医師は比較的高収入とされていますが、診療科ごとに年収額は異なります。
この記事では救急医の年収について解説します。救急医療の最前線で患者に対応する救急医の平均年収がいくらか確認してみましょう。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が発表した『勤務医の就労実態と意識に関する調査』によれば、救急医の平均年収は1,215.3万円です。年収金額ごとの割合は以下のとおりです。(※)
平均年収 | 300万円未満 | 300~500万円未満 | 500~700万円未満 | 700~1,000万円未満 | 1,000~1,500万円未満 | 1,500~2,000万円未満 | 2,000万円以上 | 500万円未満計 | 1,000万円以上計 |
1,215.3 | 0% | 6.3% | 12.5% | 18.8% | 21.9% | 25% | 15.6% | 6.6%<3strong> | 62.5% |
また半数以上の救急医の年収が1,000万円以上という結果でした。
『勤務医の就労実態と意識に関する調査』では救急医以外にも診療科別の年収を発表しています。診療科別の平均年収と年収金額ごとの割合は次のとおりです。(※)
平均年収(万円) | 300万円未満 | 300~500万円未満 | 500~700万円未満 | 700~1,000万円未満 | 1,000~1,500万円未満 | 1,500~2,000万円未満 | 2,000万円以上 | 500万円未満計 | 1,000万円以上計 | |
内科 | 1,247.4 | 3.5% | 7.1% | 7.4% | 13.5% | 29.2% | 28.4% | 10.9% | 10.6% | 68.5% |
外科 | 1,374.2 | 2.1% | 2.4% | 4.7% | 11.8% | 27.9% | 39.1% | 12.1% | 4.5% | 79.1% |
整形外科 | 1,289.9 | 4.2% | 3.8% | 2.5% | 12.7% | 34.7% | 33.1% | 8.9% | 8% | 76.7% |
脳神経外科 | 1,480.3 | 1% | 3.9% | 2.9% | 10.7% | 21.4% | 40.8% | 19.4% | 4.9% | 81.6% |
小児科 | 1,220.5 | 2.4% | 7.7% | 5.9% | 14.8% | <strong33.1% | 28.4% | 7.7% | 10.1% | 69.2% |
産科・婦人科 | 1,466.3 | 0.8% | 2.3% | 5.4% | 13.8% | 27.7% | 29.2% | 20.8% | 3.1% | 77.7% |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267.2 | 2.6% | 3.3% | 6.6% | 10.9% | 39.8% | 29.6% | 7.2% | 5.9% | 76.6% |
精神科 | 1,230.2 | 1.8% | 4.1% | 7.3% | 18.3% | 33% | 24.8% | 10.6% | 5.9% | 68.4% |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078.7 | 2.6% | 8.3% | 12.5% | 17.3% | 33.2% | 22% | 4.2% | 10.9% | 59.4% |
救急科 | 1,215.3 | 0% | 6.3% | 12.5% | 18.8% | 21.9% | 25% | 15.6% | 6.3% | 62.5% |
麻酔科 | 1,335.2 | 0.8% | 1.6% | 5.5% | 16.4% | 36.7% | 25% | 14.1% | 2.4% | 75.8% |
放射線科 | 1,103.3 | 5.3% | 6.3% | 11.6% | 16.8% | 33.7% | 22.1% | 4.2% | 11.6% | 60% |
その他 | 1,171.5 | 1% | 3.9% | 8.7% | 17.5% | 36.9% | 29.1% | 2.9% | 4.9% | 68.9% |
全体 | 1,267.7 | 2.2% | 4.7% | 7.2% | 14.9% | 31.5% | 29.0% | 10.7% | 6.9% | 71.1% |
平均年収でみると、次の診療科目は年収が高い傾向があります。
これらの科目と比較すると、救急医の年収は低い状況にあります。また診療科目全体の平均である1,267.7万円と比較しても救急医の年収は若干低くなっています。
救急医の業務内容は主に次が挙げられます。
いずれも第一線で患者に対応する役目を担っています。
救急医は救急車やドクターヘリ、ドクターカーに搭乗して患者が病院に到着する前に救命処置を施します。病院のように設備が整っていない状況で、患者の状態を予測して処置しなければならないため、救急医としてのスキルが求められます。
救急医はER型救急医療として、救急搬送されてくる患者の初期対応を担います。病院前医療は現場に直接向かって対応するのに対して、ER型救急医療は病院内で治療するのが一般的です。ER型救急医療では、患者が重症であるか緊急性が高いかを迅速に判断して処置を施し、その後専門の診療科への引き継ぎも行います。
