【研修医必見】専門医資格は取得すべき?現役医師が答える“研修医が考えるべき進路”
目次
- 専門医資格取得の現状とキャリアにおける役割
- 新専門医制度のポイント
- 給与への反映と経済的コスト
- 専門医を取得するメリットとデメリット
- メリット:キャリアの選択肢拡大と交渉力向上
- ①専門医研修での学びによるスキルと経験値の獲得
- ②大規模病院・急性期病院への就職
- ③医局での昇進・指導的地位
- ④高単価なスポット・アルバイト
- ⑤開業時の信頼性と優位性
- デメリット:時間的・経済的コストと研修の負担
- ①研修期間中の労働環境
- ②維持コストの発生
- ③キャリアの標準化
- 専門医を取得しない選択肢と現実
- 転職・就職の選択肢の制限
- 治療・処方制限
- アルバイトの単価低下
- 専門医取得後の勤務先・キャリアの戦略的選び方
- 結論:専門医資格は「キャリアの自由度を高める投資」
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本記事では専門医資格の取得がキャリア、収入、そして多様な働き方(アルバイト、スポット勤務を含む)にどのような影響を与えるのかを解説します。長い医師人生を見据えた本業でのキャリア思考の重要性やワークライフバランスの確保など、皆さんのライフプランに合わせた最適なキャリア選択の参考にしてください。
2002年慶應義塾大学医学部卒業。内科専門医・指導医、小児科専門医・指導医として、両分野での豊富な臨床経験を持つ。小児感染症専門医、ICD(インフェクションコントロールドクター)、プライマリケア学会認定医、認知症専門医など多数の資格を保有。2020年より高座渋谷つばさクリニック院長として、0歳から100歳まで4世代を診療するプライマリケア医療を実践。医師のキャリア形成と働き方改革について、実践的な視点からアドバイスを提供している。
専門医資格取得の現状とキャリアにおける役割
専門医資格は、特定の診療領域において日本専門医機構および学術集会が定める研修プログラムを修了し、所定の試験を合格判定により得られる(合格率80%程度)資格です。これは、該当する診療科の医師としての知識と技術、十分な経験を有することを客観的に示すものです。
私自身、小児科から研修を開始して内科と小児科の両方の専門医を取得しましたが、この経験からいえるのは、多くの医療機関、特に大学病院や急性期病院などの基幹病院では、採用や昇進の要件として専門医資格が重視されるということです。私も医師7年目で小児科専門医を取得した翌月から、基幹病院の医長に昇任しました。これは、専門医資格が患者家族や他の医療スタッフからの信頼を高める「プロフェッショナルの証」として機能するためです。
新専門医制度のポイント
新専門医制度では、各診療科について研修期間・習得すべき経験や手技が明確に定められており、若手医師のキャリアパスが標準化された側面があります。しかし、これは同時に多様な働き方を選択する際の制約にもなり得ます。新専門医制度においては専門医資格までの3~5年まで、研修開始時に原則として研修先医療機関を決定する必要があるからです。
給与への反映と経済的コスト
専門医資格を保有することが基本給に大きく反映されるケースは実際のところ多くありません。給与は勤務先の規定や役職、経験年数、勤務形態、地域などによって大きく変わります。ただし、近年は専門医資格に応じた段階的評価や年俸制を導入する病院も増加しています。
一方で、専門医の取得と維持には以下の経済的・時間的コストがかかります
- 専門医試験受験料、更新料、学会参加費、旅費などの費用
- 学会参加や単位取得、論文作成のための時間的負担
この「資格取得・維持コスト」と「資格による収入増」を慎重に比較検討する必要があります。専門医取得の過程で得られる体系的な知識と経験とスキル、そして人脈は長い医師人生における貴重な財産となったことは事実です。
専門医を取得するメリットとデメリット
専門医の取得はキャリアの選択肢の拡大や交渉力の向上といったメリットがあるものの、時間的・経済的コストや研修の負担といったデメリットもあります。専門医となるには診療科によって異なりますが4年の年月が必要となります。
