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アラフォーから始める脱医局:「価値ゼロ」からのリスタート

更新日: 2025/06/09
アラフォーから始める脱医局:「価値ゼロ」からのリスタート

「そろそろ医局を辞めようかと思っている」——そう呟くアラフォー医師は、決して少なくありません。

知識欲と承認欲求を満たしながら走り続けてきた20代・30代。しかし40歳が見えてくる頃、多くの医師がふと立ち止まります。「このままでいいのか?」「自分のキャリア、この先どこへ向かうんだ?」と。10年先の自分の体力、家族構成が見えてきた時、多くの医師は「脱医局」を視野に入れます。
医局という組織の中で専門性を磨き、教育・診療・研究に全力を注いできた自負。しかし、「脱医局」を決意したその瞬間、自分の価値が思いがけず“ゼロ”にリセットされてしまうことに気づきます。

本記事では、私の実体験をもとに、退局の現実と再スタートに向けた準備の重要性について赤裸々にお伝えします。

平山傑
救急科専門医、指導医、整形外科専門医。大学で救急医療の最前線で戦っていたが、40歳で自分のキャリアチェンジを決意し「脱医局」。円満退局したが自分の自己評価と、市場価値のミスマッチに苦しむ。「脱医局」後自分の付加価値としてNotionとAIを医療へ普及することとして活動中。

医局キャリアの“限界”と自己満足の終焉

医局に属して10〜15年。専門分野の知識も経験も積み上がったころ、ふと感じる「学びの頭打ち」。
新しい論文を読んでも、「だいたい知っていること」が多くなる。臨床の現場でも、「次にやるべきこと」がすぐにわかる。学会に行っても10年前から大きな進化がなく、発表したい新しい学びはほとんどない。そんな“慣れ”が生じた瞬間、これまで燃えていた情熱に陰りが出始めます。

かつて自分を突き動かしていた「知識欲」と「使命感」は、いつの間にか惰性に変わり、承認欲求の対象も大学内・医局内という小さな世界に留まってしまいます。「このままでは、自分の成長が止まってしまうのではないか」という不安が、胸をよぎるようになります。

学びに刺激を感じられなくなった医師は、仕事が惰性になり、変化を嫌うようになります。新しいことにチャレンジすることのリスクから、知識のアップデートも疎かになり「リスクとなる自分の知らない疾患や患者」を診療できなくなってしまうのです。

さらに、元々知識欲や承認欲求が強い医師は、「別の対象への打ち込み」に走ることも少なくありません。ゴルフ、キャンプ、楽器、子どもの教育などにエネルギーを向け始めます。それ自体は悪いことではありませんが、それは「医師としての自己実現」に感じていた空白を埋めようとしている裏返しでもあるのではないでしょうか。

ついには、ここから先50歳、60歳になっても同じ仕事を続けることが体力的に不可能であることに気づきます。さらに決定打になるのが、医局内のポストです。医局の持っているポストは限られています。誰もが憧れる、「給与が高く、体力的な負担も少ない管理職のポスト」を手にすることができるかで、残りの20年の医者人生が変わってきます。医局に言われた通りの仕事をしてきたとしても、ポストの数を増やすことができない以上はあぶれる人間も出てくるのです。

10年先、そこが見えてくる40代、その時に「脱医局」を決意します。

 

「俺は通用する」はただの幻想だった

「脱医局」を考える医師の多くが抱く誤解。それは、「医局という制約から解き放たれれば、もっと自由に、もっと高く評価されて働けるはずだ」という期待です。
「患者は自分を慕ってくれているし、この地域でこの疾患は僕が一番知っている。医局を辞めても困らないだろう」と。

実際には、その“実績”は、医局という看板のもとに評価されていたにすぎません。看板がなくなった瞬間、自分が市場でどれだけ評価されるかという現実が突きつけられます。これは私の個人的な見解ですが、市場が必要としている医師は、専門を極めた治療成績の良い医師ではなく保険診療の上で病院でお金を確実に稼ぐ医師です。収益=客単価x人数、つまりたくさん外来をこなし、たくさん手術などの高額医療を実行し、たくさん入院を診る医師です。

私は医師15年目を過ぎたあたりで「脱医局」しました。救急の指導医で、研修医指導経験もあり救急、災害領域の知識も豊富で、組織マネージメントや多発外傷診療には自信がある。需要の高い救急の立ち上げと管理もできる医師!を自負していました。そして、「脱医局」直後の私は、意気揚々と医師転職サイトに登録し、オファーを待ったのです。

「きっとすぐに声がかかる」「自分の価値をわかってくれる病院が見つかる」そう信じていたのです。まったく良いオファーは来ませんでした。
「そんなはずはない、需要があるはず!」と、自分からエージェントに連絡を取り、プロフィールを提示しても、出てくる求人は「一般的な地方勤務の条件」「年齢相応の給料」。
どれだけ医局内で得られた実績があっても、それは市場の「ニーズ」と一致していなければ意味がないことを痛感させられました。

 

