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初期研修医がバーンアウトを避けるために:働き方改革時代の継続的キャリア構築

更新日: 2025/06/11
初期研修医がバーンアウトを避けるために:働き方改革時代の継続的キャリア構築
医師は多岐にわたる診療科や業務環境のなかで、高い責任と長時間労働を担いやすい職種です。特に初期研修医は、診療技術の習得や日常業務への適応など、負荷が大きくなりがちです。その結果、精神的・身体的疲労の蓄積によるバーンアウトが起こる可能性が高いと報告されています。そこで本記事では、医師として新人の時期を乗り越えるために押さえるべきバーンアウト回避のポイントと、働き方改革に適応した継続的なキャリアの築き方について考察します。
大村大輔
岡山大学病院総合内科・総合診療科講師、赤磐市国民健康保険佐伯北診療所所長。2014年、岡山大学医学部卒。2019年、同大学院卒。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医。現在は大学病院でコロナ後遺症外来を中心とした臨床・研究の傍ら、医学生・研修医に家庭医療について教育を行っている。また、国保診療所での所長を兼任し、地域での診療に携わっている。診療所での特徴的な活動は「無医地区防ぐ~地方の診療所~」としてRNC西日本放送news everyで放映された(Youtubeで視聴可能)。主な共著書に、『総合診療グリーンノート』(中外医学社)、『クロストークから始める総合診療』(金芳堂)などがある。

 

はじめに:初期研修医のバーンアウトリスク

初期研修医は、卒業後に初めて病院で勤務をすることになり、日々大量の業務と知識習得に迫られます。また、大学を卒業したばかりの段階で臨床業務に飛び込むため、慣れない環境や緊迫感の高い現場に直面しがちです。

スタッフからは新人として扱われる一方で、患者さんからは他の医師と変わらない立場で見られることもあり、他の職種よりも更に齟齬が生まれやすい立場にあります。厚生労働省の医師の働き方改革に関する報告でも、若手医師が長時間勤務や当直業務を担う実態が指摘されており[1]、そうした状況から睡眠不足や疲労感を訴える研修医が一定数に上る調査結果も存在します。さらに研修プログラム特有のローテーション制や当直勤務の多さが加わり、身体的だけでなく精神的にも負荷が高い環境と言えます。このような背景が、燃え尽き症候群(バーンアウト)の発生を促しやすいと考えられています。

バーンアウトは世界保健機関(WHO)の疾病分類(ICD-11)において、職業性ストレスによる症候群として位置づけられています[3]。具体的には、エネルギーの枯渇や過度の疲労感、仕事に対する否定的・シニカルな感情、専門能力の低下などが特徴とされます。一度バーンアウトが進行すると治癒までに時間を要し、場合によっては離職やキャリアチェンジを余儀なくされるリスクも無視できません。医師は他の職種と比べても責任感が重いことが多く、休暇取得や業務分担を遠慮する傾向があるとされているため、早めにリスクを認識し具体的な回避策を打つことが不可欠です。

 

初期研修医の負荷と働き方改革の現状

働き方改革の一環で医師の長時間労働を抑制するための規制が拡大しつつありますが、制度改正の初期段階では実務面での運用が施設ごとに十分整っていないケースもあります。研修医の勤務時間を削減しようとしても、病棟業務が分担できず従来通りの負荷がかかったり、学ぶ機会の確保や患者安全とのバランスが難航したりするなどの課題があります。

また、学会などでは、働き方改革により当直回数や残業時間の制限がかかった結果、夜間や休日に経験できる症例や手技の機会が減少し、研修医が十分な臨床経験を積みにくくなる可能性について指摘されています。多忙さが多少緩和される一方で、学習機会の不足が新たなストレス要因になり得るため、この点にも注意が必要です。

 

働き方改革時代における研修医の実態

長時間労働と学習機会のジレンマ

働き方改革では、医師の時間外労働に上限を設けたり、タスクシェアの促進を図るなどの制度的変更が進んでいます。これらは研修医にとって、過労死のリスクを減らすうえで大きな意味を持ちます。一方で、夜間や休日の当直機会が減ることで、症例数や手技経験の不足を懸念する声もあります。[2]。

こうした背景から、研修医が「むしろ当直を減らしたくない」と感じてしまうケースもあるようです。しかし無理を重ねれば、バーンアウトや離職へつながるリスクが高いことは否定できません。学習機会と休養のバランスをいかに調整するかは、初期研修医にとって非常に大きな課題と言えます。

タスクシェア・タスクシフトの浸透度

医療現場では看護師や薬剤師、事務スタッフなどの役割を拡充し、医師が担う業務を適切に分担しようとする取り組みが進められています。

日本医師会の調査(2021年)[2]でも、若手医師が過度に雑務を抱え込まないような体制作りの必要性が指摘されていますが、実際には人員不足や予算面の制約から十分に業務を分担できない病院も少なくありません。特に急性期病院では患者数の増加や医療の高度化に伴い、従来の人員配置だけでは追いつかない場面も多いのが現状です。理想としては各部門が連携し、研修医が学習と診療に集中できる体制が望ましいものの、実現には時間とコストがかかるため、途中段階で停滞してしまう施設もあります。

 

