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診療科/業務内容

訪問診療医とは?必要とされる理由や仕事内容、求められるスキルを解説

更新日: 2024/02/01
訪問診療医とは?必要とされる理由や仕事内容、求められるスキルを解説
訪問診療医とは患者の自宅に訪問し医療を提供する医師のことです。高齢者の増加や、全世代での在宅医療ニーズの高まりから、訪問診療医の需要は増加し続けています。年収もスキルもどちらもアップしたい医師にもおすすめの働き方です。訪問診療医とは何か解説します。

訪問診療医とは、患者の自宅に訪問して医療を提供する医師のことです。高齢者の増加などから、年々需要が高まっている働き方でもあります。

本記事では、訪問診療医とは何か、必要とされる理由や仕事内容、求められるスキル、年収を解説します。

訪問診療医は訪問先で計画的に診療を行う医師

訪問診療医とは、定期的かつ計画的に患者の元へ訪問し、診療を行う医師のことです。通常1~2週間に1回のペースで訪問を行います。

なお訪問診療と似た用語として「往診」がありますが、「往診」とは、通院できない患者の要請を受けて、医師がその都度診療を行う事をさします。(※)

訪問診療医は、診療だけでなく、怪我の治療や薬の処方、患者家族への療養指導なども行います。

※出典:日本訪問診療機構「訪問診療と往診の違い」
http://jvmm.jp/houmon-oushin.php

訪問診療医が必要とされる理由

訪問診療医が必要とされる理由は、高齢者の増加だけでなく、若年層でも在宅医療の需要が高まっているためです。訪問診療は患者のケアをする家族を支える上でも重要な役割を担っています。

在宅医療を必要とする高齢者の増加しているため

高齢者の在宅医療を推進する理由はいくつかあります。一つ目は急性期治療を終えた患者の受け皿とするためです。緩和ケア病棟などは急性期の患者を対象としているため、回復すれば退院しなければいけません。

二つ目は自宅で療養したいと考える国民が増加傾向にあるからです。厚生労働省の調査によると、60%以上の国民が自宅療養を希望しています。(※)

※出典:厚生労働省医政局指導課在宅医療推進室.「在宅医療の最近の動向」.P9
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/h24_0711_01.pdf

若年層でも在宅医療のニーズが増えているため

在宅医療のニーズは高齢者だけでなく、全世代において増加傾向です。なお、医科診療に占める在宅医療の割合は、85歳以上よりも、10~14歳の割合が最も高くなっています。(※)

また、近年では先天的な疾患から医療的ケアを必要とする乳幼児も増加傾向にあります。

(※)経済産業省.「高齢者だけじゃない!需要増す在宅医療」.https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20200324hitokoto.html

自宅で患者を見る家族の安心感のため

訪問診療が必要とされる理由は、患者本人だけでなく家族のためでもあります。患者の付き添う家族の負担を軽減するだけでなく、24時間365日医師や看護師に相談できる安心感から、在宅ケアがしやすくなるためです。

以上のように、超高齢化社会の医療体制の維持、患者本人の希望、家族の負担軽減などの理由から、訪問診療医のニーズは年々増加しています。

医療の提供先の3つの分類

訪問診療医の仕事について理解するためには、医療の提供場所について理解することも大切です。

以下のように医療は提供場所により、3つに分類できます。

提供場所 医療の種類
外来(病院、クリニックなど) 外来(通院)医療
入院先(病院など) 入院医療
訪問先(患者宅、高齢者施設など) 在宅医療(訪問診療・往診)

従来まで、医療は病院や診療所などに限り提供されていました。しかし、1992年の医療法改正により患者の自宅も医療を提供する場として法的に認められました。(※)

ここから現在に至るまで法整備が進み、在宅医療は第3の医療とも呼ばれ、重要な位置を占めています。

※出典:厚生労働省医政局指導課在宅医療推進室.「在宅医療の最近の動向」.P4
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/h24_0711_01.pdf

訪問診療と往診の違い

在宅医療には、訪問診療と往診の2つがあり、それぞれ提供する医療サービスが異なります。

訪問診療とは、先述のとおり1〜2週間に1回など、定期的・計画的に患者を診察するサービスです。患者の健康を維持したり、容態悪化を予防したりすることが目的で、自宅や施設での長期療養が可能となります。緊急時の対応も含め、24時間体制でサポートにあたります。

