都道府県を選択
北海道・東北
関東
北陸
甲信越
東海
近畿
中国・四国
九州・沖縄
科目・業務内容を選択
科目
業務内容

【形成外科医が考察】なぜ医師は美容医療を選ぶのか?急拡大する市場背景と今後の展望

更新日: 2026/05/28

美容医療市場が急拡大し、キャリアの選択として美容医療を選ぶ医師が増えている。私は現在、形成外科医として保険診療を中心に診療を行っているが、美容医療にも関心があり、非常勤医師として美容診療に携わった経験がある。保険診療を軸足に置きながら、美容医療の現場を少し覗いてきた立場から、保険診療医からみた美容医療への印象と、医師が美容を選ぶ背景、そして現状について述べる。

今後、美容医療へのキャリアシフトやアルバイト・スポット勤務を検討している医師、また保険診療と美容診療の関係に関心のある方にとって、少しでも参考になれば幸いである。

執筆者プロフィール
江崎聖美(形成外科医)

大学病院形成外科医局に所属し、専攻医プログラムを経て専門医取得後、現在は総合病院の形成外科医として保険診療を中心に従事している。非常勤として美容診療にも携わった経験がある。

急拡大する美容医療市場の実態

日本の美容医療市場は近年、急速な拡大を続けている。厚生労働省が公表した医療施設調査によると、「美容外科」を標榜する診療所の数は2023年時点で2,016施設となり、2020年(1,404施設)と比較して、3年間で43.6%増加している。クリニック数だけでなく、携わる医師数も大きく増えている。

美容外科に従事する医師数は2022年時点で2008年比約3.2倍に達しており、医師全体の増加率(約1.1倍)を大幅に上回っている。この傾向は2026年現在も続いているとみられる。形成外科は美容医療と親和性が高く、自身の周りでも美容医療をキャリアの選択肢として選ぶ医師が増えていることを感じる。形成外科・皮膚科はもとより、さまざまな専門科を背景に持つ医師が参入している。

また、いわゆる「直美」と呼ばれる初期研修修了後に保険診療の専門科を経ず、そのまま美容クリニックに就職するケースも珍しくなくなっている。2023年には日本医学会連合が「医学部2つ分に相当する医師が美容領域に新規採用された」と言及している。これは単なる個人の進路選択にとどまらず、医師偏在の問題として社会的に議論されるようになっている。

市場規模の面でも拡大は続いており、主要な美容クリニック法人の売上高は2022年から2024年の2年間で約1.5倍に成長した。一方で、大手の倒産や閉院も増えており、市場は拡大しつつも競争が激化するフェーズに入ってきている。

参考:『令和5(2023年)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況』(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/23/dl/11gaikyo05.pdf
『「美容医療」市場は3年間で1.5倍に拡大 “経営力”と“施術力”で差別化が鮮明に』(東京商工リサーチ)
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201494_1527.html

美容医療を選ぶ医師が増えている背景|保険診療の労働環境と給与の現実

近年、美容医療に従事する医師は増加の一途をたどっている。しかしその背景には、美容医療そのものの社会的浸透に加え、保険診療を取り巻く構造的な問題が深く関わっている。

美容医療を選ぶ医師が増えている背景

美容医療を選ぶ医師が増えている背景を考えるとき、純粋な診療内容による人気だけではなく、保険診療における労働環境の厳しさの要因を無視することはできない。
特に大学病院などの教育機関では勤務医の給与水準が低いことが多く、当直・学術活動・雑務をこなしながらも、週末にアルバイトを詰め込んで収入を補わなければならない状況が続いている。

自身もレジデント時代は週末に地方に出向いて当直業務を行い、週明けからそのまま大学病院で勤務するなど休みなく働いていた時期もあった。やりがいや成長のための修行という気持ちで前向きに乗り越えていたが、ライフステージの変化が生じるなど、どうしてもそれだけでは乗り越えられない現実がある。

