【座談会】これからの医師に求められることとは? ―中堅医師3名が考える未来 (後編)―
目次
医師偏在、働き方改革、AI・ICTの発展、少子高齢化―現代の医療を取り巻く環境は大きく変化しています。このような時代において、医師にはどのような役割やスキルが求められるのでしょうか。今回、三者三様のキャリアを歩む中堅医師3名が、これからの医師のあり方について率直に語り合いました。後編では医師に押し寄せる変化によって直面する3つの壁を突破する方法やこれから求められる医師の姿、そしてリスキリングの捉え方や方法についてお届けします。
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【座談会】これからの医師に求められることとは? ―中堅医師3名が考える未来 (前編)―
◆座談会参加医師の紹介◆
コウ:7年目医師 /産婦人科
昨年、産婦人科専門医を取得。現在は某地方大学大学院生1年目として研究にも従事。地方医局の一員として地域の野戦病院等で臨床経験を積んできた。
チラ:11年目医師/呼吸器内科
最後の旧内科専門医世代として、内科認定医、総合内科専門医、呼吸器専門医を取得。地域での勤務経験を経て、現在は関東の急性期総合病院で勤務。医局を離れ、副業として医療記事監修や医療訴訟の意見書作成なども手がける。
まるた:10年目医師/整形外科
大学病院で初期研修後、整形外科に入局し、最短コースで専門医を取得。今年4月に医局を退局し、クリニックへ転職。現在は雇われ院長として診療にあたりながら、嘱託産業医としても活動中。
壁を突破するための具体的アクション
——医師が直面する、「時間的制約」「組織の閉鎖性」「金銭的問題」という3つの壁を突破するにはどういった行動や意識が必要でしょうか?
まるた:まずは、自分自身の価値観や将来像を意識することが最重要だと思います。どんな医師として働きたいのか、どんな生活を送りたいのか、その目標がある程度定まれば、次に取るべき行動も見えてくると思います。
そのうえで、先輩に相談するのはとても有効ですよね。医局の中でもよいですし、最近ではSNSやオンラインコミュニティを通じて、多様なキャリアの実例に触れることができます。そうした経験を持つ人の話を聞くことで、自分のキャリアの壁を突破するヒントが得られるのではないでしょうか。
チラ:壁の突破としては、ハードルを下げてなんでも聞いてみる、顔を出してみるというのが良いと思います。職場の先輩や、SNS、オンラインコミュニティなど、なんでも良いと思います。きっかけは小さくても、知らない世界を知ることが大きな財産、地盤形成になります。
私は、常勤先での臨床を維持しながら、バイトや当直を詰め込むよりも、副業など別の形で収入を得る方法を見つける方が、長期的には健全だと思っています。ただ、バイトにおいても色々経験することは有意義です。
例えば訪問診療をスポットバイトでやってみる、健診バイトをしてみる、オンコールや待機のような業務をやってみる、救護スタッフ、病棟管理の業務をしてみるなど、普段の業務では関わることのできない色々な世界を知ることは今後のキャリアを考える上でも大きな財産になります。
コウ:さらに具体的なステップバイステップを挙げるとするとどんな行動や習慣、意識が必要でしょうか?
まるた:臨床医が壁を越えるのって本当に難しいですよね。実際、自分も行動に移すまでに時間がかかりました。医師はプライドの高い人も多いので、何か違うことを始めている人に対して否定的な反応をされることもあります。
1つのステップとしては、危機感を持ったり、自分の価値観や将来像を描いたりすること。そして、そのための時間を無理にでも作ることです。そのうえで、SNSでのリサーチや、医局を出た先輩・副業や転職を経験した人に相談するなど、小さな行動を積み重ねていくことが大事だと思います。
チラ:実際に行動に移すまでが大変と感じている方が多いのではないかと思います。まずは身近な範囲で行動を起こすことが重要です。たとえば、普段のバイトでも違う施設を探してみる、訪問診療を経験してみるなども行動の1つだと思います。思わぬところでの新しい出会いにより急速にステップが進む場合もあります。
また、思い切って「他人の力を借りる」ことも有効です。転職エージェントに登録してみる、匿名のペンネームでSNSを始めてみる、これらはどれも小さな一歩にみえて実際は大きな後押しになります。そして、行動を続けた上でコミュニティ外の繋がりを増やすということが大きなポイントだと考えています。色んな場所に出て新しい出会いや繋がりを持つと、自然と視野が広がりますし、その中には自分にとって大きな財産になる出会いも存在します。
求められる存在になるために
——院外の活動に挑戦するため、キャリアを充実させるために見過ごせないポイントはありますか?
コウ:院外での活動を考えた時に、キャリアを充実させるためにも「誰に求められるか」という点は重要な気がします。その過程ではどのように考え、選択していくのが良いのでしょうか?
