【退局医が語る】円満な医局の辞め方と在籍中の過ごし方

目次
- 医局とはなにか|育成・労働組合・研究機関としての実態
- 1 医師の育成機関
- 2 職業斡旋のための労働組合
- 3 学術研究のための支援組織
- 大学医局による医師派遣のメカニズム|関連病院からの「上納金」と地方医療維持の実態
- 医局側が辞めてほしくない理由
- 理由①医師の育成
- 理由②医局人事
- 理由③学術研究
- 医局を円満に辞める方法|「伝えるタイミング」と「在籍中の行動」がポイント
- 早めに退局の意思を伝える
- 新人時代からご恩と奉公を意識して行動する
- 私の退局の経緯|気持ちよく送り出してもらうために意識したこと
- 外科手術と開業を両立させたい
- 開業後も手術を続けるために全力で医局に貢献をする日々
- 医局への貢献が将来の選択肢を拡げる
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昨今、「医局なんて入るべきではない」「ブラック医局」といった言葉が、SNS上で揶揄されるのをしばしば目にする。果たして本当にそうだろうか。実際に理不尽な経験をしている医師がいることは否定しない。しかし多くの場合、医局を十分に活用できていない、あるいは立ち回り方がわからないまま在局しているケースが少なくないように思われる。筆者は、臨床研修修了後に医局へ入局し、13年間在籍したのちに退局した。現在もなお先輩・後輩とのつながりを保ち、良好な関係を続けている。
本稿では、「医局とはどのような組織なのか、目標となる医師に育つ上でどのように活用できるのか」を考えていただく際の一助となれるように、筆者の経験をもとお話ししたいと思う。もちろん診療科によって違いはあるが、せっかく人生の中で「医局に入局する」ことを選んだのであれば、その価値を最大限に享受し、医師として大きく成長したうえで、新たな世界へ羽ばたいてほしいと願う。
昭和医科大学医学部整形外科学講座を退局後2025年より兼任講師。救急外傷からプロアスリート診療まで研鑽を積む。・日本専門医機構認定整形外科専門医・日本整形外科学会認定指導医、認定スポーツ医、認定リハビリテーション医・日本スポーツ協会公認スポーツドクター・東京都難病指定医
医局とはなにか|育成・労働組合・研究機関としての実態
医局には医師の育成機関、労働組合、そして学術研究のための支援組織という3つの役割がある。まずは、それぞれの概要を解説したい。
1 医師の育成機関
医師免許を取得した。初期臨床研修を2年修了した。だから何?である。本稿を読む医師の皆さんにはよくわかると思うが、それはまだスタートラインに立ったに過ぎない。専門領域を定め、なお半人前の状態で、実際に患者の命を扱うことになる。
根拠のない自信に満ちあふれた若者もいるが、多くは不安に押しつぶされそうになりながら、外来・検査・手術に向き合い、職場の片隅で参考書を開く。筆者自身もそうであったし、先輩方も、今の新人たちも同様であろう。
そのようなときに大きな助けとなるのが医局である。
知識については「まずは自分で教科書を読みなさい」と言われる。しかし、テクニック、言葉遣いといった接遇、場の雰囲気づくりなど、テキストに書かれていないことは何から学べばよいのか。それを教えてくれるのが、医局に属する指導医である。
大学に属さず就職した医師であっても、職場にはお手本となる先輩医師がいるだろう。しかし、その母数が圧倒的に多いのが大学医局である。多くの先輩から学び、それを取捨選択しながら「自分流」を形成していく。新たに加わった仲間を一人前に育てることは、医局の重要な使命の一つである。
また、大学院進学や研究を含めたキャリア設計、人脈形成においても、医局は有益なコミュニティである。
2 職業斡旋のための労働組合
医学部には、一般大学にあるような就職支援課やキャリアセンターが存在しない。医師は国家資格取得後、技術を磨き、専門医を取得するなどの過程で、複数の職場を経験する必要がある。
大学側からすれば、医局に所属すれば勤務先は医局が調整してくれるため、また母校に残ってもらえればなおさら喜ばしいため、独立した就職支援部門を設ける必要がない。これは伝統的なことである。
