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医師の勤務時間や休暇の取得状況について解説

更新日: 2023/04/24
医師の勤務時間や休暇の取得状況について解説
医師のなかでも常勤勤務医の場合、1週間あたりの勤務時間が60時間以上という男性医師が41%、女性医師が28%もいました。また年次有給休暇取得日数が3日以下というケースもあります。医師がワーク・ライフ・バランスを整えるためには、転科や転職を検討するのも一つの手段です。

働き方改革によって一般企業の働き方が見直されましたが、医師の勤務時間は依然として長時間に及ぶとされています。また、勤務時間の長さだけではなく休暇も取得しづらい傾向があります。

本記事では医師の勤務時間や休暇について解説します。

1週間あたりの勤務時間

厚生労働省が発表した『医師の勤務実態について』によれば、医師の中でも常勤勤務医の1週間あたりの勤務時間(診療時間+指示なしを除く診療外時間+宿直・日直中の待機時間)が60時間以上だった男性医師は41%、女性医師は28%です。さらに週80時間以上勤務している男性医師は9%、女性医師は6%でした。(※)

同じく厚生労働省より公表されている『令和3年就労条件総合調査の概況』によれば、企業の週間労働時間の平均は39時間25分となっていることから、宿直や日直中の待機時間を含んでいることを考慮しても、他業種の企業と比較すると常勤勤務医の勤務時間は長いと言えます。(※)

もちろん医師といっても常勤勤務医だけではなく、非常勤勤務医、開業医などさまざまですが、厚生労働省の行った調査は医師の勤務時間を把握する上でひとつの参考となるでしょう。

※出典:厚生労働省.「医師の勤務実態について」.https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000677264.pdf,(入手日付:2023-02-13).

※出典:厚生労働省.「令和3年就労条件総合調査の概況」.https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/21/dl/gaikyou.pdf,(入手日付:2023-02-13).

年齢別にみた勤務時間

『医師の勤務実態について』では、性別・年齢別の常勤勤務医の1週間の勤務時間も発表されています。これによると、年齢別の常勤勤務医の勤務時間は次の通りです。(※)

男性医師 女性医師
20代 61時間34分 58時間20分
30代 61時間54分 51時間42分
40代 59時間34分 49時間15分
50代 56時間16分 51時間32分
60代以上 47時間20分 44時間44分
全国平均 57時間35分 52時間16分

男性医師は50代、60代で勤務時間が減少する一方、女性は20代以降30代、40代と減少しますが40代から50代にかけては勤務時間が増加しています。

※出典:厚生労働省.「医師の勤務実態について」.https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000677264.pdf,(入手日付:2023-02-13).

家族構成にみる勤務時間

既婚で同居する子どもがいる女性医師は、同居する子どもがいない女性医師と比較すると勤務時間は短い傾向があります。反対に既婚で同居する子どもがいる男性医師は、同居する子どもがいない男性医師よりも勤務時間が長いという結果になっています。

診療部門別にみる勤務時間

診療科目によって1週間の勤務時間に差があります。例えば臨床検査科は46時間10分の勤務時間に対して、外科の勤務時間は61時間54分でした。『医師の勤務実態について』では、20の診療部門別に常勤医師の1週間の勤務時間を以下の通り発表しています。(※)

診療科目 勤務時間
内科 56時間13分
外科 61時間54分
小児科 54時間15分
産婦人科 58時間47分
精神科 47時間50分
皮膚科 53時間51分
眼科 50時間28分
耳鼻咽喉科 55時間02分
頻尿器科 56時間59分
整形外科 58時間50分
脳神経外科 61時間52分
形成外科 54時間29分
救急科 60時間57分
麻酔科 54時間06分
放射線科 52時間54分
麻酔科 54時間06分
リハビリテ-ション科 50時間24分
病理診断科 52時間49分
臨床検査科 46時間10分
総合診療科 57時間15分
臨床研修医 57時間26分
全診療科平均 56時間22分

全診療部門の平均勤務時間は56時間22分です。勤務時間が最長だったのは外科の61時間54分で、脳神経外科、救急科も同様に60時間を超える勤務時間でした。一方、最短の勤務時間は臨床検査科で46時間10分です。次いでリハビリテ-ション科、眼科が50時間台の勤務時間となっています。

外科、脳神経外科、救急科など急な手術が発生する可能性がある診療科は勤務時間が長い傾向があるといえます。反対に臨床検査科やリハビリテーション科、眼科など宿直対応が少ない診療科は勤務時間が短い傾向になりました。

※出典:厚生労働省.「医師の勤務実態について」.https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000677264.pdf,(入手日付:2023-02-13).

