女性医師の就業率をみると、出産や子育てを期に退職するケースが多く見られます。理由としては、仕事と子育ての両立が難しいことが考えられます。しかし、働き方や環境を見直せば、働きながら子育てをすることも可能です。本記事では、女性医師が子育てと仕事を両立するためのポイントや使える制度を解説します。
女性医師の数は年々増加傾向にあり、厚生労働省による2020年のデータでは女性医師は全体の22.8%ほどにのぼります。この傾向は若年層の女性医師ほど顕著で、年齢が低くなるほど女性の占める割合は増加。医療施設に従事する医師数のうち、29歳以下の男女の構成割合の実に36.3%が女性であることが、該当の厚生労働省のデータから読み取れます。(※1)
しかし、一方で女性医師の就業率は35歳にかけて76%ほどまで落ち込みます。男性医師は55歳くらいまでは90%ほどの就業率を維持しているため、女性医師にのみ見られる変化です。(※2)
こうした就業率の低下は、出産と子育てが背景にあるでしょう。女性医師として働きながら出産や子育てをするのは難しく、家庭を優先する女性医師が20代後半から増えることが、就業率の低下を招いていると考えられます。子育てが落ち着く30代後半から50歳くらいにかけては就業率が上昇しますが、男性医師と同等まで回復することはありません。
こうしたデータから、女性医師が子育てと仕事を両立する難しさが見えてきます。しかし、女性医師として働きながら子育てをする人ももちろんいます。働き方や時間を上手に調節できれば、仕事と家庭の両立が可能です。
どんな職業であっても、子育てと仕事の両立は簡単なことではありません。女性医師にとっても子育てと仕事を両立することは難しく、その理由は医師としての働き方などにあります。原因について詳しくみていきましょう。
医師の仕事は膨大で、診察以外にもさまざまな業務をこなさなくてはいけません。当直やオンコール対応もあるため、時間も不規則です。
さらに医師として活躍するには、常に最新の情報や技術を勉強し続ける必要があります。勉強の時間も含め、医師業にとられる時間は非常に多いです。
そういった中で子育てをしていると、時間も足りず、肉体的な負担も大きいでしょう。自分の時間がほとんどなくなってしまい、ストレスを感じる人も多いかもしれません。
女性医師の配偶者は医師であることが珍しくありません。その場合、夫も多忙で子育ての協力を頼めず、ワンオペ育児になってしまいがちといったケースも少なくないようです。
近年は男性が子育てに参画しやすいような制度が整いつつあり、男性の育休取得率も増えています。しかし、まだまだ「子育ては女性がするもの」という考えは根強く、夫の協力が得られないことも大きなハードルとなっているでしょう。
近隣に両親や親戚がいれば、勤務時間中に子どもを預けることが可能です。しかし、それができず保育所も利用できない場合は、仕事を続けるのが非常に難しくなります。
2022年の時点で85.5%の自治体で待機児童の数はゼロになりました。(※)しかし、自宅や職場の近くに入れる保育所や、信頼できる施設がなければ子どもを預けることはできません。
子どもの預け先が見つからないことも子育てと仕事の両立を困難にしている一因でしょう。
子育てをしながら女性医師として働く場合、今までと同じ働き方ができなくなってしまうことも多くあります。子どものお迎え時間に合わせて退勤しなければならなかったり、当直やオンコールへの対応が難しくなったりなど、特に勤務時間には制限ができます。また、子どもの急病で欠勤や遅刻・早退が発生することもあるでしょう。
育児支援が充実している職場であれば理解を得やすいですが、そうでない場合は肩身が狭くなり、職場に居づらいと感じることもあるかもしれません。
医局に所属する医師には転勤がつきものです。特に子育て世代は、転勤が多くなる傾向にあります。
夫も医師で転勤となった場合、自分の仕事や家庭をどうするか検討しなければなりません。
基本的には転勤の辞令は断れないため、家庭を優先する場合は退職を余儀なくされることもあります。こうした医局特有の問題も子育てと仕事の両立を難しくしています。
女性医師が子育てと仕事を両立することは、決して簡単ではありません。しかし、便利なサービスや制度を利用し、周囲の協力を得て負担を減らすことで両立は可能です。子育てと仕事を両立させるために、抑えておきたいポイントを紹介します。
子育てと仕事の両立で大きなハードルになるのは、やらなければいけないことの多さです。女性医師としての業務に加えて、「家事をこなさなければならない」という表現を回避したいための修正です
この中で、比較的負担を軽くしやすいのは家事です。食器洗い機や乾燥機付き洗濯機、お掃除ロボットなどの家電を利用することで、家事の手間を減らせます。時間の節約にもなるため、便利な家電は積極的に活用するようにしましょう。
また、家事代行サービスの利用もおすすめです。費用はかかりますが、掃除や食事の準備を任せることができ、家事による負担を大幅に減らせます。
子育てをしながら女性医師として働くには、職場の理解が不可欠です。宿直や日直、時間外勤務などの免除が可能かどうか相談してみるのもよいでしょう。
また、オンコールへの対応が難しい点や、突然の欠勤や遅刻・早退が発生する可能性があることを理解してもらうことも大切です。
医師という責任のある立場上、子育てと仕事で優先度を比べることは非常に難しいです。勤務している病院の方針も考えつつ、可能な範囲で理解を求めてみましょう。
子育ては一人でするものではありません。夫はもちろんですが、両親や親戚、友人に頼ることも大切です。
例えば、もし近くに両親や友人が住んでいれば、保育園の送迎や緊急時の一時預かりなど、少しでも協力してもらうことができないか、相談してみましょう。
急に頼むと相手も困惑してしまう可能性があるため、何かあったときに協力をお願いできるかを事前に確認しておくようにしましょう。