バーンアウト回避のための基礎対策

1,業務範囲の可視化と共有

研修医は多職種との連携が不十分なまま、特に雑務を抱え込みやすい傾向があります。医局や病棟チームで業務分担を明確に決める仕組みを導入しないと、研修医だけが過度な事務作業や検査予約を引き受けるリスクが高まります。業務量を可視化し、電子ツールなどで担当を共有することで、負荷の偏りを防ぐことができます。

2,早期相談とメンタルケアの体制づくり

医師のバーンアウトは、心療内科や精神科での治療を要するレベルに至ることもあります。初期段階でのストレスサイン(集中力の低下、食欲減退、睡眠障害など)を見逃さず、メンタルサポートの専門家や信頼できる上級医に相談することが大切です

3,タスクシフト・タスクシェアの活用

働き方改革とともに、医師が担っていた業務の一部を看護師や薬剤師、事務スタッフなどに分担する動きが拡大しつつあります。初期研修医が患者説明や書類作成などに過度な時間を割かざるを得ない状況は、学習や休息時間を奪う要因の一つです。

業務設計を見直し、専門スタッフに委譲できる部分は積極的にお願いするなど、システム面で整備を進めることで、研修医が本来の診療スキル習得に集中しやすくなり、バーンアウト抑制につながると考えられています。

4,オンとオフの明確な切り替え

適度な休息や趣味への時間投資は、精神的回復に有用です。週末や休日にアルバイト勤務をする専攻医も多いですが、過度に詰め込みすぎると疲労が蓄積してしまいます。

収入面とキャリア形成のバランスを考慮しながら、月に数日は完全オフを確保するなどの工夫が必要です。運動や読書、家族との時間などオフタイムを定期的に持つことでストレスを軽減できます。

5,キャリア選択の視野拡大

初期研修医の段階は、将来の専門科を選ぶうえでも重要な時期です。忙しさに追われながらも、自分の興味や適性を探る余裕をもつことが望ましいでしょう。

転職やキャリアチェンジも選択肢に含めることで、「道はいくつもある」という安心感を得られるかもしれません。

 

実践的なバーンアウト対策:エビデンスと事例拡充

近年の国内外の研究では、バーンアウト予防の要因として「職場内コミュニケーションの円滑化」「自己裁量権の拡大」「サポート体制の充実」などが重視される傾向にあります。たとえば、研修医自身が当直表の作成や研修カリキュラムの調整にある程度関与できるよう配慮された病院では、バーンアウトの訴えが減少したという報告もあります。

海外の大学病院などでは「ウェルビーイング担当部署」を設置し、研修医の定期面談や疲労状態のモニタリングを行う事例が増えています。特にアメリカの一部施設では、上級医や専任スタッフが早期介入することで研修医のうつ病発症率が軽減したという研究結果もあり、メンタルケアの充実とバーンアウト対策の関連性が再確認されています[4][5][6]。

 

働き方改革下での学習機会確保

働き方改革は医師の残業時間を削減する一方で、研修医が実臨床の場に触れる機会が減るリスクも指摘されています。そのため、一部の病院ではシミュレーション教育を拡充し、手技や緊急対応をトレーニングシミュレーターで反復学習できるように工夫しています。これにより夜間や休日の当直が減少しても一定の技能を習得しやすくなる効果が期待されます。[7][8]

また、在宅医療や地域医療を学ぶ機会を研修プログラムに組み込むなど、多面的な教育ルートを提供している病院もあります。多忙な研修医こそ視野が狭くなりがちですが、働き方改革を逆手に取り、従来の病棟業務だけでなく多様な現場を経験しておくことは、将来の専門分野選択にも大いに役立つでしょう。

 

バーンアウト防止と継続的キャリアの両立

初期研修医の時期は、医師人生における重要な基盤となるステージです。長時間労働や不規則勤務、習得すべき知識や手技の多さなど、バーンアウトリスクを高める要因は多岐にわたります。しかし、タスクシフトやメンタルケア体制の整備、オンオフのメリハリなどを意識的に実践することで、燃え尽き症候群を未然に防ぐことは十分可能です。

さらに、働き方改革の過渡期にある今だからこそ、研修医自身が柔軟に情報収集を行い、早期から多様な働き方を理解しておく意義は大きいと言えます。将来的に専門科を決定する際にも、バーンアウト防止と学習機会の両立を視野に入れることで、より長く医療に携わり続けるための道が開けるでしょう。制度や病院環境が完璧になるのを待つのではなく、一人ひとりができる対策を講じることで、健全で持続可能なキャリア形成が可能となります。

【参考文献】

  1. 厚生労働省. 「医師の働き方改革に関する検討会 報告書 」 平成31年3月28日https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_469190.html
  2. 日本医師会. 「勤務医の健康の現状と支援のあり方に関する アンケート調査報告書」令和4年6月 日本医師会 医師の働き方検討委員会
    https://www.med.or.jp/dl-med/kinmu/202206kinmuikenko.pdf
  3. Bull World Health Organ. 2023 Oct 4;101(11):743–745.”Examining the evidence base for burnout”
  4. Lancet. 2016 Nov 5;388(10057):2272-2281.
  5. Mayo Clin Proc. 2017 Jan;92(1):129-146.
  6. JAMA. 2015 Dec 8;314(22):2373-83.
  7. Teach Learn Med. 2005;17(3):202–8
  8. Med Educ. 2010;44(1):50-63.

 

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