救命救急では脳卒中や急性心筋梗塞といった緊急性の高い患者への処置を行います。中でも急性中毒や重度の熱傷、外傷などは、高度救命救急センターで受け入れます。これらの症状は治療のタイミングがその後を左右するため、救急医として迅速かつ適切な対応が求められます。
救急医は災害医療にも携わることがあります。災害医療は自然災害や事故などが発生した際に実施される医療です。災害医療では病院前医療と同様に、限られた設備で医療にあたらなければなりません。
救急医の業務は病院前医療や救命救急をはじめとして、迅速かつ的確な判断が求められるものばかりです。また救急の患者に対応するためには、さまざまな科目の知識も必要です。そのため、日々の業務に加えて日頃から自己研鑽が欠かせません。
このように常に前線で処置にあたる救急医は、年収についてどのように感じているのでしょうか。
『勤務医の就労実態と意識に関する調査』では診療科目別に年収についての満足度を調査していて、救急医は次のような回答結果でした。(※)
診療科目 | 満足している | まあ満足 | どちらともいえない | 少し不満 | 不満 |
救急科 | 2.8% | 33.3% | 8.3% | 36.1% | 19.4% |
診療科全体 | 7.8% | 32.5% | 21.9% | 21.5% | 16.2% |
自身の年収について「満足している」「まあ満足」していると回答した割合は合計で36.1%なのに対して、「少し不満」「不満」と回答した割合は合計55.5%と約半数以上です。診療科目全体の平均では、「満足している」「まあ満足している」が40.3%、「少し不満」「不満」と回答している割合が37.7%なのを踏まえると、救急医は他の診療科の平均に比べて収入に満足していない人の割合が多いとわかります。
救急医は迅速かつ的確な判断に加えさまざまな科目の知識が求められます。しかし、業務内容のハードさに対して年収が見合っていないと不満を感じている可能性があるでしょう。それ以外にも労働時間の長さも年収への不満につながっている可能性があります。
『勤務医の就労実態と意識に関する調査』によると、診療科ごとの1週間の労働時間は次のとおりです。(※)
診療科 | 20時間未満 | 20~40時間未満 | 40~50時間未満 | 50~60時間未満 | 60~70時間未満 | 70~80時間未満 | 80時間以上 | 60時間以上計 | 平均時間(時間) |
救急科 | 5.6% | 8.3% | 25% | 19.4% | 16.7% | 13.9% | 11.1% | 41.7% | 54 |
脳神経外科 | 4.9% | 6.6% | 24.6% | 23.8% | 21.3% | 10.7% | 8.2% | 40.2% | 53.3 |
外科 | 10.5% | 2.8% | 19.5% | 24.1% | 22.3% | 11.3% | 9.5% | 43.1% | 52.5 |
小児科 | 5.4% | 10.2% | 15.6% | 29.3% | 24.9% | 8.3% | 6.3% | 39.5% | 52 |
産科・婦人科 | 11% | 5.5% | 27.6% | 22.1% | 17.9% | 7.6% | 8.3% | 33.8% | 49.4 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 11.3% | 7% | 20.8% | 27.2% | 16.7% | 8.9% | 8.1% | 33.7% | 49.4 |
整形外科 | 12.6% | 9.8% | 25.6% | 23.2% | 17.5% | 7% | 4.2% | 28.8% | 46.8 |
麻酔科 | 8.5% | 13.1% | 32.7% | 23.5% | 15% | 2.6% | 4.6% | 22.2% | 45.8 |
内科 | 15% | 13.7% | 28.4% | 21.3% | 12.5% | 5.2% | 3.9% | 21.6% | 43.4 |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 13.8% | 9.5% | 32.1% | 24.1% | 12.1% | 4.6% | 3.8% | 20.5% | 44.3 |
その他 | 9.7% | 7.3% | 35.5% | 28.2% | 11.3% | 5.6% | 2.4% | 19.4% | 46 |
その他 | 16.9% | 25.8% | 29.2% | 15.8% | 9.2% | 1.9% | 1.2% | 12.3% | 38.4 |
放射線科 | 7.9% | 7% | 37.7% | 29.8% | 10.5% | 4.4% | 2.6% | 17.5% | 46.1 |
計 | 12% | 10.5% | 26.6% | 23.5% | 15.5% | 6.6% | 5.3% | 27.7% | 46.6 |
救急医の1週間の平均労働時間は54時間で、約2.5人に1人が週に60時間以上勤務していることがわかります。54時間という救急医の平均労働時間は他の診療科よりも長く、全診療科の週あたりの労働時間は46.6時間ですので、救急医よりも約8時間も短いことがわかります。先述のように、救急医の年収は全診療科の平均年収とほぼ同額なことを踏まえると、労働時間と給与のバランスに不満を感じている人もいるかもしれません。
