【医師座談会】令和の医師の『稼ぎ方』と『休み方』(前編)
目次
若手から中堅の医師3名に、実体験をもとに語り合っていただきました。前編では、それぞれが現在の働き方を選ぶに至った背景と、収入設計・資産形成への取り組みについて深掘りします。
きすみ
医師15年目の男性医師。一般外科。東京の医局を退局後、子育て移住のために九州へ。現在は肛門外科専門病院にて週4日常勤のほか、産業医・健診・自由診療・医療コンサルティングなど多角的に活動している。
robo
医師15年目の医師。脳神経外科。市中病院での脳卒中診療を経て、今年4月より脳腫瘍専門病院に勤務。脳血管内治療専門医資格を保有する。
チルチル
医師6年目の医師。小児科。後期研修終了後にフリーランスとして活動中。小児科医としての診療の他、嘱託産業医としての仕事や美容皮膚科での施術なども行う。
3名の医師が働き方に辿り着いた経緯と理由
——まずは自己紹介も兼ねて、現在の働き方とここに至るまでの経緯を教えてください。
チルチル:私は医師6年目の小児科医です。小児科の後期研修が終わったところで、今年度は家族の都合で医局の人事には乗らず、フリーランスという形で働いています。産業医資格を持っており、嘱託産業医もやっていますし、美容皮膚科でのボトックスやレーザー施術なども行っています。
もともと一般的なサラリーマン家庭の出身で、幼少期から全国7都道府県を転々としてきました。子どものころに持病があり、その際に尊敬できる小児科医に出会ったことが小児科医を志したきっかけです。
東京のいわゆる人気病院で初期研修をしたことで、野心を持った、多様な価値観を持つ同期に恵まれました。学生時代からベンチャー企業でインターンをしていた同期、株式投資を趣味にしている同期……。そうした環境の中で「勤務医以外にもさまざまな選択肢があるのだ」と気づき、自然とキャリアや資産形成を意識するようになりました。
後期研修では、夏休みを利用して産業医資格を取得したり、知人のクリニックで美容施術を学んだりと、稼ぎ方の幅を少しずつ広げてきました。後期研修を終えた後は、1年間は進路を考える年にしようと医局に相談し、現在のフリーランスという形にいたっています。
きすみ:医師15年目の外科医です。4年前に東京の医局を退局し、九州に子育て移住しました。現在は肛門外科専門病院で週4日勤務しており、残りの1日は産業医や健診施設でのバイト、その他の医師副業に充てています。
自分も地方のサラリーマン家庭の出身です。都内の私大を卒業後、母校の附属病院で初期研修を行い、3年目以降は別の医大の医局に入りました。母校は人脈形成に乏しく多様性に欠けると感じたからです。医局員として関連病院を転々とするなかで妻と出会い、双子を含む3人の子どもが生まれたのを機に、妻の実家がある九州への移住を決めました。
転職活動の際には「週4日勤務」を条件として交渉し、今の働き方を実現しています。医局員時代から資産形成には興味があり、年収の最大化には週4日勤務+αがベストという考えから、この形にたどり着きました。
robo:脳神経外科のroboです。医師15年目です。これまで市中病院で脳卒中を中心に診てきましたが、4月より脳腫瘍専門の病院で勤務しています。私も地方のサラリーマン家庭の出身で、関東の大学に入学し、市中病院での研修・勤務を続けてきました。このご時世に逆行したがむしゃら型の働き方かもしれませんが、専門性を磨くことと収入を増やすことを両立させながら、今後は脳腫瘍を専門としてさらに経験を積んでいく予定です。
——奇遇にも、3名とも地方のサラリーマン家庭のご出身なんですね。
チルチル:そうなんですよ。開業医の後継かどうか、あるいは実家の経済状況によって、働き方や稼ぎ方、キャリアの選び方はかなり変わると思っています。自分にとってどれくらいの収入が必要かという感覚も、育ってきた生活水準に影響されているのかもしれないですね。ただバックグラウンドが似ていても、その後の意思決定や重視していることには違いがあって、とても面白いですよね。
医師×収入設計|考えるタイミングと抑えるべきポイント
——収入設計はどのように考えてきましたか?きすみ先生は「週4日勤務+αが年収最大化にベスト」とおっしゃっていましたが、もう少し詳しく教えてください。
きすみ:週4日にした理由は2つあります。まず、外科医として常勤で働くミニマムが週4日だということ。週3日以下になると非常勤扱いになる病院が多く、術後管理が手薄になるため、術者として責任を持った仕事ができなくなります。外科では”やり逃げ”は許されない文化がありますから。
一方で週5日にしても、社会保険料などのコスト増から、病院側が週4日の1.25倍の給与を出してくれないケースが多い。だったら週4日常勤+非常勤バイトの方が収入が増えやすいんです。
ただし、条件がよくても仕事の密度が伴わなければ意味がない。以前、給料や福利厚生は良かったけれど手術件数が極端に少ない職場に転職したことがあり、やり甲斐とスキルアップが望めないため再転職しました。
手術や内視鏡などの技術はAIに代替できない強みがある一方、やり続けなければ技量は衰える一方です。収入と経験のバランスをとることが、外科医としてキャリアを長続きさせる鍵だと思っています。
——勤務日数の設計だけでなく、専門性や資格によって収入の選択肢が広がる面もあると思います。robo先生は、収入設計という観点で、資格取得や専門性をどのように考えてきましたか?