一方で往診とは、患者やその家族の要望を受けてその都度、自宅に訪問し診療を行う方法です。容態の悪化など、突発的な状況で診察をするため、患者は即入院となるケースも少なくありません。

訪問診療医の訪問先

訪問診療医の訪問先は施設、または患者の自宅のどちらかとなります。

老人保健施設や高齢者賃貸住宅では、訪問時に複数名の患者の診察を行うのが一般的です。一日のうちに複数の施設を訪問することもあります。

患者の自宅では、患者とその家族と向き合い、時間をかけて診察をする点が特徴です。遠方であれば訪問までに時間もかかるため、一日に訪問できる件数も10件未満と多くはありません。

訪問時は看護師などの他のスタッフも同行し、必要であれば治療や処置も行います。ただ患者を診るだけでなく、雑談なども交え信頼してもらうことが大切です。

訪問診療医の働き方や仕事内容

訪問診療医は訪問診療を実施する医療機関に所属し、午前診療と午後診療を行うのが一般的です。一日のスケジュールや診療・処置内容を紹介します。

訪問診療医の一日のスケジュール

訪問診療の場合、訪問スケジュールが決まっています。勤務時間は病院により異なるものの、9時から18時までなど勤務時間は固定されていることが多いです。

なお、午前中は外来診療、午後から訪問診療などと分かれているケースもあります。

また、訪問するだけでなく、都度、院内でミーティングを開き患者の容態や処置内容を共有します。

時間 勤務内容
~9:00 出勤
9:00~9:30 朝のミーティング。訪問予定確認し、担当医、当直医、看護師と前夜の状況や処置内容を話し合う
9:30~12:00 午前の訪問診療
12:00~13:00 昼食
13:00~17:00 午後の訪問診療
17:00~18:00 カルテの入力や書類の作成、整理
看護師やケアマネージャーに連絡
18:00〜 帰宅

当直やオンコールが免除される医院もある

訪問診療は24時間体制で診療を行うことから、夜間・休日対応などハードなイメージがあるかもしれません。しかし、常勤医はこれらの対応を免除する医院も多いです。

その場合、オンコール対応などは非常勤医のチームが行い、常勤医の訪問診療の質向上に務めています。また、チームで対応するため休みを取得しやすく、医師によってはワークライフバランスを実現しやすいでしょう。

診療や処置の内容

訪問診療では、診察や血圧測定、体温測定などの健康管理だけでなく、採血や検尿などの検査、投薬や点滴などの治療も行います。他に、床ずれの処置、尿道カテーテルの管理なども含まれます。

なお、注射や点滴の交換などの処置は看護師が行うケースが多いです。その分、医師は患者やその家族とのコミュニケーションに時間を割きます。

訪問診療は治療だけでなく、健康の維持や病の予防も重要な役目のひとつです。そのため、患者家族の介護の相談に乗り指導なども行います。訪問先の家庭と信頼関係を築くことも大切な仕事です。

訪問診療で関わるスタッフ

訪問診療は、医師だけでなく、以下のようにさまざまなスタッフと共同で仕事をします。

看護師 医師の診療補助業務を行い、訪問看護では医療的ケア全般を担当
理学療法士 体に障害のある患者に対し医学的リハビリテーションを提供
作業療法士 日常生活に関する動作や、レクリエーションを通じて心身のリハビリテーションを行う
言語聴覚士 言語の他、嚥下など喉のリハビリテーションを行う
ケアマネジャー 訪問看護など、介護保険を利用している患者からの申請や相談の対応
薬剤師 医師の処方箋を基に薬を調合する。患者宅に届けるケースも

訪問診療医に必要な資質やスキル

訪問診療医は個人宅など、設備が限られた状態で患者の容態を把握しなければいけません。そのため、総合的に診察する能力や臨床経験が必要です。

また、健康の不安などを正直に話してもらうためにも、患者と信頼関係を構築する力も不可欠です。

総合的な診察力や臨床経験

訪問診療では心電図やポータブルエコーなど、持ち込める検査機器は限られています。そのため、医師は患者の過去の診察履歴や会話、医師自身の臨床経験から健康状態や病状を判断することになります。