美容医療における高い給与水準ととワークライフバランスのとりやすさ

大手美容外科クリニックの給与水準は近年やや落ち着いてきたものの、初年度年収2,000万円といった条件が提示されるなど、魅力的であるのは事実だ。
自分の周りにも、美容医療に進んだ医師がいるが、最初から美容医療を志していたわけではない人も意外と多い。保険診療の現場でも誰よりも熱心に働いていた医師が、ライフステージの変化や保険診療での激務をきっかけに美容医療を選択することは稀ではない。

美容クリニックは、一般的に緊急手術や当直がなく、ワークライフバランスを保ちやすい労働形態である点も大きな魅力の一つである。子育て世代の医師が「家族との時間を確保したい」「家族を養いたい」という理由で美容医療を選択するケースは実際に多く見られる。

また、給与面でもインセンティブがあるケースが多く、保険診療の勤務医と比較すると、働いた対価として得られる収入は大きい傾向にある。保険診療医が美容クリニックに転職すると聞いたとき、周囲からの反応は必ずしも肯定的ではないことが多い印象である。しかし実際には、さまざまな葛藤を経て、自らの生活・家族・キャリアと真剣に向き合った末の選択であることも少なくなく、その背景にある構造的な問題にも目を向ける必要があると感じる。

保険診療医からみた美容医療への印象と保険から美容にいく際の壁

保険診療で培った技術は、美容医療の現場でどこまで通用するのか。診療内容だけではない、両者の間にある違いを考える。

保険診療と美容医療のギャップ

形成外科医であれば美容外科手術もできるだろうと思われることがある。確かに美容外科は形成外科の専門領域の一つでもあり、技術的なベースという意味では、保険診療で培った解剖の知見、組織や傷の扱い方など、活かせる部分も多い。

しかし実際には、保険診療の病院において、形成外科の勤務医が美容外科的な症例を経験できる機会はほとんどない。そのため、美容医療を本格的に学ぶには、保険診療のベースがあっても、ある程度の修練は必要で、美容医療を扱うクリニックや大手美容外科の常勤医師として実地で修練を積む医師が多いのが現状である。

美容医療に求められるスキルとマーケティングへの理解

現在の美容医療市場はレッドオーシャン化が進んでおり、保険診療とは別の意味でシビアな環境に置かれるケースも多い。

形成外科を一例とすると、手術がうまい医師が美容業界で活躍できるとは限らない。美容診療で求められるのは手技だけではない。美容医療での患者からの評価は、保険診療とは質的に異なる厳しさがある。

技術や診療態度など、保険診療では指摘されないレベルの細部まで評価の対象となり、診療への要求水準も高い。集患力・SNS運用・マーケティング・カウンセリング技術など保険診療とは異なるスキルセットが求められる。

ほとんどの場合、何もしなくても患者が来院する環境に慣れている保険診療の医師にとって、選ばれる医師になるための戦略は新たな領域であり、熟練した形成外科医であっても、別途努力が必要だと感じる。特に、SNSなしには現在の美容医療は語れない。
医師やクリニックによる発信がなければ認知が広がらず、正確な情報を届けることと同時に話題になることやバズること自体が集患に直結する。保険診療一筋でやってきた医師は、この構造に違和感を感じる人が多い。

”直美”の医師だからこそ持ち得るマーケティングへの熱量と適性

一方で、「直美」の医師の多くは、こうしたSNS発信に抵抗感が少なく、集客のために純粋に努力できる側面があり、保険診療の医師との意識差は大きいと感じる場面がある。
この点では、意識の切り替えが求められる部分の一つであり、保険診療一筋でやってきた医師が見習うべき姿勢があるとも感じる。

