研修医といえば薄給のイメージを持つ方もいますが、2004年に新医師臨床研修制度が導入されて以降、その待遇が大きく改善されています。本記事では、初期研修医と後期研修医(専攻医)の平均年収の目安や、研修医の年収を構成する要素などを解説します。
医学部での6年間を過ごし、医師国家試験に合格して医師免許を手にすると、多くの人は研修医として医療機関で働き始めます。そこで気になるのが研修医の給料や平均年収です。医師といえば高収入のイメージが強いですが、研修医の場合、平均年収はどれくらいなのでしょうか。
本記事では研修医の平均年収やその内訳などを詳しく解説します。
研修医と聞くと「給料が低そう」「激務」といったイメージを持つ人もいるでしょう。実際に、かつての研修医といえば薄給のためアルバイトをして生計を立てるようなことも珍しくなかったようです。しかし、2004年に新医師臨床研修制度が導入され、厚生労働省は研修病院に対して補助金を出し、初期研修医が研修に集中できるよう、適正な給与の支給を求めました。これにより初期研修医のアルバイトが禁止されたと同時に、病院側は研修医を獲得するために給与の水準を高くするという流れが生まれたのです。
つまり現在の研修医を取り巻く環境は、かつての環境とは大きく異なるといえます。
次の項目では、実際に現在の研修医の平均年収を紹介します。
大学の医学部を卒業して医師国家試験に合格しても、すぐに医師として医療の最前線で活躍できるわけではありません。医師免許があっても、まずは医療機関で研修医として研修を受けることが必要です。
医師の研修は、前期研修(卒後1~2年目)と後期研修(卒後3~5年目)に分けられ、一般的に前期研修の間は研修医(初期研修医)、後期研修の間は専攻医(後期研修医)と呼ばれます。
厚生労働省の「臨床病院における研修医の処遇」によると、2011年度の初期研修医の推計年収(平均)は以下のようになっています。(※)
大学病院 | 臨床研修病院 | |
1年目 | 307万4,172円 | 451万339円 |
2年目 | 312万3,132円 | 502万1,376円 |
大学病院も臨床研修病院も1年目よりも2年目のほうが年収がアップしていますが、大学病院と臨床研修病院とでは平均年収に大きな差があることがわかるでしょう。
ただし、厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、大学院卒の賃金は平均で24万5,000円です。(※)これを単純計算で12カ月分とすると29万4,000円、2カ月分の賞与があった場合は14カ月で343万円なので、決して「研修医の給料は薄給である」とはいえないでしょう。
※出典:厚生労働省.「臨床病院における研修医の処遇」.https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vj46-att/2r9852000001vj7i.pdf,
(参照 2022-12-24)
※出典:厚生労働省.「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」.https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html,(参照 2022-12-24)
初期研修医と同様、後期研修医も研修先の病院から指導を受ける立場にあります。しかし、後期研修は厚生労働省によって明確に定められているものではなく、医療機関や各学会などの独自の制度や、慣習的な位置づけによるものです。
つまり、後期研修医とは臨床研修制度で定められている2年間の研修を終了した後の1~3年目(医師免許取得後3~5年目)にあたる医師を指すため、年収は初期研修医よりもアップします。
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」における「職種(小分類)、性、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」を見ると、1~4年目の医師の所定内給与額は平均529万8,000円、年間賞与その他特別賞与は500万6,000円となっています。(※)
なお、所定内給与額は、あらかじめ労働契約で定められている支給条件と算定方法に基づき支給される現金給与の金額のうち、超過労働給与額を差し引いた金額となり、年間賞与その他特別賞与は期末手当などの特別給与額です。いずれも所得税などの控除前の金額であり、経験年数も1~4年目のため、上記の金額は実際の後期研修医の平均年収とは差異があるでしょう。
しかし差異を差し引いても、初期研修医の年収からは大幅にアップしていると考えられます。また、詳しくは後ほど解説しますが、後期研修医の場合は副業が可能な場合もあり、副業で年収をアップさせることも可能です。
