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【医師座談会】令和の医師の『稼ぎ方』と『休み方』(後編)

更新日: 2026/05/28
前編では、外科医のきすみ先生(医師15年目)、脳神経外科医のrobo先生(医師15年目)、小児科医のチルチル先生(医師6年目)の3名が、現在の働き方を選ぶまでの経緯と、収入設計・資産形成への取り組みについて討論。後編では、常勤先・アルバイト先をどのような基準で選んできたか、休みをどう設計しているかをじっくり語り合いました。
【参加者紹介】
きすみ
医師15年目の男性医師。一般外科。東京の医局を退局後、子育て移住のために九州へ。現在は肛門外科専門病院にて週4日常勤のほか、産業医・健診・自由診療・医療コンサルティングなど多角的に活動している。
robo
医師15年目の医師。脳神経外科。市中病院での脳卒中診療を経て、今年4月より脳腫瘍専門病院に勤務。脳血管内治療専門医資格を保有する。
チルチル
医師6年目の医師。小児科。後期研修終了後にフリーランスとして活動中。小児科医としての診療の他、嘱託産業医としての仕事や美容皮膚科での施術なども行う。
▼前編はこちら

医師の常勤先・アルバイト先|将来を見据えた職場選びの基準

——常勤先やアルバイト先を選ぶ際に、どのような基準で判断してきましたか?

チルチル:私は初期研修先を選ぶ段階から、ある程度その先の進路をイメージしていました。

初期研修病院を選ぶ際に、その病院がどこの医局とつながっているかを事前に確認しておくことが大切だと思います。私は、初期研修の間に後に入局を考えていた大学病院で1か月研修させてもらい、医局の雰囲気や関連病院の感じを実際に肌で確かめてから判断しました。

入った医局は人数が多く、人事の融通もきかせてもらいやすかったです。都心に近く、職場環境がよく、バイトもしやすい病院を希望できたのはそのおかげです。人事の融通がどれくらいきくかは、後の働き方を設計するうえでかなり重要なポイントだと思います。

アルバイト先については、さまざまな勉強会や飲み会に顔を出して知り合った先生から紹介していただいたり、MRTのような求人サイトを活用したりして探してきました。求人サイトは、勤務条件や勤務地、診療内容を比較しながら探せるため、自分の生活スタイルやキャリアの方向性に合う案件を見つけやすい点がメリットだと感じています。
また、求人サイトに掲載されている案件の中にも、単に収入を得るだけでなく、経験や専門性を磨ける求人はあります。たとえば、自分が将来関わりたい領域の診療経験を積める勤務先や、普段の常勤先では経験しにくい働き方ができる案件もあります。
そのため、ただ条件だけで選ぶのではなく、自分のキャリアにもつながる業務かどうかを意識していましたね。やはり人脈は大きいと思います。

きすみ常勤先は「症例数が確保できるか」「教育機能があるか」「専門医の認定施設かどうか」の3点を重視して選んできました。大学病院を軸に据えてきたのはそのためです。今年とある専門医試験を受けるために申請書を出したばかりですが、認定施設での研修期間の証明が専門医申請時に意外と引っかかりやすいんです。大学病院での勤務歴がここに来て生きていると実感しています。

医局を離れると自力で就職しなければならないので、少なくとも複数の専門医を保持して、希望の転職先にアピールできる状態にしておくことが大切だと思います。

アルバイトは、コスパと面白さで選ぶこともあれば、専門医申請に必要な認定施設での研修期間を確保する目的で選ぶこともあります。

robo常勤先はある程度医局の指示に従ってきましたが、希望する症例が経験できるよう融通をきかせてもらうこともありました。

バイトも医局からの紹介と求人サイトで探した脳卒中関連のものが中心でした。専門性に直結する領域でのバイトを選ぶことで、経験と収入を同時に積み上げてきた感じです。

——3名のお話に共通するのは、常勤先を選ぶ際に今の収入だけでなく、将来のキャリアへの影響まで見据えているという点ですね。

チルチル:そうだと思います。初期研修先を選ぶ時点で、その先の進路まである程度イメージしておく。そして資格取得のために必要な認定施設を意識して働く。目の前の仕事に集中しながら、少し先の自分のキャリアも同時に設計していく感覚が大事なのかなと思います。

医師が休み方を設計する意義とポイント

——休みについては、どのように考えていますか?職場選びや働き方の設計で意識していることがあれば教えてください。

きすみ私が職場選びで最も重視していたのは「オンコールがない施設であること」でした。オンコールの問題は待機料の低さもありますが、それ以上に、突然呼ばれるリスクがあることで家族の予定が立てられなくなることの方が大きかった。子どもが3人いるので、それは絶対に避けたかった。その代わり当直には入っています。終わりが決まっているので、予定調整がしやすいんです。

現在は週4日常勤+バイトで実質的には週5日働いていますが、土日は子どもと過ごせています。緊急対応がほぼない病院なので、過去と比べるとゆとりのある働き方になっています。外科医としてはまだ若手なので働けるうちに稼いでおくつもりですが、家族との時間はきちんと確保できていて、今の形に満足しています。

robo:私は今も夜間や休日に関係なくがむしゃらに働いています。ただ若いころと違うのは、自分でペースを決められるようになり、本当に疲れたときには休める余裕が生まれた点です。
その理由としては、経験を積んできたことで仕事の見通しが立てやすくなったことに加え、今の職場では勤務量や働き方について、ある程度自分で調整しやすい環境があることが大きいと思います。以前は月の半分がオンコールで、時間的な制約がかなり大きかったのですが、現在はその頃と比べると、自分の体力や家庭の予定に合わせて働き方を組み立てやすくなりました。
今も仕事量としては決して少なくありませんが、休むときは休む、家族の大事な予定があるときは事前に調整する、というメリハリはつけられるようになっています。家族のイベントについても、運動会や学校行事など、大切なものにはできるだけ参加するようにしています。
休みを基準に職場を選んできたわけではありませんが、家族にとって大事な行事には必ず出ることだけは、自分の中で大切にしている軸です。家族も仕事の状況を理解して協力してくれているので、そのバランスの上で今の働き方が成り立っていると思います。