メリット:キャリアの選択肢拡大と交渉力向上
専門医資格を取得する最大のメリットは、キャリアの選択肢が圧倒的に広がる点にあります。
①専門医研修での学びによるスキルと経験値の獲得
研修プログラムを通じて、体系的な知識と実践的なスキルを習得できます。指導医からの直接指導により、単独では得られない貴重な経験を積むことができます。私自身も大学病院と地域の基幹病院のローテーションでは、近年重視される患者への病状の説明の方法とコミュニケーションを学びました。また、月5回の日当直とオンコール勤務の際に多数経験した急変時の対応は、その後の診療において役に立つことも多く、医師人生の糧となりました。
②大規模病院・急性期病院への就職
採用において優遇され、特に専門性を求められる部署への配属が有利になります。反対に専門医資格がなければ「医長」以上のポジションへの就任はかなり厳しいといえるでしょう。
③医局での昇進・指導的地位
大学や基幹病院などで指導的な立場を目指す場合、専門医資格は必須要件となります。
④高単価なスポット・アルバイト
専門性を要する特定の処置や専門外来のスポット案件に応募が可能となります。また水面下の案件からスカウトされて、給与時給が高くなる傾向があります。私の経験では、専門医資格があることで、時給単価が2000~3000円ほど優遇されたこともあります。また時給25000円を超える案件(小児循環器対応、医療的ケアの対応)の採用も多い傾向です。
⑤開業時の信頼性と優位性
クリニック開業を検討する場合、専門医資格は患者や地域住民に対して大きな信頼感を与えます。特に競合が多い地域では、専門医資格の有無が患者の受診動機に直結することも少なくありません。開業時の金融機関からの融資審査においても、専門医資格は医師としての専門性と信頼性の証明として、ポジティブに評価される傾向が近年ではあります。開業医の場合でも患者と家族が院長の経歴や専門医資格を調べ、「この先生なら任せられる」という判断をすれば、受診患者の増加につながります。結果としてはクリニック経営改善には良い影響が出ることも多いです。
このように専門医の資格を持つことで、転職時や非常勤勤務交渉、案件応募時には有利になりやすく、自身の希望する働き方(例:当直免除、時短勤務など)を実現しやすくなります。
デメリット:時間的・経済的コストと研修の負担
専門医取得のデメリットは、主に研修期間中の負担と、資格維持にかかるコストです。
①研修期間中の労働環境
働き方改革の適用下でも、研修プログラムによっては異動が多く、長時間勤務やオンコール対応を求められる場合があります。自分のケースでも専門医資格を取得するまでは、年末年始やゴールデンウィークも半分程度は患者診療や日当直業務がありました。夜間のオンコール対応もあるため、勤務先から30分以内で到着できるようにと転居もしました。
②維持コストの発生
専門医資格の更には5年に1回必要となります。毎年の学会所属費用、時間(学会参加、単位取得、症例作成)が必要となります。
③キャリアの標準化
研修プログラムに沿ったキャリアとなるため、早期の方向転換(例:産業医、起業、開業など)を望む場合は回り道になる可能性があります。
専門医を取得しない選択肢と現実
専門医資格がなくても、医師として働くこと自体に支障はありません。特に以下の分野では資格の有無により不利にならない傾向があり、知識のアップデートやコミュニケーション能力がより求められます。
| 専門医資格の有無で不利になりにくい領域 | 具体例 |
| ジェネラリストとしての地域医療 | 僻地・離島医療や、内科・外科などの広範な診療を担う中小病院、クリニック |
| 専門医制度外の分野 | 健診専門クリニック、予防医学、産業医、医療コンサルタント、美容医療などの自由診療 |
| 研究・行政分野 | 医学研究、医系技官、公衆衛生など |
専門医を取得しない場合、研修期間を短縮し、早期に高収入なアルバイトや自由診療に従事することも選択肢の一つです。資格維持の負担がない分、その時間と費用を、MBA取得や語学学習などの他のスキルアップや医療以外に副業などに充てることができます。