robo:私は資格取得が収入の幅を広げたと感じています。具体的には脳血管内治療専門医の資格です。脳卒中を診る病院では必須の資格で、これを取得したことでバイトの幅が広がり、収入も上がりました。現在は脳腫瘍の勉強中で主な勤務先の収入は低めですが、その分バイトで補う形にしています。
——資産運用という観点ではどのように考えていますか?
チルチル:資産運用という点だと私は複利の効果を勉強して、若いうちにできるだけ元本を積み上げることが大事だと感じるようになりました。
後期研修中は本業に加え、空いている時間はバイトをして、ほぼ週7日働いて、投資信託を中心に資産形成を進めてきました。地方から東京に出てきて、医師以外にも稼いでいる人たちの存在を知ったこと、率直に「負けたくない」と思ったことも原動力でした。
ただ、今振り返ると、不動産投資も含めてもっと早い段階から収入の柱を複数作っておいてもよかったと思っています。
——お三方とも、若いうちは収入より経験を優先されていた印象ですが、収入設計を意識し始めたタイミングはいつ頃でしょうか?
チルチル:自分はもともと「やりたいこと」を軸に動いてきましたが、少子化が進むなかで小児科医のポジションや収入がこの先どうなっていくのか読みにくいという漠然とした焦りがありました。その危機感から具体的な行動に結びついた感じです。
きすみ:後期研修医の頃は本当に忙しく、覚えることが山ほどあって、今ある仕事をこなすことで精一杯でした。そのきつい時期を経たからこそ、優先順位のつけ方ややり繰りを覚えられたのかなとも思っています。6年目以降から少し心に余裕が出てきて、資産形成や家庭のことを考えるようになりました。
robo:私は医師5年目から不労所得を意識するようになりました。収入の柱を早めに作ることを考えていましたね。
医師の不動産投資と金融リテラシー
——不動産投資についても取り組まれているとのこと、詳しく聞かせてください。
robo:医師5年目から、信頼できる業者を選んでワンルームマンションを購入しました。現在6室を保有しており、今となっては良い買い物をしたと思っています。こういった情報を学生時代から知っていれば、もっと有利なタイミングで動けたと思いますね。最近の世界情勢、金利動向や景気の動きが不動産にどう影響するかという基礎的なマネーリテラシーを、もっと早い段階で身につけておきたかったです。
きすみ:私も保険診療の限界を感じており、医師業だけだと今後収入が減っていく可能性があるため、それを補う形で不動産投資に取り組んでいます。
今のところ3棟保有しており、当面は本業の年収と同じくらいのキャッシュフローを得ることを目標にしています。コロナ禍の暇な時期にFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を取りましたが、これを学生のうちに取得して金融リテラシーを学んでおけばよかったと思っています。
——皆さんのお話を聞いていると、若い頃はまず本業に必死で、少し余裕が出てきたタイミングで資産形成を考え始めたという共通の流れがあると感じます。そして「金融リテラシーはもっと早く学んでおきたかった」という点も共通していますね。
チルチル:これまでのデフレ時代は、ある意味で何もしなくても医師は比較的よいポジションを保ちやすかった面があったかもしれません。でも今後はインフレが進み現金の価値は目減りしやすくなる。金利上昇や人口減少も踏まえると、資産の持ち方をきちんと考えること、金融リテラシーの必要性はますます高まっていると思います。
【前編まとめ】
前編では、3名の医師が現在の働き方を選ぶに至った背景と、収入設計・資産形成への取り組みについて語り合いました。
地方のサラリーマン家庭という共通のバックグラウンドを持ちながら、外科・脳神経外科・小児科というそれぞれの専門性と、そのときどきのライフステージに応じた意思決定が、三者三様の働き方を生み出していることが見えてきました。
専門性を磨くことが収入の幅を広げること、そして本業以外にも収入の柱を早期から意識することの大切さが、共通したメッセージとして浮かび上がりました。
後編では、常勤先・アルバイト先の選び方から、休み方への考え方、若手医師へのメッセージについて、さらに深く聞いていきます。
▼後編はこちら
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