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診療科/業務内容

診療科を変える?転科経験者からみた今後の医師キャリア

更新日: 2025/06/11
診療科を変える?転科経験者からみた今後の医師キャリア
日本においては、診療科目の選択や転科は医師の自由です。医師は初期〜後期研修中に専門とする診療科目を決め、医局へ入局したり、医局以外の環境でのトレーニングを開始したりします。従来では多くの医師がおおむね最初の選択に沿ったキャリアを歩んでいましたが、最近では医師のキャリアがどんどん多様化しています。新たな診療科目にチャレンジした経験から、今後の医師キャリアについて再考します。
長田和義(消化器内科医)
初期研修後に、地方国立大学の消化器内科医局に入局した。関連病院で研鑽して専門医および学位を取得した後、卒後13年目で退局した。実家のクリニックが肛門外科を専門としており、同院を継承するために、現在は肛門外科の専門病院で手術を含めたトレーニングを行っている。医療系ライターとしても活動し、そのほか医療ないし地域社会に関わる複数のコミュニティやベンチャー企業などへも参画している。3児の父。

 

日本の診療科目選択や専門医について

まず、我が国の診療科および専門医の現状について解説します。

診療科の選択

日本においては、2年間の初期研修を修了することでその後も保険診療を行うことが可能となり、そのうえでどの診療科に従事するか、またそれを変更することも医師の自由となっています。

専門分野と専門医資格

専門医資格は従来各学会が独自に設定し運用されていましたが、現在では2014年に設立された日本専門医機構のもと、専門医取得のためのカリキュラムや更新条件などが整備され、専門医と呼ばれるものの統一性や質の担保などが図られています。

専門医資格を取る前のいわゆる修練医や、ベテランの医師でも専門医資格を有していない場合もあるため、専門医資格がなかったとしてもその分野に従事していれば、『〇〇科医』と称して診療を行っているのが現状です。

Generalistとspecialist

最近では、総合診療医や家庭医といったいわゆる『generalist』を志す医師が増えているといわれています。しかし、これまでは大学医局を中心に各臓器別・分野別のいわゆる『specialist』を養成することに偏重していたため、日本においては各領域専門コース上の『〇〇科医』が多いです。

総合診療や家庭医療においてもそれぞれ専門医の資格があるため少しややこしいですが、国際的には総合診療医/家庭医≒かかりつけ医と専門医が明確に区別されている場合も多いです。このため、日本においては前述のように、generalistとspecialistという言い方で区別する方がわかりやすいかもしれません。

 

医師キャリアの多様化

コロナ禍を経て、気が付くと医師のキャリアはどんどん多様化しています。

従来型の医局キャリアからの変化

私が大学を卒業したころからしばらくは、臨床研修修了後にどこかの医局に入局するのが当たり前でした。医局で『〇〇科医』として修練をし、専門医資格を取得していきながらその診療科のキャリアを上っていくことが一般的です。その過程で、同じ診療科の中でもさらに専門的な領域に細分化されていくことも多いです。

もちろんそのころにも入局しない医師は一定数いましたし、入局したとしても全員がずっとその医局で勤務医としてのキャリアを積むわけではありません。

しかしながら、昨今では徐々に医局の入局者が減少したり退局する医師が増加する傾向にあったところ、とくにコロナ禍を経てそれが加速しているという話を、随所で聞かれます。

もちろん、医局以外でも一定規模以上の医療機関やグループであれば、十分幅広い経験を積むことが可能です。医局やそれに準ずる環境にて、総合診療医/家庭医や各領域ごとの専門医として十分な研鑽を積み専門医資格も取得していっているのであればよいでしょうが、実際はそういった医師ばかりではないようです。

医師の病院離れが加速している

『直美(ちょくび)』という言葉に代表されるように、医師として十分な経験がないまま美容医療や心療内科クリニックを開業したり雇われたりする若手医師が、急増していることが知られています。またそれだけではなく、10年前後以上保険医療の分野で従事してきた医師が、待遇面など様々な事情で保険医療を離れ、自由診療の分野へ転科する事例も増加しています。

さらに、最近ではコンサル会社などの企業に転職したり、自身で起業する医師も増えています。
保険医療の領域であったとしても、やはり勤務医の待遇の悪さや自由度の低さなどから、30-40代と比較的若いうちに開業するケースも増加しています。また、クリニックに雇われて勤務する医師も増加傾向のようです。

このように、ここ5-10年で医師のキャリアはまさしく『多様化』しており、かつどんどん加速しているように感じられます。

 

私の選択:内科医から外科医への挑戦

さてここで、私の経験についてお話させていただきます。

消化器内科+肛門外科という選択

私は出身の地方国立大学の消化器内科医局へ入局し、消化器内科医として働きながら専門医資格や学位を取得しました。卒後13年目からは医局を退局し、消化器内科医としての診療も行っていますが、肛門外科医の修練を行っているところです。

外科医が外科領域の中で専門を変えたり、手術から離れて内科領域を含めたかかりつけ医として働いたり、訪問診療、化学療法、緩和医療などを行っていることは多いでしょうが、内科医から外科の仕事をやるようになる例は、比較的少ないかと思います。

キャリアのハンドルを切った理由とその後

なぜ私がこのようにまったく異なる仕事をするようになったかというと、実家のクリニックが肛門外科と内視鏡をやっており、クリニックをいまの診療内容のまま継承するという選択をしたからです。もちろん消化器内科としてのみ継承するという選択肢もありましたが、地域のニーズや事業の安定性などを勘案し、新たなスキルを習得して引き継ぐことを決めました。

当然ながら何かと不出来であり、自身がストレスフルなだけではなく周囲にも多大なご迷惑をおかけしていることと思いますが、なんとかコミュニケーションを取りながら、いまいちど修練医としての日々を過ごしています。

