% 29.1% 2.9% 1,171万5,000円

※出典:労働政策研究・研修機構.「勤務医の就労実態と意識に関する調査」. https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf

 

麻酔科医の労働時間や当直日数を他の勤務医と比較

麻酔科医の労働環境はどういった特徴があるのでしょうか。ここでは、麻酔科医の労働時間や当直日数を他の勤務医と比較していきます。

麻酔科医の週当たり労働時間

まずは麻酔科医の週当たり労働時間をみてみましょう。麻酔科医の週当たり労働時間は45.8時間で、全体で6番目の短さとなっています。毎週60時間以上働いている人の割合も22.2%と少なく、比較的ワークバランスが確保されている診療科目の一つです。(※)

  • 診療科目別にみた医師の週当たり労働時間
診療科目 20時間未満 20~40時間未満 40~50時間未満 50~60時間未満 60~70時間未満 70~80時間未満 80時間以上 平均時間
外科 10.5% 2.8% 19.5% 24.1% 22.3% 11.3% 9.5% 52.5時間
救急科 5.6% 8.3% 25.0% 19.4% 16.7% 13.9% 11.1% 54.0時間
脳神経外科 4.9% 6.6% 24.6% 23.8% 21.3% 10.7% 8.2% 53.3時間
小児科 5.4% 10.2% 15.6% 29.3% 24.9% 8.3% 6.3% 52.0時間
産科・婦人科 11.0% 5.5% 27.6% 22.1% 17.9% 7.6% 8.3% 49.4時間
呼吸器科・消化器科・循環器科 11.3% 7.0% 20.8% 27.2% 16.7% 8.9% 8.1% 49.4時間
整形外 12.6% 9.8% 25.6% 23.2% 17.5% 7.0% 4.2% 46.8時間
麻酔科 8.5% 13.1% 32.7% 23.5% 15.0% 2.6% 4.6% 45.8時間
内科 15.0% 13.7% 28.4% 21.3% 12.5% 5.2% 3.9% 43.4時間
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 13.8% 9.5% 32.1% 24.1% 12.1% 4.6% 3.8% 44.3時間
その他 9.7% 7.3% 35.5% 28.2% 11.3% 5.6% 2.4% 46.0時間
放射線科 7.9% 7.0% 37.7% 29.8% 10.5% 4.4% 2.6% 46.1時間
精神科 16.9% 25.8% 29.2% 15.8% 9.2% 1.9% 1.2% 38.4時間

※出典:労働政策研究・研修機構.「勤務医の就労実態と意識に関する調査」. https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf

麻酔科医の月当たり当直回数

次に麻酔科医の月当たり当直回数をみてみましょう。労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、麻酔科で毎月日直を経験している人の割合は53.6%、宿直を経験している人の割合は56.9%です。他の診療科目よりも、麻酔科の月当たり当直回数は比較的少なくなっています

ただし、手術がある日は麻酔管理や術前診察・術後診察が必要になるため、毎月5回以上の日直を経験している医師の割合は全体で2番目(8.5%に多くなっています。(※)

  • 診療科目別にみた医師の月当たり当直回数
日直の回数 宿直の回数
診療科目 なし 1~2回 3~4回 5回以上 日直あり合計 なし 1~2回 3~4回 5回以上 宿直あり合計
内科 38.9% 50.3% 5.8% 4.9% 61.0% 33.3% 33.3% 23.6% 9.7% 66.6%
外科 37.0% 53.8% 5.0% 4.3% 63.1% 26.3% 39.5% 24.0% 10.4% 73.9%
整形外科 38.1% 55.2% 3.8% 2.7% 61.7% 31.1% 42.0% 22.0% 4.9% 68.9%
脳神経外科 38.2% 52.8% 5.7% 3.2% 61.7% 22.0% 42.3% 26.0% 9.7% 78.0%
小児科 26.3% 58.0% 11.2% 4.4% 73.6% 28.3% 20.5% 30.2% 21.0% 71.7%
産科・婦人科 30.6% 44.9% 16.3% 8.2% 69.4% 29.9% 21.1% 21.1% 27.8% 70.0%
呼吸器科・消化器科・循環器科 30.0% 61.1% 5.4% 3.5% 70.0% 26.0% 48.0% 19.6% 6.5% 74.1%
精神科 31.2% 53.1% 8.8% 6.9% 68.8% 25.0% 25.4% 29.6% 20.0% 75.0%
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 47.8% 47.6% 2.8% 1.8% 52.2% 41.2% 42.5% 14.6% 1.8% 58.9%
救急科 8.3% 41.7% 16.7% 33.4% 91.8% 5.6% 11.1% 19.4% 63.9% 94.4%
麻酔科 46.4% 36.6% 8.5% 8.5% 53.6% 43.1% 22.9% 18.3% 15.7% 56.9%
放射線科 60.5% 36.0% 1.8% 1.8% 39.6% 59.6% 30.7% 8.8% 0.9% 40.4%
その他 51.6% 41.1% 5.6% 1.6% 48.3% 50.0% 27.4% 13.7% 8.8% 49.9%

※出典:労働政策研究・研修機構.「勤務医の就労実態と意識に関する調査」. https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf

 

麻酔科医になりたい人は1日の仕事の流れを確認しよう

麻酔科医の仕事内容は、術前診察・手術中の麻酔管理・術後診察の3つです。手術当日の麻酔だけでなく、手術前の患者への説明や手術後のアフターケアも麻酔科医の重要な役割です。麻酔科医の1日の仕事の流れは、当日に手術が予定されているかどうかによって変わります。麻酔科医になりたい人は大まかな仕事の流れを確認しておきましょう。

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