診療時間の長さも異なる

診療時間の長さをとっても診療科によって異なります。外科は診療時間が唯一50時間を超えています。また、産婦人科、精神科は待機時間が長い傾向があるのに対して、病理診断科の待機時間は10分と最短です。

※出典:厚生労働省.「医師の勤務実態について」.https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000677264.pdf, (入手日付:2023-02-24).

勤務医の休暇取得状況

休日の日数は勤務先によって異なりますが、常勤勤務医に限らず法定休日として、休日は少なくとも毎週1日もしくは4週間を通して4日以上付与することが労働基準法第35条で定められています。また、2019年からは年次有給休暇が10日以上付与されている場合は、年5日の年次有給休暇の取得が義務付けられています。(※)

独立行政法人 労働政策研究・研修機構が常勤、非常勤、アルバイトの勤務医を対象に行った『勤務医の就労実態と意識に関する調査』によれば、診療科別にみた年次有給休暇の取得状況は次の通りです。(※)

0日 1~3日 4~6日 7~10日 11~15日 16~19日 20日以上
脳神経外科 27.6 27.6 22 19.5 2.4 0 0.8
呼吸器科・消化器科・循環器科 23.3 29.5 26.3 13.7 4.8 0.8 1.6
救急科 22.2 27.8 27.8 19.4 2.8 0 0
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 27.1 22 22 17.4 7.9 1.5 2
内科 25.4 23.4 25 17.2 5.8 1.6 1.5
外科 20.3 27.3 28.8 12.8 7.3 2 1.8
小児科 22 24.9 26.8 16.1 7.8 1 1.5
整形外科 23.4 23.1 28.7 18.9 4.9 0.3 0.7
放射線科 13.2 29.8 27.2 13.2 7.9 7 1.8
産婦人科 13.6 27.2 23.8 19.7 8.2 4.8 2.7
麻酔科 18.3 20.9 27.5 22.9 5.9 1.3 3.3
精神科 15 23.1 26.5 21.9 8.1 3.5 1.9
その他 20.2 26.6 25 16.9 7.3 0.8 3.2
平均 22.3 24.9 25.8 17.1 6.4 1.8 1.7

平均した勤務医の年次有給休暇取得日数は、4~6日が最多の25.8%となっています。一方、年次有給休暇を取得できていない割合が22.3%、1~3日の割合が24.9%となっており、年次有給休暇取得日数が3日以下という層が半数近くいることがわかりました。

厚生労働省『令和4年就労条件総合調査の概況』で公表された、2021年の年次有給休暇取得平均日数である10.3日と比較すると、勤務医の年次有給休暇取得日数は平均値と大きく乖離していることが読み取れます。(※)

※出典:e-Gov法令検索.「労働基準法」.https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049,(入手日付:2023-02-13).

※出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構.「勤務医の就労実態と意識に関する調査」.https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf,(入手日付:2023-02-13).

※出典:厚生労働省.「令和4年就労条件総合調査の概況」.https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/22/dl/gaikyou.pdf,(入手日付:2023-02-13).

