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【実体験】医師のクリニック転職の実態とは?現役医師が感じた、クリニック転職のポイントや注意点も解説

更新日: 2026/05/28
医学部を卒業後初期臨床研修を修了し、多くの方はその後に専攻医として専門研修を行い、専門医の取得を目指します。専門医を取得し今後の自身のキャリアを考えたとき、様々なプランがあります。これまでがむしゃらに走ってきましたが、目の前に広がるキャリアの選択肢の多さに、かえって立ち止まってしまう先生も多いのではないでしょうか。
急性期医療の最前線で研鑽を積む毎日は学びが多く誇らしいものですが、同時に、心身の消耗や家庭とのバランスをどう取っていくか、将来への漠然とした不安を拭いきれないという先生方も多いのではないでしょうか。当直やオンコールから外れる働き方の一つとして、「クリニックへの転職」という道があります。入院病棟を持たず外来のみで完結する医療の難しさや、大病院という後ろ盾のない一医師としての立場の違いなど、実際に現場を変えてみると意外と戸惑うことも多いのですが、ワークライフバランスという点では、特に小さいお子さんがいらっしゃる先生方にはおすすめできる働き方であると思います。
本記事では、急性期病院からクリニックへの転職の際に意識するポイントや注意点、履歴書での自己PRのポイントなどについてお話したいと思います。今後転職をお考えの先生の参考になれば幸いです。
執筆者プロフィール
大原 慎(血液内科)
2013年卒。血液専門医・指導医。血液内科医として総合病院で勤務後、2022年に現職のクリニックに転職。健康診断と一般内科外来、海外渡航前のトラベルワクチンなどの業務を行っている。2022年10月からは管理医師を務めている。2児の父で何とか仕事と両立しようと奮闘している。

当直・オンコールなしという働き方を選択する背景

患者さんへの献身を前提とした従来の主治医制からチーム制への移行は、急性期医療に携わる医師にとって大きな転換点となっています。しかし、質の高い医療を維持しようとするプロフェッショナリズムが、ときに働き方改革と衝突してしまう現実があります。

急性期病院での勤務体制ー主治医制からの変化

急性期病院では病院全体としての救急当直も月に数回ありますし、とくに重症患者さんが多い診療科に所属しているとほぼ24時間365日オンコール状態という先生方も多いのではないでしょうか。
夜間や休日でも自身が主治医の患者さんの対応は自身で行う主治医制は、働き方改革の観点から減ってきているとは思います。同じ診療科の複数名で主治医を担当するチーム主治医制であったり、夜間や休日は当直医が対応したり、というような医師個人の負担を減らすような風潮になってきているのは事実です。

「働き方改革」でも変わらぬ長時間労働。医師の献身に頼る医療体制の現状

専門性が高いがゆえの「申し送りの限界」

2024年4月より医師の時間外労働に上限規制が適用されましたが、現場では依然として「数字上の労働時間」と「実務的な責任」の乖離に苦しむ声が絶えません。特に急性期病院や高度な専門性を要する診療科において、大きな壁となっているのが「カルテ共有による引き継ぎの限界」です。

緻密に組み立てられた治療方針や、長年の診療で築き上げた患者・家族との信頼関係を、当直の他科医師に完全に委ねることは容易ではありません。特に専門性が高い疾患や治療がされている場合には、他科の当直医にお任せするのが難しいことが多々あり、結局オンコール外でも対応せざるを得なくなった結果、働き方改革が始まった今なお長時間労働に従事せざるを得ないのが、多くの専門医が抱える実情です。

プロフェッショナリズムと持続可能性のジレンマ

制度としての『働き方改革』が進む一方で、医療の現場は依然として医師個人のプロフェッショナリズムや責任感に依存して成立している側面があります。
特に専門性の高い分野ほど、オンとオフの境界を明確に引くことへの心理的・実務的なハードルは高く、結果として医師個人の献身によって医療の質が維持されているという構造は否定できません。