一方で、医局に属さず初期臨床研修修了後に就職を選択する医師もいる。その場合、就職説明会やインターネット、人材紹介会社などを利用し、常勤先・非常勤先を自ら能動的に探す必要がある。
3 学術研究のための支援組織
学術研究は何のためにあるのか。それは、世のため人のためになる新たな知見を見いだすことである。探究心を持ち、常に学び続けることは、医師としての生涯にわたる責務である。
論文を読み、データを集め、学術集会で発表し、論文を執筆する。医師は業績を積み、生きた証を残していく。
医局という網状のネットワークを持つコミュニティにおいて、「テーマが与えられる」「指導医がいる」「共著者のネットワークがある」という点は大きな強みである。その努力は個人の成長にとどまらず、医局や大学の業績向上にもつながる。業績が増えれば組織としての認知度が高まり、その分野における価値も上がる。
医局は法人ではないが、大学という親会社を持つ中小企業のような存在であり、主任教授は雇われ社長に近いと考えると理解しやすい。
大学医局による医師派遣のメカニズム|関連病院からの「上納金」と地方医療維持の実態
関連病院とは、基本的に大学関係者が病院長クラス、あるいは医局関係者が診療部長クラスに就いている医療機関を指す。まったく縁故のない病院であっても、前任大学が撤退した場合や派遣要請を受けた場合などに、メリットがあると判断されれば診療部長を派遣し、新たな関連病院となる。
ではなぜ医局は仲間を増やそうとし、あるいは派遣打ち切りという形で仲間を切るのだろうか。そこには「ヒト」と「カネ」の問題がついて回る。
まずヒトの問題である。修業可能な施設が多いほど、医局員一人ひとりの臨床経験数は増え、技術向上につながる。これは医師育成の観点からも、学術研究の観点からも都合がよい。
大学所在地から離れた地域に関連病院を持つことで、多様な患者ニーズを経験でき、研究症例数を確保できるうえ、大学の宣伝効果も得られる。
次にカネの問題である。医局運営の資金は、大学からの補助、OBからの寄付、医局費徴収に加え、関連病院からの協力金によって支えられている。
いわば医師派遣に対する負担金であり、裏では「上納金」などと呼ばれることもあった。
これを不快に感じる医師もいるかもしれないが、実態は逆である。関連病院からの協力金は、医師としての知識・技術、そして人生の時間を高く評価し、対価を払う「医師の専門性を担保する仕組み」である。現在で言うサブスクリプションモデルに近い。
地方医療を維持するために、関連病院はそうまでしなければ人材を確保できないのも現実である。
医局側が辞めてほしくない理由
前述したように、医局の役割は、①医師の育成、②人事、③学術研究の三本柱である。それぞれの役割における「止めて欲しくない理由」を掘り下げたい。
理由①医師の育成
どの組織でも人的資源は多い方がよい。医局員は、優秀な者、平凡な者、そして戦力外と見なされる者までさまざまだが、医局は戦力外と評価されがちな医師の成長にも力を注ぎ、少しでも戦力となる医師へ引き揚げようとする。一定のスキルを身につけさせ、どの医療機関でも働ける水準まで育て上げることが目標である。
ある程度のスキルを身につけた医師は、次第に医局へ貢献する側へ回っていく。後輩へ知識や技術を伝え、キャリアプランの相談に乗る。ときには酒を酌み交わし辛さを分かち合い、人脈形成や共通の趣味を通じて時間を共有する。こうした一対一や少人数にとどまらない多数の関係性の中で、医局員はより豊かな人格を形成していく。医局とは、そのような場でもある。
その中で一人、また一人と減っていくことを想像してほしい。教育係も、ともに働く仲間も多い方がよい。組織として、簡単に辞めてほしいと思える存在など滅多にいない。
理由②医局人事
人事の観点では、さらに深刻な問題が生じる。退局者が出れば欠員補充が必要となり、その数が入局者数を上回れば、まずは大学に残る人員を派遣することになる。しかし大学病院も高度医療機関として最低限のマンパワーを維持しなければならない。
