診療科別の医師不足の状況は?医師不足の原因や問題解決の取り組みを紹介

目次
現在の医療業界が直面している深刻な問題が医師不足です。医師不足の問題では地域的な格差が大きな話題となりますが、診療科別にみた場合でも医師の充足具合にばらつきがみられます。
医師としてのキャリア形成を考える上でも、診療科別の医師不足は常に意識しておくと良いでしょう。
本記事では、診療科別にみた医師不足の状況を解説します。医療業界が克服するべき医師不足の問題に対する理解を深め、今後のキャリア形成に役立てましょう。
日本における医師不足の問題は大きく2つ
日本における医師不足の問題は「医師の絶対数不足」と「医師の偏在」の大きく2つあります。医師不足の要因となっている2つの問題について解説します。
①医師の絶対数不足
日本が医師不足に陥っている大きな問題の一つが医師の絶対数の不足です。本格的な少子高齢化社会を迎える日本では、全ての患者に十分な医療を提供するためにより多くの医師の確保が求められています。
日医総研のリサーチエッセイによると、日本の人口1,000人あたりの医師数は2.4人です。(※)他の先進諸国ではドイツが同4.1人、イタリアが同4.0人と高い水準にあります。イギリスやアメリカも人口1,000人あたりの医師数が3.0人を下回りますが、日本はG7の中でも最低の数値です。
実際には、日本における医師の絶対数は増加傾向にあります。厚生労働省が公表した「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、2000年(平成12年)に全国で登録されている医師の数は255,792人であるのに対し、2020年(令和2年)では339,623人まで増加しています。(※)
直近20年間で8万人以上の医師を増やしながら、それでも医師不足が解消されていないのが日本の医療の現状です。今後、より一層進行する少子高齢化に備え、早急に医師の絶対数を増やす対策が求められています。
※参考:厚生労働省. 「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」p3.https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/20/dl/R02_1gaikyo.pdf
②医師の偏在
日本の医師不足に拍車をかけている問題が医師の偏在です。医師の偏在とは特定の地域や特定の診療科に医師が集中してしまう状態を指します。医師の絶対数が不足していることに加え、医師が集まりにくい地域や診療科ではより深刻な医師不足に陥っています。
地域別に医師の数をみた場合、人口が多く、大学病院などの大規模医療施設をようする都心部に医師が集中する傾向がみられます。
診療科別の医師不足に対する認識
診療科別の医師不足について、実際に現場で働く医師がどのように感じているのかをみてみましょう。ここでは、一般社団法人 日本病院会が実施した「2019年度 勤務医不足と医師の働き方に関するアンケート調査」の結果をご紹介します。(※)
同調査によると、勤務医が充足しているかという質問に対し、「不足している」が40.9%、「やや不足している」が46.7%と約88%の人が不足していると感じています。
一方で、現場の医師不足を感じていない「充足している」と回答したのは全体の10.4%に留まりました。
また、診療科別でみると、「不足している」「やや不足している」と回答したのは麻酔科の42.3%、次いで内科39.2%、救急科34.0%、整形外科33.4%と続きます。
なお、割合が最も少なかったのは心療内科でした。
この調査結果から、診療科別で状況は異なるものの、日本の医療現場の多くは医師不足に悩まされていることが分かります。
データからみる診療科別の医師不足
意識調査から医師の多くが現場の人員不足を実感していることが分かりましたが、その実態はデータからも明らかです。ここでは、厚生労働省が発表している資料を基に、診療科別の医師不足状況を解説します。
診療科別の医師数
厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、従事する主たる診療科別にみると、臨床研修医を除くと「内科」が61,149 人(18.7%)と最も多く、次いで「整形外科」22,506 人(6.9%)、「小児科」17,781 人(5.4%)となっているとの報告があります。
また、主たる診療科の構成割合を性別にみると、男性は「内科」(19.9%)が最も多く、次いで「整形外科」(8.5%)、「消化器内科(胃腸内科)」(5.2%)となっており、女性は臨床研修医を除くと「内科」(14.7%)が最も多く、次いで「小児科」(8.4%)、「眼科」(6.9%)となっていると述べています。
医師不足が顕著な診療科はリハビリ科と救急科
