地方での医師不足や地域間での医師偏在は深刻となっており、解決すべき急務の課題となっています。
平成30年には『医療法及び医師法の一部を改正する法律』として医療法の一部が改正され、都道府県の医療計画における医師の確保に関する事項の策定、臨床研修病院の指定権限及び研修医定員の決定権限が都道府県の移譲されました。
そのため近年では医師確保に向けて自治体ごとに様々な医師支援制度が設立され、「地方勤務は医師一人への負担が大きい」「大都市と比較すると給与水準が低い」という従来の負担の大きい働き方から待遇が改善されてきています。
豊かな子育て環境を求めてUIターンで地方移住を検討する医師も増えてきています。
医師不足の地域では研修医や若手医師も多くないため経験を積める機会が多くあること、また医師確保のため都心よりも給与水準が高く設定されている場合もあり、高給与が期待できることも地方勤務の魅力だと言えるでしょう。
いざ地方勤務を検討し始めた際に、最初に不安に思うのが金銭面ではないでしょうか。引っ越し費用や住居費用など金銭的な不安で移住に踏み切れないという方もいらっしゃると思います。また地方移住するにあたって研鑽の機会の減少によるスキル低下の懸念を抱かれている方も多いと思います。
そこで今回は地方移住や就業(復職)を希望する医師への支援制度の一部をご紹介します。
国内外の研修学会への参加のための往復旅費、宿泊費、研修費等の費用を支給する支援制度です。一般参加者として参加する場合、発表者として参加する場合など支援条件は様々ですが、自治体だけではなく、法人・医療機関単位でもこのような支援制度を設けているところもあります。
地方で働くとジェネラリストを求められ、専門性を磨けなくなると思いがちですが、専門を活かしながらスキルアップができる支援も整備されています。
海外留学の準備費用としては平均300万円前後、留学先の国によって異なりますが、毎月の生活費としては15万円前後が必要と言われています。
帰国後は「一定期間決まった医療機関で勤務をすること」などが支援条件となっている場合が多いですが、留学支援制度を利用することで生活費や帰国後の就労先の心配もなく、安心して研究に打ち込むことができます。
また海外留学だけではなく、国内の提携病院への留学制度を設けている医療機関も増えてきています。
県外から移住し、県内の医療機関に勤務する場合に研究資金を貸与する支援制度です。専門科や勤続年数によって、貸与金額が異なりますが、多くの自治体で取り入れています。また条件によっては返還が免除される場合もあります。
どの自治体で優遇されるかご自身の専門科や医師年数で調べてみるのもよいでしょう。
UIターン支援の一環として、県外から県内での勤務を検討している医師に対して病院等の見学を行う際にかかる旅費や宿泊費を補助する支援制度です。都道府県単位で助成金制度を設けている場合が多く、自治体によっては1回だけではなく複数回利用が可能な場合もあります。
金銭的な支援だけではなく、相談窓口の開設や院内保育の設置、当直の免除、復職研修など働きやすい職場環境への整備のための支援を行っています。
近年女性医師は増加していますが、医師として就業している率は医学部卒業後は減少傾向にあります。離職の理由としては主に「出産」「子育て」が多く、子育てをしながらでも復職できる支援が必要となっています。
女性医師の再就業、復帰支援については都道府県単位、医療機関単位で支援を行っている場合が多いです。
以上、医師向け地方自治体支援制度をご紹介いたしました。