労働政策研究・研修機構の調べによると、大学病院で働く医師の平均年収は約739.5万円です。ほかの勤務医と比較して、大学病院の医師の年収はもっとも低い水準にあります。この記事では、官公庁の統計をもとに大学病院で働く医師の給与水準を比較していきます。
大学病院の医師の年収は、ほかの勤務医と比べてどのくらいの水準にあるのでしょうか。勤務先の経営形態別に医師の平均年収をみると、もっとも給与水準が低いのが大学病院で働く医師です。文部科学省が2020年に行った調査では、合計29の大学病院において、診療行為を行っている医師804名に給与を支給していなかった事実も判明しています。(※)
大学病院で働く医師の平均年収はなぜ低いのでしょうか。この記事では、大学病院の医師の平均年収や、大学病院で働く医師が高収入を目指す方法をわかりやすく解説します。
※出典:文部科学省.「大学病院で診療に従事する教員等以外の医師・歯科医師に対する処遇に関する調査結果」. https://www.mext.go.jp/content/20200207-mxt_igaku-100014212-1.pdf
大学病院の医師の年収は高いといえるのでしょうか。労働政策研究・研修機構が2012年に公表した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」をみると、大学病院で働く医師の給与水準はもっとも低いことがわかります。(※)ここでは「勤務医の就労実態と意識に関する調査」や厚生労働省の賃金センサスをもとにして、大学病院で働く医師の給与水準を比較していきます。
※出典:労働政策研究・研修機構.「勤務医の就労実態と意識に関する調査」.https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf
まずは医師全体の平均年収をみてみましょう。厚生労働省が公開した令和3年賃金構造基本統計調査(賃金センサス)によると、医師全体の平均年収は約1,378.2万円です。(※)また、医師の平均年収を男女別にみると、以下の表のとおりです。なお、平均年収の値は平均月収に12を乗算し、年間賞与の金額を加算して求めています。
平均年齢 | 平均勤続年数l | 所定内実労働時間数 | 超過実労働時間数 | 平均月収(きまって支給する現金給与額) | 年間賞与その他特別給与額 | 平均年収 | |
男 | 46.8歳 | 8.0年 | 164時間 | 16時間 | 111万8,100円 | 128万2,200円 | 1,469万9,400円 |
女 | 39.9歳 | 6.4年 | 161時間 | 13時間 | 81万600円 | 80万9,900円 | 1,053万7,100円 |
男女計 | 45.3歳 | 7.7年 | 163時間 | 15時間 | 105万400円 | 117万8,100円 | 1,378万2,900円 |
※出典:厚生労働省.「賃金構造基本統計調査」.https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
医師全体の平均年収と比較して、大学病院で働く医師の給与水準は高いといえるのでしょうか。以下の表は、労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を参考に、医師の平均年収を勤務先の経営形態別にまとめたものです。(※)
経営形態 | 300万円未満 | 300~500万円未満 | 500~700万円未満 | 700~1,000万円未満 | 1,000~1,500万円未満 | 1,500~2,000万円未満 | 2,000万円以上 | 平均年収 |
国立 | 6.4% | 14.2% | 15.7% | 22.8% | 27.4% | 11.9% | 1.5% | 882万4,000円 |
公立 | 1.2% | 2.5% | 4.1% | 9.7% | 37.9% | 36.5% | 8.1% | 1,347万1,000円 |
公的 | 1.3% | 2.0% | 3.9% | 9.5% | 38.7% | 33.8% | 10.8% | 1,353万4,000円 |
社会保険関係団体 | 0.0% | 2.4% | 6.1% | 13.4% | 43.9% | 26.8% | 7.3% | 1,280万7,000円 |
医療法人 | 2.0% | 1.9% | 3.4% | 10.1% | 29.4% | 36.5% | 16.6% | 1,443万8,000円 |
個人 | 3.6% | 1.8% | 0.0% | 10.9% | 34.5% | 32.7% | 16.4% | 1,414万円 |
学校法人 | 4.8% | 15.2% | 20.8% | 36.4% | 21.2% | 1.7% | 0.0% | 739万5,000円 |
その他の法人 | 0.8% | 2.4% | 3.3% | 9.8% | 31.7% | 39.0% | 13.0% | 1,406万4,000円 |
大学病院で働く医師の平均年収は約739.5万円で、医師全体の平均年収を大きく下回っています。また、年収が1,000万円以上の医師の割合ももっとも少なく、約22.9%にとどまります。(※)
以下の表は、経営形態別に医師の平均年収をランキング化したものです。
ランキング | 経営形態 | 平均年収 |