チラ:私自身が勤務医であり、まずは現場を軸に考えています。勤務医であれば、所属している病院やその地域にとって「必要とされる医師」になることが基本だと思います。それは無理に意識するというより、日々の診療を普通に行い、患者さんやスタッフとの信頼を積み重ねていけば自然と評価されて求められる存在になっているはずです。
一方で、副業や病院以外の活動では、やや求められる先が異なってくると思います。例えば記事の監修や執筆においては、読者が知りたいこと、求めている情報を意識する必要があります。案件を継続させるためには、「またこの人の記事を読みたい」と感じてもらう、求められるようになることが必要です。
まるた:私も雇われの立場なので、まずは病院やクリニック、そして一緒に働くスタッフを一番に考えています。学生時代に先輩医師から「自分の給料の5倍は売り上げを出さないとスタッフに給料が払えない」と言われたことが強く影響しており、まずはスタッフのためにという意識があります。その意識が結果的に地域への貢献にもつながっていると感じています。
結局、勤務医であっても副業であっても、「自分に報酬をくださる人に喜んでもらう」ことを第一に考えるという点は共通しています。その積み重ねが、最終的には地域や社会への貢献につながっていくのではないでしょうか。
コウ:急に副業や転職を考えて足元が疎かになるのではなく、まずは自分の勤務地、周りのスタッフ、経営者や取引先企業の意向をしっかりと認識し、一つ一つ応えていくということが大切ですね。
学び直しとリスキリングの重要性
——最後に、これからの時代の医師としての学び直しやリスキリングについてご意見をいただけますか?
チラ:学び直しやリスキリングについては遅すぎるということはないというのが私の意見です。何か興味を持った分野やスキルが出たら、学び直しでもリスキリングでも簡単にできることから行動に移してみると良いでしょう。
私自身、数年前までは日々の臨床とスポットや非常勤アルバイト以外に考えない日々でした。しかし、副業の新しい働き方を知ってからは、できそうなことから少しずつリスキリングにトライしました。
そのうち作業効率を考えるようになり、今はAIとの上手な向き合い方や活用が欠かせないと感じ、AIツールの勉強も実際に触れながら始めています。また、副業を続けるうちに個人事業主のお金や確定申告や税務についていかに自分が無知であったかを知りました。一から勉強をしているところです。
まるた:学び直しやリスキリングに遅すぎることはないというのはおっしゃるとおりですよね。医療の世界は常に新しい知見や治療法が出てきますから、学び直しは必須だと思います。ガイドラインや診療技術のアップデートに追いついていくこと自体が、臨床医の責務だと感じます。
——まるた先生は副業もなさっているとのことですが、どのような姿勢で取り組んでいらっしゃいますか?
まるた:副業となると、医師としての専門性は通用しても、ライティング技術や営業技術などはゼロスタートになることが多いですよね。だからこそ、プライドを捨ててでも教えてもらう姿勢を持つことが大切だと思います。
あとはコミュニケーション能力も大きいのではないでしょうか。医師はどうしても臨床スキルに注力しがちですが、実際の臨床現場では患者さんやスタッフ、経営層との調整など人とうまく付き合う力も必要と感じます。これは生まれつきの性格というより、意識して学んで実践することで身についていく部分もあると思います。
チラ:コミュニケーション能力や人との接し方も重要な要素ですね。この部分は医療職では教わる機会もそうそうないです。なにか書籍などで学んだり、他の方の良い接し方を観察したりして、模倣して取り入れるよう意識してみるとそれも良いと思います。
コウ:私は、ビジネスマナーも医師にとっては重要なリスキリングの要素だと感じています。名刺の渡し方からメールでの作法まで、病院内で働くだけでは身につかない作法があります。研修を受ける必要はないと思いますが、新社会人向けの書籍を一冊読むだけでも常識が身につくと思います。医師だからこそ、最低限のビジネスマナーを身につけるだけで相手に安心感を与えていると感じることが多々あります。
まとめ―これからの医師像
今回の座談会を通じて、医師を取り巻く環境の変化と、それに対応するための具体的なアクションが明らかになりました。
10年間で医師の役割は「一人で全てを背負う存在」から「チームの中で責任と負担を分散して担う存在」へとシフトし、同時に経営意識も求められています。現代の医師が直面する「時間」「閉鎖性」「お金」という3つの壁に対しては、小さな一歩から始める行動変容、人脈構築、多様な経験の積み重ねが突破口となるでしょう。
これからの医師に求められるのは、現場での専門性を軸としながらも、視野を広げ、継続的に学び直す姿勢だ。AIツールの活用、ビジネススキル、コミュニケーション能力など、医療以外の領域も含めた総合的な力が必要です。
医師としての専門性を磨きながら、変化する時代に柔軟に対応していく―これがこれからの医師に求められる姿勢なのかもしれません。
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