自己研鑽を労働時間とするかどうかは勤務先によって異なる

医師は知識や技術を向上させるための自己研鑽が求められます。厚生労働省が自己研鑽の例として挙げているのは、以下のようなものです。(※)

  • 診療ガイドラインの勉強
  • 新たな治療法や新薬の勉強
  • 学会や外部の勉強会への参加、発表の準備など
  • 専門医の取得・更新にかかる症例報告作成

これらが労働時間に該当するかどうかは勤務先によって異なります。例えば学会参加を労働時間として扱う場合もあれば、そうでない場合もあります。勤務先が自己研鑽を労働時間とみなしているかどうかは、労働時間はもちろん有給の取得状況にも関わります。勤務先が自己研鑽をどのように扱っているかを確認しておきましょう。

※出典:厚生労働省.「医師の研鑽と労働時間に関する考え方について」.https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000404613.pdf,(入手日付:2023-02-13).

医師のワーク・ライフ・バランスを整える方法

常勤勤務医はほかの業種と比較すると、1週間の勤務時間が長いのに対し年次有給休暇取得日数は少ない傾向があります。ワーク・ライフ・バランスを整えるためには工夫が必要です。

まずは上司に相談してみる

ワーク・ライフ・バランスを整える第一歩として、上司への相談が挙げられます。例えば当直の管理見直しや調整を相談してみましょう。相談の際はただ見直しや調整を相談するのではなく、業務効率化の提案をすることも大切です。

相談によってすぐに問題が解決しなかったとしても、労働時間についての問題意識を組織全体で共有することによって解決につながる可能性があります。

転科する

常勤勤務医の勤務時間は診療科目によって変動する傾向があります。転科することでプライベートの時間を確保できるかもしれません。ただし、転科はこれまでのキャリアとは別のキャリアを歩むことになるため、新たに学ぶことも増える可能性があります。

雇用形態を非常勤にする

常勤勤務医は勤務時間が多く、ワーク・ライフ・バランスを整えるのが難しいかもしれません。雇用形態を非常勤に変更することで、勤務時間が調整可能です。非常勤であれば1日8時間勤務の週4日勤務や、1日5時間勤務の週5日勤務といった多様な働き方が可能です。

転職をする

現在の勤務先から転職することも、ワーク・ライフ・バランスを整えるための一つの手段です。例えば、外来や健診がメインの勤務先に転職することで平日日勤勤務が可能になります。ただし、このような勤務先であっても土日に診察をしているケースがあるため、事前に転職候補先の情報を確認しておきましょう。

また転職にあたってはさまざまな情報を収集して、転職先がどのような職場かを把握しておくことが大切です。転職を決意した際にはしっかりと情報収集を行いましょう。

医師の働き方改革を意識した転職先選び

2024年4月1日から施行される改正医療法によってスタートするのが、医師の働き方改革です。改正医療法では病院の機能に応じて水準が設定されており、水準によって時間外労働の上限が異なります。水準とそれぞれの時間外労働の上限は以下の通りです。(※)

  • A水準:年間960時間以下
  • 連携B水準(地域医療確保のために医師を派遣する施設):年間1,860時間
  • B水準(高次救急医療施設やがん拠点施設など):年間1,860時間
  • C-1水準(臨床研修医、専門医研修医の雇用施設):年間1,860時間
  • C-2水準(特定高度技能研修者の雇用施設):年間1,860時間

ワーク・ライフ・バランスを整えるために転職する際は、A水準の病院を選ぶことで年間の時間外労働時間の軽減が期待できます。

※出典:厚生労働省.「医師の働き方改革について」.https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000818136.pdf,(入手日付:2023-02-13).

勤務時間を削減してワーク・ライフ・バランスを整えよう

医師のなかでも常勤勤務医は勤務時間が長く、年次有給休暇取得日数は他業種と比較すると少ない傾向があります。勤務時間は診療科目によって異なり、外科、脳神経外科、救急科など、急な手術が発生する可能性がある診療科は勤務時間が長いケースが多くみられます。

勤務時間が長くワーク・ライフ・バランスを整えられないと感じている方は、転職や働き方の見直しを検討してみましょう。医師が求人を探す際は、医師の求人情報が多く掲載された専用サイトの活用がおすすめです。MRTは常勤はもちろんのこと、定期非常勤やスポット勤務の求人情報も掲載しています。転職や働き方の見直しを検討している方はぜひチェックしてみてください。

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