1位 | 医療法人 | 1,443万8,000円 |
2位 | 個人 | 1,414万円 |
3位 | その他の法人 | 1,406万4,000円 |
4位 | 公的 | 1,353万4,000円 |
5位 | 公立 | 1,347万1,000円 |
6位 | 社会保険関係団体 | 1,280万7,000円 |
7位 | 国立 | 882万4,000円 |
8位 | 学校法人 | 739万5,000円 |
平均年収がもっとも高いのは医療法人で働く医師です。医療法人の医師の平均年収は約1,443.8万円で、大学病院の医師の平均年収を約561.4万円も上回っています。医療法人に次いで、個人病院(約1,414万円)、その他医療法人(約1,406.4万円)、公的医療機関(約1,353.4万円)、公立病院(約1,347.1万円)、国立病院(約882.4万円)、大学病院(約739.5万円)の順に平均年収が高くなっています。このように統計をみると、大学病院で働く医師の給与はもっとも低い水準にあることがわかるでしょう。
※出典:労働政策研究・研修機構.「勤務医の就労実態と意識に関する調査」.https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf
ただし、大学病院で働いていても年収が上がるケースもあります。教授や准教授、講師などの役職がついた場合です。医師の平均年収を役職別にみると、以下の表のとおりです。(※)
役職 | 300万円未満 | 300~500万円未満 | 500~700万円未満 | 700~1,000万円未満 | 1,000~1,500万円未満 | 1,500~2,000万円未満 | 2,000万円以上 | 平均年収 |
医員以下 | 6.0% | 12.7% | 11.7% | 19.3% | 33.6% | 13.5% | 3.3% | 963万5,000円 |
助教 | 2.8% | 16.1% | 32.2% | 40.6% | 7.2% | 1.1% | 0.0% | 664万2,000円 |
医長、講師、医局長、部長、科長、副部長、教授、准教授 | 1.3% | 1.1% | 3.2% | 11.2% | 37.0% | 36.5% | 9.7% | 1,369万1,000円 |
院長、副理事長、副院長、副施設長 | 1.1% | 0.4% | 0.0% | 1.1% | 13.9% | 47.4% | 36.1% | 1,820万7,000円 |
大学病院の医局では、院長、副院長、教授、准教授、講師の順に序列が高くなります。研修医や医員、助教(助手)から昇格することで、大学病院でも年収がアップするでしょう。例えば助教の平均年収(約664.2万円)と教授・准教授の平均年収(約1,369.1万円)には、約704.9万円もの差があります。
※出典:労働政策研究・研修機構.「勤務医の就労実態と意識に関する調査」.https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf
そもそも、なぜ大学病院で働く医師の平均年収が低いのでしょうか。ほかの勤務医よりも給与水準が低い理由は3つあります。
大学病院は市中病院と違い、営利目的の医療機関ではありません。そのため人件費の予算が少なく、ほかの勤務医よりも給与水準が低い傾向があります。年功序列の風潮が強く残っている大学病院も多く、中堅医師の給与が上がりにくい賃金構造になっているのも特徴です。また、大学病院は勤務する医師の母数が多いため、1人あたりの給与額が低くなっています。
大学病院で働く医師が年収アップを目指すには、どのような手段を講じればよいのでしょうか。大学病院の医師が高収入を目指す方法は4つあります。
後期研修医以降の医師は、ほかの医療機関への異動や、異なる診療科目への転科も可能です。将来のキャリアプランを想定し、自分に合った働き方を選びましょう。
年収アップを狙う場合は、平均年収が高い診療科目への転科を検討しましょう。以下の表は、診療科目別の医師の平均年収をランキング化したものです。(※)
ランキング | 診療科目 | 平均年収 |
1位 | 脳神経外科 | 1,480万3,000円 |
2位 | 産科・婦人科 | 1,466万3,000円 |
3位 | 外科 | 1,374万2,000円 |
4位 | 麻酔科 | 1,335万2,000円 |
5位 | 整形外科 | 1,289万9,000円 |
6位 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267万2,000円 |
7位 | 内科 | 124万7,400円 |
8位 | 精神科 | 1,230万2,000円 |
9位 | 小児科 | 1,220万5,000円 |
10位 | 救急科 | 1,215万3,000円 |
11位 | その他 | 1,171万5,000円 |
12位 | 放射線科 | 1,103万3,000円 |
13位 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078万7,000円 |
もっとも平均年収が高いのは脳神経外科の医師です。脳神経外科の医師の平均年収は約1,480.3万円で、全体の平均年収を大きく上回っています。脳神経外科に次いで、産科・婦人科、外科、麻酔科、整形外科、呼吸器科・消化器科・循環器科、内科、小児科、救急科の順に平均年収が高くなります。