クリニックへの転職が有力な解決策となる背景

自らのキャリアの持続可能性を考えたとき、当直やオンコールのない『クリニックへの転職』という選択肢が、現代の医師にとって一つの有力な解決策として浮上してくるのは、こうした背景があるからではないでしょうか。

【実体験】クリニックへの転職後に感じた変化

クリニックへの転職は、医師としての役割や視点を変える大きな転換点となります。
私の場合は、管理医師としての責任や地域医療の最前線で直面する新たな挑戦となりました。急性期病院からクリニックへと舞台を移したことで見えてきたことと、これからの時代に求められる医師像についてお伝えします。

夜間休日の予定が立てやすくなった

働き方の変化として最も顕著なのは、やはり予定の立てやすさ、につきると思います。急性期病院時代は、当番日ではない夜間や休日でも常に携帯電話の着信を気にしなければならない緊張感がありましたが、クリニック転職後はオンとオフの境界線が明確になり、夜間や休日の時間をより純粋に、自己研鑽や家族のために充てられるようになりました。

管理医師への就任で感じたギャップと得られた経験

私の場合、一般常勤として入職してしばらくした後に管理医師という立場を引き受けることとなりました。これにより、当初想定していた「外来診療に専念する」という形からは少し変化が生じています。

自分自身が不在の日の診療指示や、スタッフの人事管理、クリニック全体の統率といった運営業務が加わり、病院時代とはまた質の異なる忙しさに直面することとなりました。
現場を円滑に回し、患者さんに選ばれ続けるクリニックであり続けるための模索をしています。

こうしたマネジメント業務は、一勤務医時代には経験できなかった視点を与えてくれました。この新しい役割への挑戦もまた、転職によって得られた貴重な財産だと感じています。

総合病院とクリニックの違い

実際に現場を変えて痛感したのは、総合病院とクリニックにおける『求められる役割のギャップ』です。

まず、診療の幅の広さです。病院時代のような縦割りの組織ではないため、専門外であっても一次対応を求められる場面が多々あります。急性期病院時代の専門性は失わないようにしつつ、プライマリケア医としての役割を両立させる柔軟さが試されます。

さらに、患者さんのニーズも大きく異なります。総合病院に来る患者さんは高度な検査や治療を最優先にしますが、クリニックの患者さんはそれ以上にアクセスの良さや迅速な対応といった利便性を重視されます。
限られた検査資源の中で、今ここで対応すべきか、あるいは高次医療機関へ繋ぐべきかを見極める地域のゲートキーパーとしての役割や、医療をサービスという側面からも捉える視点は、病院という守られた組織の中にいた頃には、なかなか気づくことのできなかった実態でした。

どのような医師がクリニック転職に向いているか

もちろん、外来診療そのものが好きであることや、多種多様な患者さんと信頼を築くコミュニケーション能力は欠かせません。それに加えて重要だと感じるのは、検査資源の限られた現場で見逃してはいけない疾患を嗅ぎ分ける直感と、それを一般の言葉で丁寧に説明できることです。

患者さんによって詳細な説明が欲しいのか、時間がないので簡潔にして欲しいのか、心配を取り除いて欲しいのか、それぞれ柔軟に対応することが求められます。管理医師としての視点に立てば、診療だけでなく組織の運営やチームづくりを自らの手で最適化していくプロセスに、喜びを感じられる方は非常に向いていると言えるでしょう。

転職時に意識すべきポイント

理想の職場に出会うためには、希望の条件を並べるだけでなく、まずは「自分がどんな医療をしていきたいか」という軸を再確認することが大切です。自分に合うクリニックの見極め方から、会ってみたいと思わせる履歴書のコツ、そして管理医師としての契約までー後悔しない転職にするために、押さえておきたいポイントを整理しました。

