専攻医とは?専門医との違いやメリットについて解説
目次
- 専攻医とは臨床研修の次の段階
- 医学部卒業から専攻医になるまでの期間
- 専攻医と専門医の違い
- 新専門医制度が成立した背景
- 専攻医になるためのステップ
- 専攻医登録をする
- プログラムを選択する
- 一次募集に応募する
- 面接を受ける
- 合否が通知される
- 専攻医を目指す際に覚えておきたいポイント
- 1. 専攻医の研修は必須ではない
- 2. 専攻医の研修は中断ができる
- 3. 専攻医はアルバイトが可能
- 専門医になるメリット
- 患者や他の医師・スタッフからの信頼を得られやすい
- 転職時に専門スキルをアピールできる
- 規模の大きな病院
- 急性期の病院
- 専門医の研修施設を目指している病院
- 病院側にもメリットが生まれる
- 専門医になるデメリット
- 専攻医の研修を経て専門医を目指そう
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医師になるには国家試験合格後に2年間の臨床研修を受ける必要があります。この2年を過ぎると専攻医の段階に進むことが可能です。
専攻医はより専門的な知識やスキルを磨く期間です。専攻医にならずとも、臨床研修を終えていれば臨床の仕事に携わることが可能ですが、専攻医になることでいくつかのメリットがあります。
この記事では専攻医とはなにかや専攻医になる方法、メリットやデメリットなどを解説します。
専攻医とは臨床研修の次の段階
専攻医とは臨床研修を終えて専門的な研修(専門研修プログラム)を受けている医師のことをいいます。専攻医は、2018年の新専門医制度の誕生によって生まれた名称です。新専門医制度が始まる以前は、臨床研修を終えた段階の研修医は、一般的に後期研修医と呼ばれていました。(※)
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000508257.pdf,(入手日付2023-07-03).
医学部卒業から専攻医になるまでの期間
医師を目指す場合、大学の医学部を卒業して医師国家試験に合格する必要があります。大学の医学部には6年間通うため、18歳で大学に入学した場合、卒業時は24歳です。(※)
その後、医師国家試験に合格すると臨床研修に進みます。臨床研修医の期間は2年間です。24歳で医師国家試験に合格したとすると、専攻医になるのは最短で26歳ですが、この年齢はあくまで目安です。
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000508257.pdf,(入手日付2023-07-03).
専攻医と専門医の違い
専攻医に似た言葉に専門医がありますが、両者は大きく異なります。専攻医が研修を受ける理由は専門医になるためです。つまり専攻医は専門医の前段階にあるといえます。
専門医は医師の診察のクオリティを担保するための資格であるため、一定の要件を満たさなければ取得・更新できません。(※)
医師免許は一度取得すれば更新は不要ですが、専門医は更新が必要なため、継続したスキルや知識の向上が求められます。
https://jmsb.or.jp/senmoni/
新専門医制度が成立した背景
専攻医は3年以上の専門研修プログラムを経て、一定の要件を満たすことで専門医の資格を取得することができます。このような新専門医制度はどのような理由で誕生したのでしょうか。
2018年に新専門医制度が誕生するまで、内科や外科など各領域の学会がそれぞれの方針で専門医を認定していました。(※)
学会が独自に専門医を認定していたため、認定基準が統一されておらず、課題となっていたのが次のような問題です。
- 専門医のスキルや質の偏り
- 専門医に対する医師と国民のイメージのギャップ
- 地域格差
このような課題を解消するために、専門医を育成、認定、評価する第三者機関である日本専門医機構が発足し、新専門医制度が誕生しました。
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000508257.pdf.