育児は女性の仕事という考えが、女性側にも根強くあります。そのため、どうしても「自分がやらなければ」という意識があり、人に頼ることや相談することをためらってしまう方も少なくありません。
しかし、一人で抱え込んでいては自分自身が辛くなってしまうばかりです。少しでも肉体的・精神的な負担を減らせるように、夫と話し合ったり、職場にいる先輩ママドクターに相談してみましょう。悩みを共有するだけでも心が軽くなるかもしれません。
周囲に頼れる人がいない場合は、女性医師支援センターに相談することもできます。
【公益社団法人 日本医師会 女性医師支援センター】
https://www.med.or.jp/joseiishi/
近年は出産や育児に関連する制度やサービスが充実しつつあります。そういった制度を利用することでも、負担を軽減することが可能です。
代表的なものとして、育児休業制度・短時間勤務制度が挙げられます。また、学童や民間のベビーシッターの活用などもおすすめです。
医療機関に託児所があるケースも増えてきています。自治体や民間、そして職場も含めて使える制度を確認しておくことが大切です。
身近な人の協力を得て、さまざまな制度を利用したとしても、仕事と子育てを両立する負担は大きいものです。特に子育てへの理解がない職場の場合は、心身ともに疲弊してしまう恐れもあります。
体調を崩してしまい、ストレスを抱え込んでしまっては、仕事と子育て両方に支障をきたしてしまう可能性もあります。今の職場で理解が得られない場合は、勤務時間の調整がしやすい医療機関や託児所完備など子育て支援が充実している病院などへの転職も考えてみましょう。
また、非常勤の医師として働く道もあります。ご自身のキャリアや仕事と家庭のバランスを考えた上で、働き方を変えることも選択肢のひとつです。
働き方を変えることは、子育てと仕事を両立するために有効な手段です。現在の働き方を続けることに不安を感じている場合は、ぜひ検討してみましょう。働き方の例を紹介します。
医療機関によっては、育児中の医師が正規職員のまま時短勤務ができる制度があります。条件などは医療機関によって異なりますが、例えば週20時間まで勤務時間を短縮したり、宿直・時間外労働・待機勤務が免除されたりといったことが可能になります。
後述する非常勤との大きな違いは、正規職員として病院に在籍できる点です。育児が落ち着いたら、フルタイムの勤務に復帰することを考えている場合におすすめの方法です。
ただし、非常勤よりも勤務時間が長くなるため、その分負担が大きくなる点には注意が必要です。
医師の非常勤には二つの働き方があります。
一つは週2日や週3日など勤務日数や時間を決めて定期的に勤務する定期非常勤です。もう一つは、健康診断や当直対応など単発で勤務するスポット勤務です。
定期非常勤は、決まった病院で決まった曜日と時間に働きます。スポット勤務に比べて収入が安定しやすいのがメリットです。スポット勤務は基本1日単位の勤務になるため、自由度の高い働き方が可能です。
定期非常勤とスポット勤務を組み合わせて働くこともでき、プライベートと仕事のバランスをとりながら働けるでしょう。
しかし、非常勤になると学会参加への補助が出なくなったり、専門性の高い医療に携わる機会が少なくなるというデメリットもあります。キャリアプランなども踏まえて、自分に合った働き方を選択することが重要です。
子育て支援が充実している医療機関に転職することでも、仕事と子育てが両立しやすくなります。子育て支援をしている医療機関では、職場全体が子育てへの理解が深く、子育て中の女性医師が多く勤めている可能性があります。そうした環境は、仕事と子育てを両立する上でとても大切です。
医療機関内に託児所があったり、育休の取得に積極的であったりと、子育て支援の方法もさまざまです。出産や子育てに向けて転職を検討する場合は、転職先の候補となっている医療機関の子育て支援制度が充実しているかを確認してみましょう。
現在は、自治体や民間などでも子育てをサポートしてくれる制度が多くあります。子育ての負担を減らすためにも、そういった制度を積極的に活用することが重要です。ここでは、その中でも職場で利用できる制度について詳しく解説します。
産前・産後は休業を取得できます。産前は出産予定日の6週間前(多胎妊娠では14週間前)から、申請すれば取得可能です。産後は、出産翌日から8週間(本人が希望して認められた場合は6週間)は就業できず、休業期間になります。
この制度は女性医師に限らず、職種や雇用形態を問わず全ての女性が利用できる制度です。激務の場合でも産前産後は体を休めなければいけません。産前・産後休業制度を利用して、元気に赤ちゃんを出産し、体を労わることを最優先しましょう。
1歳未満の子どもを養育する人は、性別を問わず育児休業を取得できます。保育所への入所を申請しているにもかかわらず、入所できない場合は2歳まで育児休業が延長可能です。
近年、男性も育児休業制度を取得し、積極的に育児に参画するべきであるという考えが広まっています。医師の場合は現場の人手不足やオンコール対応、担当医制などさまざまな壁はありますが、可能な範囲で育児休業を取得できれば、夫婦で子育ての負担を分け合うことで、仕事との両立がしやすくなるでしょう。
短時間勤務制度は、前述の医師の時短勤務制度とは違い、医師に限らず利用できる制度です。適用されるには労働時間や日数が条件を満たしている必要がありますが、正規職員でなくても利用することができます。適用されればフルタイムの勤務時間を6時間に短縮して働くことが可能です。(※)
仕事と子育ての両立は、どのような職業でも非常に難しい問題です。しかし、近年は男性の育児への参画が推進され、育児休業がとりやすくなりました。産前産後の休業制度だけでなく、国や自治体、職場の制度の中から利用できるものを活用しましょう。
また、働き方によっては、仕事と家庭のバランスを調整することも可能です。出産や子育てと仕事の両立でお悩みの方は、今回紹介した方法を検討してみてください。
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