チルチル:私はADHD傾向があり、家でじっとしているよりも動いていたいタイプです。後期研修中はほぼ週7日働いていました。小児科以外のバイトにも積極的に入って、経験値と人脈を広げられたのはよかったと思っています。

ただ、子育てなどライフステージが変わっていくことを考えると、この働き方をずっと続けるのは難しいとも感じるようになりました。資産は貯まってきて心の余裕ができてきたなかで、仕事量をコントロールしながら、自分の本当にやりたいことは何なのか模索しています。

オンコールについては、前の勤務先では待機料すら出ておらず、実質ボランティアに近い状態でした。当直も宿直扱いで制度上は休憩扱いなのに実際にはかなりの救急対応をしていました。特にマイナー科は1病院あたりの人員が少なく、オンコールや休日当番の負担が集中しやすい構造になっています。たくさん働くこと自体はかまわないのですが、それがきちんと報われる仕組みになってほしいと切に願います。

——休み方も、その人のライフステージや価値観によってかなり変わってくるものですね。

チルチル:そうですね。休みの形は、自分が何を大切にしたいか、今どんなライフステージにいるかによって大きく変わると思います。「休みが多ければいい」という単純な話ではなく、自分の価値観とライフデザインから逆算して、能動的に設計していくものなのかなと感じています。

若手医師へのメッセージ

——最後に、これからキャリアを考えていく若手の先生方へメッセージをいただけますか?また、研修医のころの自分に一言アドバイスできるとしたら、何を伝えたいですか?

robo:働き方改革の影響で本業だけの収入は今後下がっていく可能性が高い。だからこそ、本業以外の副収入を持つことと、基礎的なマネーリテラシーを身につけることが非常に大切だと思います。

若い先生方には現在の環境をスタンダードとして継続していただきたい。そして研修医時代の自分に言えるとしたら、がむしゃらに働くことも大切だけれど、たまには休みを取り入れた方が、長い目で見て人生が豊かになると伝えたいですね。

きすみ:若手に伝えたいことは2つあります。

1つ目は「ワークライフバランスは実力で獲得するもの」ということです。働き方改革が進み、最初からワークライフバランスを重視する風潮があります。しかし、医師としての真の自由(働き方の選択、有利な転職、医療以外での人生の充実)は、若いうちにどれだけ本気で臨床に向き合い、泥臭く基礎力を鍛えてきたかにかかっています。確固たる臨床スキルという土台がないまま年次だけを重ねると、自分のキャリアを見直したいときに切れるカードがなく、選択肢が極端に狭まります。体力も吸収力もある20代〜30代前半のうちに、限界まで臨床に向き合う時期を作ることが、その後の自由につながると思っています。

2つ目は「情報の取捨選択能力を磨いてほしい」ということです。AIの進化やSNSの普及で、誰もが瞬時に最新の論文や手技のコツ、さまざまなキャリア論にアクセスできる時代になりました。
でもだからこそ、その情報の何が本質的で、今の患者に何が最適かを見極めるリテラシーが、以前にも増して重要になっています。SNSでバズる知識やAIの要約を鵜呑みにせず、一次情報に当たり、自分の頭で考え抜く。この情報取捨選択能力を意識的に鍛えてほしいと思います。

チルチル:AIの登場など、変化の激しい時代に長期的な正解はますます見えにくくなっています。どの診療科のどの技術がAIに取って代わられるかもわかりません。戦争も増え、いつまで平和な世の中が続くかもわかりません。だからこそ、まず自分が選んだ環境の中で目の前のことに真摯に取り組む姿勢が大切だと思います。

一方で、それだけに没頭しすぎず、教養を持って広い視野を保つことも同じくらい重要です。人生において、自分の価値観や判断の軸はあったほうが良いです。資本主義社会でお金が軸になる人もいるでしょうし、一方で自分がやりたいことが軸になる人、家族との時間が軸になる人もいると思います。どれが正解とかはないですが、正しい軸、価値観を持つためにも教養は必要であると思っています。

一言で言うなら、「今いる環境で精一杯楽しみながら取り組み、知的好奇心を忘れずにいこう」ということですね。

【後編まとめ】

後編では、常勤先・アルバイト先の選び方から、休み方の考え方、そして若手へのメッセージについて語り合いました。

職場選びにおいては、目先の条件だけでなく将来のキャリアへの影響まで見据えること、そして「休む」ことも自分の価値観とライフステージから逆算して能動的に設計することの大切さが語られました。若手へのメッセージとして共通していたのは、若いうちに臨床の土台をしっかり作ること、広い視野と情報リテラシーを磨くこと、そして本業以外にも収入の柱を早期から意識することの3点でした。

稼ぎ方も休み方も、「これが正解」という答えは一つではない。自分のライフステージや価値観、専門性と将来像を踏まえながら、その都度、自分なりの設計図を描いていく。令和を生きる医師たちの話から、そんなメッセージが伝わってきました。

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