専攻医になるためのステップ
専攻医になるには次のような条件をクリアしなければなりません。(※)
- 医師法に定められた日本の医師免許を有すること
- 卒後臨床研修修了登録証を有すること
- 各学会の正会員であること
これらの条件を満たしていれば、次のようなステップで専攻医になるための手続きをしていきます。(※)
- 専攻医登録をする
- プログラムを選択する
- 一次募集に応募する
- 面接を受ける
- 合否が通知される
https://anesth.or.jp/users/person/requirement/training_program_process
※出典:一般社団法人 日本専門医機構.「研修施設の方」
https://jmsb.or.jp/kenshu/#an02
専攻医登録をする
専攻医としての研修を受けるためには、最初に専攻医登録が必要です。日本専門医機構ホームページか専門研修希望領域(学会)のホームページから登録用のページにアクセスし、氏名や生年月日、医籍登録番号、登録時点で希望する専攻診療領域などを入力します。
プログラムを選択する
専攻医の登録サイトに掲載されている研修プログラムを確認して、希望するものを選択します。専攻医の研修プログラムは基本領域とサブスペシャルティ領域に分かれます。サブスペシャルティ領域は基本領域の専門性をより高めるためのプログラムです。
基本領域の専門医資格を取得後、基本領域と関連したサブスペシャルティ領域を選択して研修を受けることができます。ただし、領域によっては基本領域とサブスペシャルティ領域の研修を並行して受けることも可能です。
基本領域は次のとおりです。(※)
2023年7月時点で一般社団法人 日本専門医機構が認めるサブスペシャルティ領域は次の24領域です。(※)
上記以外にもさまざまな学会や領域から、サブスペシャルティ領域としての認定の要請が出されています。
一方で専門医の乱立を防ぐべきという意見もあるため、サブスペシャルティ領域を増やすべきかについては慎重な議論が必要であるとされています。(※)
また、プログラムを選択する際はシーリング制度に注意が必要です。シーリング制度とは地域や診療科ごとの医師の偏りを緩和させるために、採用数に上限を設ける制度です。シーリング制度によって希望する地域や科の研修を受けられない場合もあります。
例えば、地域・科ともに多くの希望者が出る傾向にある東京都の内科研修プログラムの場合は、希望しても採用されない可能性があります。
シーリング制度によって採用されなかった場合、他の地域での研修が必要です。また、採用されたとしても一部の研修プログラムだけを別の地域で受けるというケースもあります。
https://jmsb.or.jp/subspecialty/※出典:一般社団法人 日本専門医機構「サブスペシャルティ領域について」
https://jmsb.or.jp/subspecialty/(入手日付2023-07-03).※出典:厚生労働省「サブスペシャルティ領域の在り方に関するワーキンググループの報告」
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000608168.pdf(入手日付2023-07-03).
一次募集に応募する
専攻医の一次募集は12月初旬からスタートします。募集開始から締め切りまでの時間は少ないため、希望する施設の状況をしっかりと把握して応募しましょう。
応募は1領域の1プログラムに限られるため、自分の希望や将来のビジョンなどをしっかりと考えた上で応募することが重要です。
面接を受ける
一次募集に応募後、病院のプログラム統括責任者の案内に従って面接に進みます。面接の準備として、就職活動や転職活動と同じように志望動機や自分の長所短所などの自己分析をしておきましょう。
合否が通知される
面接後の選考が終わり次第、応募先から合否通知が届きます。合格であれば応募先の担当者からの指示に従い、研修の準備を進めていきましょう。
一方、不合格だった場合は二次募集に応募します。二次募集への応募方法は一次募集と同様です。
専攻医を目指す際に覚えておきたいポイント
専攻医を目指す際には次のポイントを覚えておきましょう。
- 専攻医の研修は必須ではない
- 専攻医の研修は中断ができる
- 専攻医はアルバイトが可能
1. 専攻医の研修は必須ではない
初期臨床研修を終えた後に専攻医を目指すかどうかは任意です。
一方、初期臨床研修は必須で、医師法には次のように定められています。
”診療に従事しようとする医師は、二年以上、都道府県知事の指定する病院又は外国の病院で厚生労働大臣の指定するものにおいて、臨床研修を受けなければならない”
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000201
医師になる上で必須な臨床研修と異なり、専攻医とはあくまで専門医を目指すための研修プログラムです。そのため、専門医になるつもりがなければ、専攻医の研修プログラムを受ける必要はありません。
2. 専攻医の研修は中断ができる
結婚や妊娠、海外勤務や留学などの事情により、専攻医の研修が受けられなくなった場合、途中で研修を中断することができます。中断の際、中断期間が6カ月以内で症例数などが揃っていれば、研修期間の延長は不要です。