医局員の減少が著しくなれば、いわゆる派遣切りを余儀なくされる関連病院が生じる。診療部長が孤軍奮闘するのか、医局として撤退するのか。いずれの場合も、マンパワー低下のしわ寄せを最終的に受けるのは患者である。医局員の生活と関連病院で地域医療を守ることも、医局の重要な役割の一つである。
理由③学術研究
学術研究においても事情は同じである。医局員にはできる限り大学院に進学し、一つのテーマを持って研究に取り組んでもらいたい。多くの医局には、先代・先々代から受け継がれた研究テーマや、特定の講師が繰り返し講演に招かれるような得意分野が存在する。
研究は一人では成り立たない。例えば以下のような局面だ。
- 同僚と協力してデータを集める
- 患者からアンケートを取る
- 実験動物を交代で管理する
関連病院の同僚と連携した多施設共同研究により、症例数の多い、エビデンスレベルの高い研究も可能となる。先輩の研究の続報や追試を発展させ、さらに深く掘り下げることで、新たな知見が得られることもあるだろう。
医局員には、研究を通じて論文を執筆し、研究者として一回り成長してほしいという願いがある。大学の名を冠した成果が社会貢献につながれば、なお望ましい。だからこそ医局としては、一人でも多くの医局員に在籍してほしいのである。
医局を円満に辞める方法|「伝えるタイミング」と「在籍中の行動」がポイント
完全に円満な退局など存在しない。
満場一致で反対もなく、新しい挑戦をする自分の背中を全員が押してくれる――そのような環境は稀有である。とはいえ、立ち回り次第で退局時の軋轢を最小限におさえることは不可能ではない。最後に医局を円満に退局する方法を述べたい。
早めに退局の意思を伝える
「あいつ、辞めやがった。」必ずそう思う者がいる。
例外は、親の急逝による実家診療所の継承、家族の事情による転居、病気療養などであろう。これらの場合は同情が集まるが、退局する本人ですら急なキャリア変更に納得していないことも少なくない。
多くの場合、退局理由は職場選択の自由や収入の安定といった自己都合によるものである。
教授や医局長、そして残される同僚の引き留めの言葉はありがたく受け取りつつ、恨みやわだかまりを最小限にするためには、早めに退局の意思を示すことが重要だ。
社会人として、6〜12か月前の申告が望ましい。
新人時代からご恩と奉公を意識して行動する
ただし、早く伝えればそれでよいという話ではない。退局の噂は、関連病院に散らばる同僚のもとへも瞬く間に伝わる。そのとき、誰もが考えるのは次の二点である。
「あいつは、これからどうするのか」
「あいつは、これまで医局で何をしてきたのか」
前者は退局理由と進路であり、後者は医局への貢献である。この二つはセットで評価される。
ここで重要になるのが、《御恩と奉公》 という考え方である。
自己都合で退局し、なおかつ背中を押してもらいたいのであれば、医局に貢献してから辞めるべきである。これは精神論ではなく、現実的な処世術でもある。将来的に退局することを見据えているのであれば、その数年前から準備を始める必要がある。
開業するのか、他病院へ勤務するのか。転居し物理的な距離を取るのか。それとも、難渋症例に遭遇した際には今後も医局を頼りたいのか。
専門医取得後に退局すると決めている医師もいる。組織に入る前からその先を見据えて生きている、ある意味で覚悟の決まった医師である。このような医師が円満に退局するために最も重要なのは、「惜しまれる存在」になることである。
その土台は新人時代に作られる。朝早く病棟に足を運ぶ。カンファレンスで議論に参加する。派手な成果でなくてよい。真摯な姿勢は必ず誰かが見ている。
多くの場合、新人医師の最初の勤務先は大学病院であり、そこには教授・准教授・講師といった医局上層部が揃っている。しかし2年目以降になると、新たな新人が入局し、関連病院へ派遣された医師は上層部との接点が減っていく。上層部の記憶は毎年更新されるが、不思議なことに新人時代の印象は色濃く残る。
「あんなに一生懸命やっていたのだから、将来は医局に大きく貢献してくれただろうに」
そう思わせることができればよい。もちろん、2年目以降に努力しなくてよいという意味ではない。関連病院での働きぶりは、部長を通じて医局へ報告されていることを忘れてはならない。
私の退局の経緯|気持ちよく送り出してもらうために意識したこと