医師の年収は科目以外に年齢によっても違いがあります。厚生労働省『令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計』によれば、救急医の平均年齢は41.8歳となっています。救急医の平均年齢は、臨床研修医(平均年齢27.8歳)を除くと、最も若い結果です。(※)
では、40代の医師の平均年収はどれくらいなのでしょうか。『勤務医の就労実態と意識に関する調査』によれば、40代の医師の平均年収と年収の分布は以下のとおりです。(※)
平均年収(万円) | 300万円未満 | 300~500万円未満 | 500~700万円未満 | 700~1,000万円未満 | 1,000~1,500万円未満 | 1,500~2,000万円未満 | 2,000万円以上 |
1,326.6 | 1.8% | 2.0% | 5.0% | 13.4% | 34.0% | 33.3% | 10.4% |
40代の医師の平均年収は1,326.6万円で、救急医の平均年収である1,215.3万円よりも100万円以上も高い結果となっています。また、救急医の年収分布は1,000万円以上が62.5%だったのに対して、40代の医師では1,000万円以上の年収分布は77.7%と15%も高い結果でした。
救急医の平均年齢は41.8歳なのに対して、厚生労働省『令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計』によれば、診療科全体の平均年齢は50.1歳となり、救急医よりも約9歳も年齢が高くなっています。(※)
では、救急医はどのようなキャリア形成を検討している傾向があるのでしょうか。『勤務医の就労実態と意識に関する調査』では救急医が希望する将来の働き方についても調査しています。その結果は次のとおりです。(※)
今の職場の同じ診療科で働きたい(%) | 別の病院の同じ診療科で働きたい(%) | 同じ病院の別の診療科で働きたい(%) | 別の病院の別の診療科で働きたい(%) | 開業したい(%) | 医師として非常勤として勤務したい(%) | 診療を辞めたい(%) | その他(%) | 診療科変更希望(%) |
36.1 | 41.7% | 0.0% | 5.6% | 2.8% | 5.6% | 5.6% | 2.8% | 5.6% |
他の診療科の結果と比較すると、診療科の変更を希望する医師が多い傾向があるといえます。
今の職場の同じ診療科で働きたい(%) | 別の病院の同じ診療科で働きたい(%) | 同じ病院の別の診療科で働きたい(%) | 別の病院の別の診療科で働きたい(%) | 開業したい(%) | 医師として非常勤として勤務したい(%) | 診療を辞めたい(%) | その他(%) | 診療科変更希望(%) | |
内科 | 48.2% | 25.7% | 0.6% | 2.2% | 6.9% | 8.9% | 3.9% | 3.6% | 2.8% |
外科 | 58% | 23.8% | 0.5% | 4.8% | 5.3% | 5% | 2% | 0.8% | 5.3% |
整形外科 | 53.1% | 25.5% | 1% | 0% | 9.1% | 7% | 2.1% | 2.1% | 1% |
脳神経外科 | 51.2% | 27.6% | 1.6% | 2.4% | 5.7% | 3.3% | 4.9% | 3.3% | 4% |
小児科 | 45.4% | 24.4% | 0% | 1.5% | 9.8% | 9.3% | 4.9% | 4.9% | 1.5% |
産科・婦人科 | 51.7% | 26.5% | 0.7% | 0% | 4.1% | 10.2% | 3.4% | 3.4% | 0.7% |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 41.6% | 32.4% | 0.8% | 1.9% | 9.1% | 5.1% | 4.8% | 4.3% | 2.7% |
精神科 | 50.4% | 26.5% | 0% | 0% | 12.3% | 6.5% | 3.8% | 0.4% | 0% |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 43.7% | 22.3% | 0.3% | 0.3% | 20.2% | 10% | 2% | 1.3% | 0.6% |
麻酔科 | 49% | 23.5% | 0.7% | 3.3% | 6.5% | 9.2% | 4.6% | 3.3% | 4% |
放射線科 | 53.5% | 33.3% | 0% | 0% | 0.9% | 10.5% | 0% | 1.8% | 0% |
その他 | 41.1% | 28.2% | 0.8% | 4% | 9.7% | 10.5% | 3.2% | 2.4% | 4.8% |
平均 | 48.9% | 26.6% | 0.6% | 1.7% | 8.3% | 8.0% | 3.3% | 2.6% | 2.3% |
救急医で年収や働き方について不満がある方は、診療科の転科も含めて転職やアルバイトを通じて今後のキャリア形成を検討していくのも一つの手段といえます。
救急医の平均年収は1,215.3万円で他の診療科と比較すると低い傾向があります。その一方で平均労働時間は長いため、収入を上げたい、働き方を見直したいと考えている方もいるかもしれません。救急医から転職する際には、転職先の病院や転科先の年収などさまざまな情報を収集しておきましょう。
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