例えば、産前・産後に休業もしくは育児休業を取った場合でも、休業期間が6カ月以内であれば通常どおりの期間で専門医資格を取得可能です。(※)また、6カ月を超える休業であっても、復帰時に中断前の実績が引き続き認められます。
なお、臨床研修であっても、やむを得ない事情によって研修を中断することは認められています。臨床研修を中断する場合、中断期間が90日までであれば、2年という所定の期間で研修を修了することが可能です。中断期間が90日を超えた場合は、中断した分の日数を延長しなければなりません。
また、パートナーの転勤などで臨床研修を中断する場合、臨床研修中断証が交付されます。臨床研修中断証が交付されることで、研修を再開する病院でそれまでの研修内容を踏まえた研修を受けられます。
https://www.med.or.jp/joseiishi/article013.html,(入手日付2023.07.04)
3. 専攻医はアルバイトが可能
臨床研修医の場合はアルバイトが認められていません。一方、専攻医はアルバイトが可能です。
しかし、一部の研修先では専攻医であってもアルバイトが認められていないケースがあります。そのため、自分の研修先がアルバイトを認めているかどうか確認して、研修先のルールに従うようにしましょう。
専門医になるメリット
専攻医の研修を経て専門医になることで、転職時に専門スキルをアピールすることが可能です。また、専門医が勤務する病院側にもメリットが生まれます。
患者や他の医師・スタッフからの信頼を得られやすい
専門医は対象診療科の専門的な知識を持つ医師という証明になるため、患者はもちろん、同僚の医師やコメディカルスタッフからの信頼を得られやすいというメリットがあります。
転職時に専門スキルをアピールできる
専門医になることで自分のスキルや経験、知識をアピールできます。そのため、転職する際は大きな強みになると言えるでしょう。
転職時の強みになるのは専門医としてのスキルや知識、経験だけではありません。専門医資格を取得するために専攻医として努力した姿勢も評価される可能性があります。
また、管理職の条件として専門医の資格を設けている病院であれば、採用後のキャリアアップにもつながるでしょう。
病院の中でも、専門医であることを評価される可能性が高いのが次のような病院です。
- 規模の大きな病院
- 急性期の病院
- 専門医の研修施設を目指している病院
規模の大きな病院
大学病院や総合病院といった規模の大きな病院は、診療科目が細かく分かれています。そのため、それぞれの科目についてのより深い知識が必要です。専門医資格を取得していれば、診療科目への深い知識を評価されて採用される可能性が高まります。
急性期の病院
急性期の病院では多くの患者を受け入れるためにも、患者が退院や転院をするために必要な処置を、早く的確に施す必要があります。さまざまな患者の症状にあわせて処置をするため、医師としてのスキルや経験が必要です。
そのため、急性期の病院で多くの症例を経験している専門医は優遇される傾向にあります。
専門医の研修施設を目指している病院
専門医資格を取得できる研修施設を目指している病院は、専門医の採用に積極的な可能性があります。高いスキルを持つ医師が在籍しているということは、研修施設にふさわしいというアピールになるため、専門医が採用されやすいことが考えられるでしょう。
病院側にもメリットが生まれる
専門医になることで医師はスキルや経験、知識をアピールできるようになりますが、専門医を採用することは病院側にもメリットがあります。
専門医が診療するからといって診療報酬が高くなるわけではないため、直接的な収入にはつながりません。
しかし、患者に専門性の高い医師が在籍していることをアピールすることが可能になり、専門医のもとで研鑽を積みたい若手医師の採用にもつながるでしょう。
専門医になるデメリット
専攻医を経て専門医になることでスキルや経験を積める、転職時に資格をアピールできるといったメリットがあります。一方で専門医になるためには資格の受験料や更新料、学会参加の旅費などの出費が発生するというデメリットが挙げられます。
また、受験や更新の手続きに時間を取られてしまう、病院によっては専門医の資格を取得しても給与に反映されないといったデメリットも考えられるでしょう。
専攻医の研修を経て専門医を目指そう
専攻医とは2年の臨床研修を経た後に、より専門的な知識やスキルの取得を目指している段階です。以前は後期研修医として知られていましたが、2018年に新専門医制度が誕生したことで専攻医と呼ばれるようになりました。
専攻医になるかどうかは本人の任意です。専攻医の研修プログラムを終えると専門医として認められます。専門医の資格を有すると転職時に自身のスキルや経験をアピールしやすくなります。ただし、専門医を目指す上では、資格の受験料や更新料、学会参加の旅費などの出費が発生するといったデメリットもあるため事前に理解しておきましょう。
専攻医は臨床研修医と異なりアルバイトが認められています。そのため、収入に不安がある・研修先以外でも経験を積みたいという場合は、アルバイトをするのもおすすめです。
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