市場が医師に求めるのは“労働力”である

病院経営における医師とは、シンプルに言えば「お金を稼げる存在」であるかどうか。
患者数を多く診る、手術やカテをこなす、病院の“利益”に直結する行動ができる医師が求められます。つまり、「良い医者=収益を産む良いユニット」であることを求められるのです。

私が得意とする救急のマネジメントや教育ができることは、組織全体には意義がある。組織作りに組織作りに課題がある病院であれば、組織をつくること(マネジメント・教育)が結果的に収益に直結するため、高い年俸や特別待遇が提示されるケースも考えられます。一方、ある程度組織が完成している病院の場合は、「お金を稼げる存在」が重視されます。患者数を多く診る、手術やカテをこなすといった収益に直結する行動ができる医師が求められるのです。

医師個人が「これができるから、僕にはこれだけ払ってください」と言えるためには、その分野での明確な差別化と病院側のニーズが必要です。
「○○県で一番の○○の専門家」くらいでは、残念ながら医局という舞台を離れると価値は失われてしまうのです。あなたの代わりはいくらでもいることを再認識するのが「脱医局」の第一歩となります。

 

最後に頼れるのは“過去の人脈”

最終的に私の就職先となったのは、過去に一緒に仕事をしたことがある、副院長が在籍する病院。ちょうど、新たに救急を立ち上げたその先生に、私のほうから直接アプローチをかけました。「そちらの病院で働かせてください」と伝えました。この“コネ”は、今までの誠実な人間関係の積み重ねがあってこそ芽生えたものでした。

医局人事というのは、医局がその医師のクオリティを担保しているということです。医局の担保がなくなったら、あなたの診療や人柄を担保をするのは何でしょうか?私は、積み上げてきた人脈と、実行してきた事実を知っている人間が担保してくれると考えています。
雇う側の立場になって考えてみるのもいいでしょう。「○○の専門の先生」よりも「知っている先生」のほうが雇いやすいのは明白です。知らない人を高単価で雇いたいですか? 博打を打つくらいなら、知っている人を雇ったほうがいいですよね。
過去の人脈、今まで診療してきた態度、そういったものがまさに「脱医局」時の資産となります。

「昔、○○の専門で一番だったんだよね」
——それは、もう誰の心にも響かない。「中学で番長だった」ような話にすぎません。今、あなたを評価してくれる人は、医局と現在の職場にしかいない。
そのことに気づいた瞬間、自分の外側にいる“新しい評価者”に出会う準備を始めなければならないのです。

 

あなたの「今の肩書き」が消えたとき、残るものは何か?早く準備を始める

専門医も、指導医も、あなたの患者も医局の看板がなくなれば「他にもいる」程度の扱いになります。むしろ、場合によっては周囲から見れば「扱いづらそう」「理想が高そう」と思われるリスクすらあります。「脱医局」の瞬間に「何も準備していない」と詰むのは間違いありません。「脱医局」は、今すぐに実行しなくてもいい。しかし、10年先、15年先のあなたのキャリアを想像して、今から準備しておくことに損はありません。

だからこそ、「今の肩書がなくなったとき、自分に何が残るか?」という問いに、向き合っておく必要があるのです。最後に生きてくるのは”人”です。今まで出会ってきた人たちから新たな出会いと価値が生まれます。

「脱医局」を考えていなくとも、良好な人間関係を心がけておくこと、出会いを大切にすること、そして医療の収益構造を理解しておくことは非常に重要です。

 

「脱医局」を目指すあなたへのメッセージ

「脱医局」という選択は、「これまでの自分」を捨てることではありません。むしろ、それは「これからの自分を育て直す」ための挑戦です。

医局という強固なシステムは、確かに私たちを守ってくれました。専門性を磨く環境を提供し、上下関係やローテーションに従えばキャリアもある程度は保証される——その構造の中で、私たちは“優等生”として生きてきたはずです。

しかし、それゆえに気づきにくかったのは「その評価が、医局という“土台”ありきで成り立っていた」ことです。看板がなくなったとき、残るのは、どこに出しても恥ずかしくない「一人の医師」としての実力と人間性だけ。

市場はドライです。「どれだけの数患者を診られるか」「どれだけ収益に貢献できるか」「どれだけ周囲と協働できるか」。専門性も、指導歴も、熱意も、それが“外の世界”で言語化され、他者に届いて初めて評価の対象になります。「脱医局」を考えた時点から準備するのでは遅いのです。むしろ、今の肩書きがあるうちに、外の世界に自分をどう見せるかを考え、動くべき。

  • 過去の人脈は、将来の味方になってくれます。
  • 小さな登壇や地域連携の場でも、「顔を出す」ことが信頼構築に繋がります。
  • 医局という“温室”の外で、自分の力がどこまで通用するかを、少しずつ確かめておくことが鍵になります。

このまま医局内で教授にもならずに50歳、60歳と過ごしていくことが可能なのか。今から10年先の自分を見据えてみてはいかがでしょうか?
いつか「脱医局」を考えるのであれば、今のうちから「人間関係」「人間力」の準備をすることをお勧めします。

 

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