①自分の中で重視するポイントを整理しておく

転職活動で最も重要なのは、自分の中の優先順位を明確にすることです。当直の有無や給与といった条件面はもちろんですが、「どのような医療を提供したいか」という価値観は大事にしていかなければなりません。

条件の良さだけで選ぶのではなく、自分の理想とする働き方と、提示された環境が地続きにあるかを慎重に見極めることが、後悔しない選択への第一歩となります。クリニックと一口に言っても多種多様なものがあります。保険診療をメインとしたクリニック、健康診断を提供するクリニック、美容をはじめとした自費診療を行うクリニックなどです。自分の医療に対しての考えと、転職を検討するクリニックの相性を見極める必要があります。もしクリニックへの転職が不安であれば、スポットバイトや定期非常勤での勤務を通して、そのクリニックの働きやすさや自分に合うかどうかという見極めをするのも有用な選択肢ではないかと思われます。

②履歴書作成のポイントと注意点

履歴書は単なる職歴の羅列ではなく、自身のキャリアを伝える重要な書類です。専門医などの資格や勤務先を最新の状態に保つのはもちろん、異動が医局人事によるものか自己応募によるものかを明記することは、自身の意思決定のプロセスを明確にする上で非常に有効です。

特に注意したいのは、休職期間や短期間の離職がある場合の記載です。これらを空白にせず、自己研鑽や留学、家庭の事情など、差し支えのない範囲で理由を添えることで、採用側に安心感を与えます。また、専門領域からクリニックへ移る際は、取得した専門医資格が現在の診療にどう活きているか、あるいはどのようなマネジメント経験を積んできたかを、職務要約として簡潔に添えてください。正確かつ誠実な記載は、スキル以上に医師としての信頼感を物語ります。

③管理医師として招聘される場合に気をつけること

管理医師に就任する際のパターンとしては大きく2つあります。

医療法人の理事となって管理医師になる場合

まずは医療法人の理事となって管理医師になる場合です。この立場で留意すべきは、一般の勤務医とは異なる責任の重みと性質です。法的には経営陣の一員となるため、診療上の責任に加えて、法人が負うべきガバナンスへの寄与も求められます。
理事という役職は労働基準法の保護が及びにくい側面があります。そのため、任期や更新の条件、あるいは退職時の取り決めなど、契約書の内容が自身の身分を担保する唯一の砦となります。実質的な経営主体の意向と、自身の医師としての倫理や運営方針が食い違った際、どのように調整を図るべきか。その出口戦略までを見越して契約を精査することが、安心して診療に専念できる環境を手に入れるための、極めて重要なステップとなります。

医師自身が開設者になる場合

さらに注意が必要なのは自身が開設者になる場合です。自身が開設者(管理者)として届け出ます。法的な名義人になるということは、保健所や厚生局、税務署などの行政に対し、クリニックで起こるすべての事象への最終責任を負うことを意味します。

ここで最も精査すべきは、「実質的な経営主体の意向にどこまで従うのか」という点です。実質的なオーナーが別にいる場合、診療方針やスタッフの人事などにおいて、名義人である自分にどの程度の裁量が担保されているかを書面で明確にする必要があります。
もしこの確認をおろそかにすると、実質的な経営権がないにもかかわらず、行政上のペナルティや訴訟リスクだけを一身に背負うことになりかねません。

開設者という重い選択をする以上、経営主体とのパワーバランスを見極め、自身の信念を貫ける契約構造になっているかを徹底的に確認すべきです。

おわりに

キャリアの転換は勇気を要する決断ですが、クリニックという舞台は、専門医として培った知見を「地域医療」や「組織運営」という新たな形で昇華できる可能性に満ちています。
大切なのは、条件面のみならず、自身の医療観を守れる環境を自らの目と契約で確かめることです。一歩踏み出した先にある、新しい医師像への挑戦が、先生方にとって納得感のある豊かな人生に繋がることを心より願っています。

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