厚生労働省の「必要医師数実態調査」によると、診療科別の必要医師数は地域や医療機関の規模によって異なりますが産科・小児科・救急科などは特に医師不足が深刻な診療科とされています。(※)
理由としては、救急科では24時間体制での対応が求められ、過酷な勤務環境が原因で医師が定着しにくい、小児科では診療報酬が比較的低く、長時間労働が多いため、若手医師の志望者が減少等が挙げられネガティブなイメージが医師不足を招いている可能性が考えられています。
医師不足を招く要因
医師不足はさまざまな要因によって引き起こされており、状況を改善するための課題は山積みです。ここでは医師不足の主な要因を3つご紹介します。
医師不足の要因①医局制度の崩壊
地方病院や中小病院の医師採用を困難にしている要因として挙げられるのが、医局制度の崩壊です。医局は主に大学医学部における伝統的な派閥組織であり、以前は医局を通じて全国各地の関連病院へ研修医の就職を斡旋する方法が主流でした。これを医局制度と呼びます。
この状況を大きく変えたのが2004年にスタートした医師研修臨床制度です。新制度では、研修医が医局に縛られることなく研修先の病院を選択できるようになる一方で、結果としては都市部の大病院に研修医が集中するようになってしまいました。
その結果、地方病院や中小規模病院では医局からの紹介による研修医の確保が困難となり、現在の医師の偏在につながったと考えられています。
医師不足の要因②過酷な労働環境
医師特有の過酷な労働環境も、人員不足を招く要因の一つです。患者の健康や命を預かる医師の仕事は、肉体的にも精神的にも負担が大きいことは間違いありません。特に、救急科や小児科、産婦人科などの医療訴訟が起きやすい診療科は、近年ライフワークバランスを重視したい医師から入職を敬遠される傾向にあります。
働き方改革により、医師の労働環境も改善傾向にある一方で、少子高齢化による患者の増加や慢性的な長時間労働などの問題は依然として残ったままです。医師不足の現場では、心身の負担により転科や辞職を希望する医師が増え、より一層の人員不足を招く悪循環に陥っています。
医師不足の要因③女性医師のための勤務体制の不備
増加傾向にある女性医師に対して、適切な勤務体制の整備が遅れていることも慢性的な医師不足の要因と考えられています。女性は出産や子育てなどのライフイベントの影響を受けやすく、キャリアを継続するためには病院内での勤務体制の整備が不可欠です。
厚生労働省が公表した「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」をみても、医師全体における女性の割合は年齢が高くなるにつれて低下しています。(※)近年、医師の絶対数の増加は男性よりも女性の方が顕著です。しかしながら、女性医師の割合は30代~40代で大きく低下しており、医師としてのキャリアと家庭の両立が困難であることが示されています。
医師不足の解消に向けた取り組み
日本の医療体制を維持するためにも、医師不足は早急に解決しなければならない重要な問題です。ここでは、医師不足の解消に向けた取り組みを紹介します。
医学部の定員増加
医師不足解消のための取り組みの一つが、医学部入学定員の増員です。日本では、医師の過剰供給を抑制するため、昭和56年の8,280人をピークに医学部の入学定員を縮小する措置が取られてきました。
平成20年以降は従来の制限を緩和し、令和元年には定員数が9,420人まで増加しています。(※)
キャリア形成プログラム
キャリア形成プログラムは、各都道府県が提供する若手医師の自発的なキャリア形成を支援する取り組みです。
その中では、医師不足地域や人員確保が優先される診療科でのキャリア形成を支援する取り組みも実施されています。
医師のワークライフバランスの改善
医師不足を解決するためには、医師のワークライフバランスの改善も不可欠です。現在では働き方改革への関心の高まりもあり、多くの医療機関が医師や看護師の労働環境改善に取り組んでいます。
以下は実際に医療機関で実施されているワークライフバランス改善のための取り組みの一例です。
- 夜勤後の休日確保
- 夜勤回数の上限設定
- 育児休暇制度
- 復職サポート制度
- 院内保育園の実施
- 年次有給休暇の取得奨励
- ノー残業デーの実施
診療科別の医師不足から今後のキャリアを考えよう
医師不足が顕著な診療科の多くは、肉体的にも精神的にもハードな職場です。しかし、そのような職場は通常よりも好待遇の求人が掲載されているケースも多く、必ずしもマイナスの要素になるとは限りません。何より、ハードな職場を経験することは、医師としてのスキルアップやキャリアアップにもつながっていくでしょう。
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