※出典:e-Stat.「令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」.https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001164106&tclass2=000001164107&tclass3=000001164111&tclass4val=0,(参照 2022-12-24)
研修医の年収の構成は主に「基本給」「当直手当」「賞与」の3つです。ここからはそれぞれの項目について解説します。
基本給は給与のうち諸手当を含まない金額のことで、勤務先によって異なります。一般的には学歴や年齢、勤続年数や役職などによって決められます。
これに対し給与は基本給に加えて、当直手当や時間外手当、通勤手当などの諸手当が含まれたものです。そして、手取り額とは、給与から健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料、源泉所得税、場合によっては財形貯蓄の積立金などを控除した額です。研修医2年目以降では、これらに加えて住民税も控除されます。
募集内容を見る際には、その金額が給与、基本給、手取り額のどれを指しているのかを確認しましょう。
当直とは、通常業務とは異なる定期的な巡回や、緊急時の対応をする業務のことを指し、労働基準監督署の許可が必要です。医療機関では医療法のもと原則として医師の当直が義務付けられているため、診療時間外にも医師が常駐する必要があるのです。
当直手当とは、この当直勤務を行った際に支払われる手当のことです。労働基準法では、当直手当は「宿日直手当」のことを指し、基本賃金の3分の1以上を最低基準として支払うことが義務付けられています。
また当直と似たようなものに夜勤がありますが、夜勤は通常業務のことです。一般的に、夜間に勤務する当直勤務は「宿直」、土・日・祝日などの診療時間外の日中に勤務する当直勤務は「日直」と呼ばれています。
いわゆる「ボーナス」にあたる賞与は、多くの医療機関では夏と冬の年2回、あるいはいずれかの1回で支払われています。「期末手当等特別給与額」と記載されていることもあるでしょう。ただし、賞与は基本給とは異なり必ず支払わなければならないものではないため、業績の悪化など何らかの理由により支払われなかったり、減額されたりすることもあります。
求人票や募集要項などに賞与に関する記載がある場合には、基本給がベースとなっているのか、給与がベースとなっているのかに注意する必要があります。例えば基本給が25万円で給与が30万円の場合「賞与4カ月分」という記載があっても、基本給ベースでは100万円、給与ベースでは120万円と差があるためです。
さらに、賞与はすべてが手取りになるのではなく、給与と同様に賞与からも健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料、源泉所得税が控除されます。
初期研修医として過ごす2年間は研修に専念するためにアルバイトが禁止されています。
一方、後期研修医では研修先の医療機関が副業を認めている場合につき、事前に副業申請を提出することでアルバイトが可能です。ただし、あるバイトといっても研修医の場合は別の医療期間で当直などを行う、いわゆる「外勤」を指します。研修医の中には医学部生時代に奨学金を利用していたという人も少なくなく、アルバイトをして研修医の間に奨学金を返済するケースも多く見られます。
また経済的な事情ではなく診療経験を積むことを目的として、研修先の医療機関とは異なる医療機関でアルバイトをする人もいるのです。なお、研修医のアルバイトには、大きく「スポットバイト」と「定期非常勤バイト」の2種類があります。
スポットバイトは、1日単位で勤務するアルバイトのことで、日給や時給で募集されていることが一般的です。スポットバイトは毎週決められた曜日や時間に勤務するのではなく、自分の都合に合わせて働く日を選べる点が魅力です。
多くの場合は書類選考のみとなるため、気軽にアルバイトができるというメリットがあります。即日給料を受け取れるケースも多いです。ただし、勤務先が固定されているわけではないため、場合によっては慣れない勤務先での勤務が続く可能性もあります。
定期非常勤バイトは、毎週や隔週など決まった曜日や時間に定期的に勤務をするアルバイトのことです。基本的に契約は数カ月~1年単位となり、毎回同じ職場で働くことができるため、安定した収入の確保や、一定のスキルが身につけられるといったメリットがあります。
一方、一度契約をすると希望する勤務日に調整することは容易ではないため、研修先の医療機関とのバランスをうまく取り続ける必要はあるでしょう。
研修医の給料や年収はかつてのように薄給ではないといえますが、研修先の医療機関によって年収には大きな差があります。研修先の医療機関を選ぶ際には、年収も考慮すべき点のひとつといえるでしょう。
また、後期研修医は研修先の医療機関が副業を認めていれば、ほかの医療機関でのアルバイトが可能です。収入の確保やスキルアップのためにも、時間や体力・気力に余裕があればアルバイトにもチャレンジしてみるとよいかもしれません。
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