このように、美容医療には保険診療とは種類の異なるストレスがあり、向き不向きを見極めることも必要だろう。今後、美容医療のキャリアを検討する際は、収入・ライフスタイル・やりがいなど、どの要素を重視するかや、目指す働き方とクリニックの方針、自分の適性などを、アルバイトやスポット勤務で現場を経験してから判断することも有効な選択肢となる。

今後の展望|保険診療と美容診療の技術と経験は双方向に活きる

保険診療と美容診療はまったく異なる領域とはいえない。両者の線引きはどこにあり、互いの経験はどう活きるのか――現在、そして今後どのように向き合うべきかを考えたい。

保険診療と美容医療の曖昧さ

診療内容という観点では、保険診療と美容医療を完全に切り離して考えることはできない。特に審美的な側面も重視される形成外科では、保険診療と美容医療の線引きが曖昧な部分がある。

例えば、眼瞼下垂は症状があれば保険適用になるが、審美性を追求し、あえて自費での治療を選択する患者もいる。傷跡治療や一部の先天異常、乳房再建などにおいても同様で、保険診療の枠内での治療と美容診療の選択肢は、明確に線引きできずグラデーションになっている部分もある。審美的な仕上がりは患者の精神的回復やQOL、社会生活に寄与するため、保険診療の対象疾患であっても、美容医療で磨かれる仕上がりへのこだわりや技術が求められる側面がある。

美容診療の経験が治療の幅を拡げる可能性

また、美容医療には、保険診療では実現できない治療の選択肢がある。自身も美容医療の非常勤として働いた経験を通じて、患者に提示できる選択肢が増え、より多角的に向き合えるようになったと感じている。

エビデンスの蓄積とともに美容医療の一部が新たに保険適用に移行していく可能性もある。保険診療医が美容診療についてある程度知っておくことは、治療の幅を広げるという意味でも意義がある。

両方の領域を理解した上で患者に向き合える医師の存在が、今後ますます重要になってくると思う。今後、保険診療医にも美容医療を体系的に学ぶための体制が整備され、継続的に技術・知識を更新できる環境が広がれば、医療の質向上にもつながるだろう。

終わりに

今回は形成外科という一つの科の視点から述べたが、他の診療科における自由診療の事情はまた異なるだろう。

また、本稿で取り上げた以外にも、美容医療に関連する問題は多岐にわたる。医師が美容医療を選ぶ背景には保険診療の労働・報酬環境への課題があることも多く、社会全体で考えるべきテーマでもある。

保険診療であっても美容診療であっても、患者に誠実に向き合い、学び続け、最新の知見を臨床に活かしていく姿勢が医療の質を支える根幹であることに変わりはない。今後も保険診療と美容医療がどうあるべきか、医師一人ひとりが自身のキャリアのみならず、より良い医療を実現するために考え続けていくべきだと思う。

医師のアルバイト・転職はMRT

MRTは、医師専門の求人情報サービスです。医師のスポットバイトや定期非常勤などのアルバイト求人・常勤求人を多数掲載しています。給与・診療科・エリアなど、ご希望の条件で求人を検索することが可能です。自身のキャリアに対する目標・理想の働き方に合わせて、求人を探してみましょう。※新規登録不要で検索いただけます。求人応募には会員登録が必要です。

医師の転職(常勤)求人を探す 

医師のアルバイト・スポットバイト求人を探す

<医師アルバイト・転職(常勤)求人はこちら>

医師のアルバイト・スポットバイト求人一覧
医師のアルバイト・バイト(定期非常勤)求人一覧
医師の転職(常勤)求人一覧

<MRTアプリ「MRTWORK」>

「お気に入り機能」「求人閲覧履歴」「地図検索」など、WEBよりも医師アルバイト求人検索が簡単に!
ダウンロードはこちら

<LINEで医師アルバイト・転職(常勤)求人を受け取る>

MRT公式LINEでは最新の医師アルバイト(スポット/定期非常勤)求人と転職(常勤)求人を配信中!
友だち追加はこちら

最新記事

会員登録(無料)ログイン