ただし、長期的なキャリア形成の観点からは、若手時代に専門医資格を通じて体系的に学ぶことが、その後の医師人生における土台となることも考慮すべきでしょう。
専門医資格がないことで、以下のようなデメリットが生じる可能性もあります。
転職・就職の選択肢の制限
大規模病院や高度な専門性を求める職場への就職は難しくなります。また、面談時でキャリアについての質問では好印象を与えず採用確率が低下することがあります。
治療・処方制限
一部の専門性の高い治療や処方薬剤について、資格がないことで制限を受ける場合があります。例えば、肥満症治療薬や片頭痛予防薬の処方調剤です。
アルバイトの単価低下
専門性を活かした高単価の案件には応募できず、健診や一般当直などの汎用性の高い案件が中心となります。
専門医取得後の勤務先・キャリアの戦略的選び方
専門医を取得した後、または取得を断念した後の勤務先の選び方は、ご自身の「キャリアゴール」と「働き方への価値観」に基づき、戦略的に行うべきです。
さらなる専門性追求・キャリアアップを考える場合には、大学病院、大規模な急性期病院が推奨されます。こちらの選択肢では、複数のサブスペシャリティ専門医取得が可能となります。
ワークライフバランスを重視する場合には、病床がないクリニックや療養型病院・中小規模の病院勤務が推奨されます。
これらの医療現場では当直やオンコール負担が軽減される場合や、当直勤務の負担(来院患者数や重症度)が比較的低い場合があります。また、有給休暇や長期休暇を取得しやすい環境が整っていることも多い傾向です。研修により取得された専門医資格を活かして、ワークライフバランスやオン・オフのメリハリがつきやすい環境といえます。
このほか、高収入を目指す場合には専門医資格とは別となりますが、美容医療などの自由診療クリニックが推奨されます。これらの案件は都心部に多く収益性も保険診療と比べて比較的良好でありますが、高いコミュニケーション能力が保険診療の業務と比べて求められます。
働き方改革により、常勤先での労働時間に上限が設けられたことで、多くの医師が転職時に「外勤(アルバイト)の可否と制限」を重視するようになりました。これは、常勤先での収入が頭打ちになる可能性を考慮し、効率よくアルバイトで収入を補填する戦略が重要になったためです。専門医資格は、
このアルバイト戦略において大きな武器となります。資格があることで、より高単価で効率的なスポット・定期非常勤の案件を選べるようになり、限られた時間の中で最大の収入を得ることが可能になります。
結論:専門医資格は「キャリアの自由度を高める投資」
専門医資格は、単なる証明ではなく、医師としてのキャリアの自由度を高めるための「戦略的投資」です。専門医資格を取得することは、王道かつ堅実なキャリアを歩むための土台となり、特に大規模病院や専門性の高い分野での活躍を可能にします。さらに、専門医資格は高単価なアルバイトの選択肢を増やし、限られた労働時間内で効率的な収入を得るための強力なツールとなり得ます。
私自身の経験からも、内科・小児科両方の専門医資格を取得したこと、またキャリアの途中で研究実績を積んだことにより幅広い患者層への対応が可能となり、現在のプライマリケア医療を実践する上で大きな強みとなっています。同時にアルバイトや執筆、講演・テレビ出演や書籍出版、商品出版などの様々な副業案件の依頼があり、これまでのキャリアで得たスキルが役に立っています。
医師としてのキャリアは40年以上にわたる長い道のりです。
目先の収入だけでなく、本業における専門性の構築、継続的な学び、そして社会からの信頼といった要素を総合的に考慮してください。ご自身のライフプランや価値観に基づき、専門医取得にかかる時間と費用、そしてその後のリターンを冷静に見極めることが最適なキャリア選択につながります。
初期研修の間に、様々な医師の働き方を知り、長期的な視点で目標を明確にしておきましょう。
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