大多数の医師は、「いつかは退局するのだろう」と漠然と考えながら在局している。
実は筆者もこちら側の人間であった。入局した頃はただひたすら手術が上手になりたい一心で救急車を片っ端から受けては手術症例を探す日々。ただ頭の片隅で経営やチームビルディングにも興味があり、「いつかは開業医になりたいな」と考えるもその時期や具体的なプランニングははなにも決まってはいなかった———。
そのような医師こそ、円満な退局のためには 「感謝されること」 を意識する必要がある。
自分は将来、どのような医師として、どのように患者と向き合いたいのか。目の前の業務をこなすことは重要だが、それだけで思考停止してしまっては惜しい。ここでは、私が退局を考え始めた経緯や、円満退局に至るまでの経緯を述べたい。
外科手術と開業を両立させたい
専門医取得後4〜5年、卒後10年前後になると、大学でのし上がる、研究畑で生きていくという強い野心を持つ者以外、多くの医師が「自立したい」という思いを抱く。そして退局に悩む。
これは国家資格職として、ごく自然な通過儀礼である。
筆者は、卒後9年頃より外科手術を諦めないで開業医になる方法を模索し始めた。これを実践するための方法は主に2つ。
一つ目の方法は手術室を有する医療機関を自ら設立することだ。しかしこれには多額の資金が必要になる。建設費、麻酔科や看護師等の人権費、維持費。もはや病院である。一般的ではないとわかる。
二つ目は開業医が自らの医療機関ではなく他院の手術室を借りる方法だ。実際に多くの医師がこの方法を実践している。
手術技術が向上し、主導して執刀する例が増える。学年が上がり後輩の指導もできるようになる。外科医として脂が乗り始める時期だが、まったく新たな事を始めるために、これまで培った技術を捨て去ることに疑問を持った。診断、手術、術後リハまで病院勤務だった時のように一貫して患者と接し、かつ診療所で地域医療に従事する、ということに興味が出たのだ。
開業後も手術を続けるために全力で医局に貢献をする日々
そこからは開業に関する事柄に加え、手術を諦めなかった先輩医師は貸してくれる手術室をどのように確保したかに関する情報収集を行うようになった。
日帰り手術でなければ入院管理が伴う事が多い。先輩にお願いするには気が引ける。すると後輩医師だ。しかし管理をお願いされる医師も何も見返りがなければパワハラとも受け取られかねない。手術助手として入ってもらい、ときには指導して力を蓄えてもらいたいと考える。
筆者はそこまで考えた時に、「次の関連病院では全力で仕事しよう。患者からの評判を得、部長や病院から気に入られよう。きっと後々手術室を貸してくれるかもしれない。」そう思って出向した。これまで怠けていたわけではないが、持てる力を注いだ。そうして4年半在籍した古巣の医局関連病院で今も週1回手術を行っている。執刀する症例を絞ったり、ハイリスクの症例はしっかり管理できる病院にお願いしたりと選別することも忘れない。
医局への貢献が将来の選択肢を拡げる
私の生き方には賛否両論あろう。開業医に転身したなら全振りするべきだ、二兎追うものは一兎も得ずではないか、病院勤務医に負担をかけている、などの意見を持った読者もいるかもしれない。どんな考えも間違いではない。しかしキャリアというのは一括りにはできない。診療科、専門分野、地域、年齢、性別、家族、みな様々である。
だからこそ、早い段階からキャリアプランを描いてほしい。そしてその中に、医局への貢献という時間を組み込んでほしい。全力で関連病院で仕事をしてくれた医局員には感謝するし、いつまでも仲間でいてほしいと思うものだ。ここまでして退局を切り出すと、何か裏切ってしまうような気持ちに苛まれるが、自らの人生を送ることや家族を守ることを第一に考えることを、誰も責められない。
そして育ててもらった教授からは感謝されながら送り出してもらおう。辞めたいです、と伝えて「あ、そうなの?わかった。さよなら。」では悲しいではないか。
結局のところ一言に尽きる。
「いままでありがとうな」
そう言ってもらえる退局こそが、最も円満な辞め方なのである。
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