※出典:労働政策研究・研修機構.「勤務医の就労実態と意識に関する調査」.https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf
地方は医師の絶対数が少ないため、医師の平均年収が高い傾向があります。年収アップを狙う場合は、過疎地域への異動を目指すのも選択肢のひとつです。以下の表は、政令指定都市・東京23区で働く医師の平均年収と、過疎地域で働く医師の平均年収を比較したものです。(※)
勤務場所 | 300万円未満 | 300~500万円未満 | 500~700万円未満 | 700~1,000万円未満 | 1,000~1,500万円未満 | 1,500~2,000万円未満 | 2,000万円以上 | 平均年収 |
政令指定都市・東京23区 | 3.8% | 6.8% | 10.1% | 18.0% | 31.1% | 23.8% | 6.3% | 1,137万3,000円 |
過疎地域 | 1.9% | 2.8% | 5.6% | 10.6% | 25.9% | 35.2% | 18.1% | 1,428万2,000円 |
政令指定都市・東京23区で働く医師の平均年収は約1,137.3万円、過疎地域で働く医師の平均年収は約1,428.2万円となっています。平均年収だけをみれば、過疎地域で働くほうが約290.9万円も多く給与を得られます。地域医療に貢献したい人は、過疎地域への異動を検討しましょう。
※出典:労働政策研究・研修機構.「勤務医の就労実態と意識に関する調査」.https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf
非常勤やスポットアルバイトとして働いている場合は、常勤医師への転職を目指すことで年収アップにつながります。以下の表は、医師の平均年収を勤務形態別にまとめたものです。(※)
勤務形態 | 300万円未満 | 300~500万円未満 | 500~700万円未満 | 700~1,000万円未満 | 1,000~1,500万円未満 | 1,500~2,000万円未満 | 2,000万円以上 | 平均年収 |
常勤 | 1.1% | 3.3% | 6.1% | 14.5% | 33.4% | 30.9% | 10.7% | 1,309万8,000円 |
非常勤 | 22.8% | 29.2% | 19.3% | 10.5% | 10.5% | 7.0% | 0.6% | 594万7,000円 |
アルバイト | 35.0% | 35.0% | 15.0% | 5.0% | 10.0% | 0.0% | 0.0% | 410万8,000円 |
常勤医師の平均年収は約1,309.8万円で、非常勤医師やスポットアルバイトで働く医師よりも高くなっています。一方、拘束時間の短さや業務負担の軽さなど、非常勤医師やスポットアルバイトにしかないメリットもあります。平均年収だけで勤務形態を決めるのではなく、自分らしい働き方を選ぶことも大切です。
※出典:労働政策研究・研修機構.「勤務医の就労実態と意識に関する調査」.https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf
異動や転科を目指すのではなく、同じ病院で継続的に働くことも大切です。とくに大学病院は年功序列の風潮が強いため、勤続年数がある程度長い場合は、転職しないほうが年収アップにつながるケースもあります。以下の表は、医師の平均年収を勤続年数別にまとめたものです。(※)
主たる勤務先の勤務年数 | 300万円未満 | 300~500万円未満 | 500~700万円未満 | 700~1,000万円未満 | 1,000~1,500万円未満 | 1,500~2,000万円未満 | 2,000万円以上 | 平均年収 |
3年未満 | 3.0% | 8.2% | 10.0% | 16.1% | 35.8% | 21.5% | 5.5% | 1,123万9,000円 |
3年以上5年未満 | 3.3% | 4.9% | 7.5% | 13.6% | 35.0% | 26.8% | 8.9% | 1,233万6,000円 |
5年以上10年未満 | 2.6% | 5.2% | 6.9% | 14.0% | 30.5% | 30.1% | 10.6% | 1,259万8,000円 |
10年以上15年未満 | 1.8% | 2.3% | 3.3% | 14.9% | 28.3% | 34.1% | 15.4% | 1,397万2,000円 |
15年以上 | 1.9% | 1.1% | 3.4% | 10.1% | 26.0% | 43.2% | 14.3% | 1,462万5,000円 |
勤続年数が3年未満の医師の平均年収が約1,123.9万円にとどまるのに対し、勤続年数が15年以上の医師の平均年収は約1,462.5万円です。職場環境に不満がない場合は、同じ病院でキャリアを継続することで年収アップにつながる場合があります。
この記事では、大学病院で働く医師の平均年収をほかの勤務医と比較しました。年収を上げるためには、転科や異動を視野に入れたり、同じ場所で勤務を続けることでキャリアアップを図ったりといった方法が有効であるといえます。
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