転科を経験して感じること

キャリアをどう選択していくかは様々かと思いますが、まずはなぜそうするのかということを、自分自身とできれば家族の中で、腹落ちしていることが重要だと思います。
しかしながら、たとえ納得のうえでもそれまで慣れ親しんだ環境から離れるということから、おそらく多くの方が壁にぶち当たるでしょう。

診療科が異なれば、仕事内容だけではなくそこに集まっている人たちの性格や文化のようなものがまったく異なり、改めて郷に従うことが必要となります。自身が培った知識や経験があまり通用しない状況であれば、そのこと自体もストレスが大きいでしょう。また私のように子どもが複数人もいれば、家事育児のため若い研修医や修練医のような働き方は難しく、さらには年齢的に物覚えも悪くなっていたりします。

転科で最も重要なのは「コミュニケーション」

私自身、家庭内や新しい職場におけるコミュニケーションが不十分だったことにより、余計な苦労をしたり迷惑をかけてしまったということが何度もあります。一方で、相手にも心の余裕がなかったり、そもそもの考え方の違いが大きかったりすると、必ずしも自分の気持ちを素直に伝えられないことがあるのも現実です。

スキルの習得が第一の目的であったとしても、やはりコミュニケーションが最も重要、かつ最も難しいということを日々実感しています。相手や周囲の環境をよく観察しながら、主体的にコミュニケーションを取っていく必要があるといえます。
また当然ながら、むやみに既存の人ややり方を否定したり批判することは避けるべきでしょう。

新しい環境においては、まずは自分の経歴や性格、またどのくらいの期間勤めて何を行っていきたいのかなどを、周囲にわかってもらうことが重要です。このように自己開示、あるいは親睦を深めて仕事をしやすくするということも、私は飲み会を通してやってきたところがあるのですが、コロナ禍を経て職場の飲み会が激減している中、難しくなってきているなと感じています。

そのような環境下で私が必要だと考えていることは、先達の医師らに対してはもちろんのこと、ほかのスタッフをリスペクトし、常に優しく謙虚な言葉遣いと態度で接することです。スタッフや患者さんにあえて敬語を使わないこともちょこちょこありますが、基本的には年下であろうと敬語で話します。もちろん笑顔と挨拶がとても重要です。それぞれのスタッフがいかに貢献したり苦労しているかを理解し、機会ごとに共感や感謝を伝えます。また、数少ない公式のイベントには必ず参加し、ときどき医師以外のスタッフとも飲みに行ったりしています。
ただでさえ教えを乞うて後から入ってきた人間が、横柄であったり攻撃的であったり、そこまでいかなくてもgoing my wayすぎるとなれば、いくら医師としてのキャリアがあっても歓迎はされないでしょう。自分の出来がただでさえ悪い中において、相談しやすく働きやすい関係性を作るためには、このようなことが重要だと思います。

 

今後の医療業界と医師キャリアについて

社会全体が加速度的に変化し、先が見通せない『VUCAの時代』といわれている中で、医療業界も大きな変化の最中にいます。

Specialistは過剰?

ここでは語りつくせませんが、医療費削減の必要性や医療機関の経営難、働き方改革を含めた人材不足などから、今後は医療機関の統廃合や倒産による医療の集約化と機能分化がさらに進むと考えられています。分散化していたspecialistも集約化されることで、単一の〇〇科医として働ける人も限られてくるかもしれません。

そもそも日本にはgeneralistが不足しており、やっとその必要性が認知されてきました。さらにAIの発達により、とくに手技のない内科系領域については、かなりの部分をAIでサポートないし代替できる可能性が考えられます。

あくまで私見になりますが、皆が単一のspecialistコースを歩みながら、〇〇科医という立場にいればよいという時代は終わったと思います。臨床という観点では、今後は他者やAIに代替されないspecialistとして競争していくか、そのほかはgeneralist、あるいは転科などを経て複数の武器を持ち広く診療にあたる医師が求められていると思います。

変化しなければ生き残れない

さらに、医療に関わる制度や社会環境の変化に柔軟に対応できる必要があります。経営や医療経済については大学や臨床現場では教えてもらえないので、独自に学び、常にアンテナを張っておきたいところです。また、AIを診療や経営に活用することは大前提です。

診療報酬の抑制、インフレ、働き方改革などから医師としての収入増加を期待することは難しい一方で、医師の資格や経験は医療現場以外に活かすことができるものです。本業に固執せずに、ほかのやりがいや繋がり、収入源を求めることを真剣に考えるとよいでしょう。

私自身も医療関係に限らず複数のコミュニティに所属しており、そこで得られた繋がりから様々な実体験や価値観に触れ、自身のキャリアをマネージメントするに当たって大いに参考となっています。ときには、具体的な仕事や活動への参加機会を得ることもあります。また、書籍やインターネットなどから幅広い情報を日々取りながら、将来的な事業の構想をしています。

Comfort zoneからの脱出を!

少し探してみれば、オンラインでもオフラインでもいろんな機会が溢れています。全員がいきなり働き方や居場所を大きく変える必要はないと思いますが、まずは少しずつでよいので、慣れ親しんだ居心地のよい世界(comfort zone)から一歩踏み出していくことをおすすめします。

ただ、そうはいっても身近にロールモデルやアドバイザーがいないなど、キャリアのことを考えるにあたって困ることは多々あるのではないでしょうか。MRTは単純な求人の紹介だけではなく、まずは今回の記事のように色んなキャリアを歩んだ医師の実例を知ったり、専門のコンサルタントによるサポートを受けたりなど、幅広く活用できる相談相手です。身近な人ほど本音で話せない場合や考えが偏っている場合もあるため、第三者として気軽に相談してみてください。

 

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