臨床経験に加え、状況から総合的に診察する能力が必要です。

コミュニケーション能力

先述のとおり、訪問診療医はさまざまなスタッフと協力して診察を提供します。患者だけでなく、その家族の悩みに答え、介助方法をアドバイスすることもあります。

患者の年齢も10代の若者から高齢者までさまざまです。どのような立場の人とでもコミュニケーションを取れる必要があります。

患者と信頼関係を築く力

訪問診療では治療だけでなく、心身の痛みやつらさを和らげる緩和ケアや、看取りも行います。これらのケアでは患者とその家族に寄り添い、信頼関係を築く必要があります。

治療を押し付けるのではなく最後まで本人の希望を尊重する、介護サービスを活用し家族の負担を軽減するなど、相手を尊重する姿勢が求められます。

訪問診療医の活躍の幅が広がる資格

訪問診療医は内科で募集することが多く、主治医のようなプライマリ・ケアができれば専門医資格がなくとも働けるケースがほとんどです。

とはいえ、需要の拡大や良質な訪問診療を提供する病院が増えたことから、より良い条件で働くためにも在宅医療専門医などの資格を取得しておくとなおよいでしょう。

在宅医療専門医の資格取得条件

在宅医療専門医は、一般社団法人 日本在宅医療連合学会が認定する専門医資格です。上記資格の取得により、在宅ケアや治療の方法を体系的に学ぶことができます。

申請資格は以下のとおりです。(※)

  • 医師として5年以上の実務経験があること
  • 研修医として1年以上の在宅研修プログラムを受講し修了していること

なお、詳しい要件は一般社団法人日本在宅医療連合学会のホームページから確認できます。

※出典:一般社団法人 日本在宅医療連合学会.「専門医制度」.
https://www.jahcm.org/system.html https://www.jahcm.org/

老年科専門医や家庭医療専門医もおすすめ

訪問診療医に役立つ専門医資格は、他に老年科専門医と家庭医療専門医があります。

老年科専門医とは、高齢者に多くみられる病態の中でも、誤嚥や転倒など、老年症候群の主要な症状に適切に対応する医師のことです。これにより、生活の質の改善に努めます。

カリキュラムには在宅環境の整備や終末期医療が含まれており、一般社団法人日本老年医学会が認定しています。(※)

家庭医療専門医とは、診療科目に囚われず、老若男女問わず診察できる専門医資格です。どのような症状でも幅広く多角的に診る力を養うため、訪問診療医の仕事とも相性のよい資格です。

一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会が認定しています。(※)

※出典:一般社団法人 日本老年医学会.「老年科専門医認定試験」.
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/senmoni/exam/index.html※出典:一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会.「新・家庭医療専門医/家庭医療専門医」.
https://www.primarycare-japan.com/assoc/nintei/ni_index_sk/

訪問診療医の年収目安

訪問診療医の年収は勤務先や地域、医師の専門医資格などによっても異なるものの、1,500万円前後が目安です。年収が高い理由としては、患者宅を個別に訪問するという医師の負担を考慮している、開業医が多いことなどが挙げられます。

外来診療に比べ診療点数が高い点も特徴です。

なお、診療科に比べ年収は高いものの、病院によっては担当医が夜間や休日の対応も行う可能性もあります。求人を確認する際は、業務の対応範囲をしっかりと確認しましょう。

訪問診療医の仕事の魅力

訪問診療は、病院では経験できない医療を実践できる場でもあります。また、さまざまな症例にその場で対処するため、幅広い知識と経験が身につく点も魅力です。

病院以上に患者をそばで支えられる

同じ医療であっても、病院と患者の自宅では勝手が異なります。患者の元へ訪問し、一人ひとりの希望に合わせて親身に医療を提供するからこそ、病院以上に感謝される点も訪問診療の魅力です。

患者の治療やサポートだけでなく、家族も含めて支える仕事はそう多くありません。

幅広い知識と経験が身につく

訪問診療では若者から高齢者まで、幅広い年齢の患者を診ます。特に高齢者が多いため、老年症候群や慢性期疾患など、医学部で学習する多くの症例に実際に対処します。

看取りなど、診療科によっては経験しづらい対応も求められるため、医師として大きく成長できる点も魅力です。

また、患者の価値観や人生経験に深く触れられるなど、人間関係を通した成長も得られます。

訪問診療医は今後ますます必要とされる仕事

訪問診療医は患者宅や施設に訪問し、医療を提供する働き方です。専門医資格などは必要ないものの、在宅医療専門医などの資格があれば、活躍の場を広げる上でも役立つでしょう。

高齢化が進む日本では、今後ますます訪問診療医の需要が高まると考えられます。給与が高いだけでなく、病院では経験できない医療を経験できるため、転職やアルバイトでスキル・給与、どちらもアップしたい医師にもおすすめの働き方です。

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