医師は給与水準が高い職業ですが、その分支払う税金が多いことも確かです。そのため、節税対策を行わないと損をする可能性があります。本記事では、医師におすすめの4つの節税方法を紹介します。一つひとつ詳細に見ていくため、自分に最適な方法を見つけて有効な対策を講じていきましょう。
毎月の給与明細を見て、税金控除額の多さにため息が出てしまう人も少なくないでしょう。しかし勤務医として働く場合でも節税対策を講じることが可能です。
本記事では医師に最適な節税対策を紹介します。少しでも税金の負担を軽くするために、ぜひご一読ください。
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医療機関に勤める医師は、開業医とは違い税法上では給与所得者に分類されます。しかし日本は累進課税制度によって所得税が決まるため、医師のように給与水準が高い職業の方は多くの税金を納めなくてはなりません。
ただし業務に関連する支出などがあった場合は、確定申告により還付を受けられるケースもあります。医師にとって有効な節税対策は主に以下の4つです。
特定支出控除とは給与所得者のみに適用されるもので、医師のように経費が多い職業において支出の一部を経費として計上することが可能です。
特定支出控除額は、「特定支出額-給与所得控除額×0.5」で計算します。特定支出控除の一例は以下のとおりです。
通勤費 | 通勤にかかる費用(公共交通機関以外にも、ガソリン代や高速道路料金も含まれる) |
転居費 | 転居にかかる費用 |
研修費 | 業務に直接関わる研修に参加する場合などにかかる費用 |
資格取得費 | 業務に直接関わる資格を取得する場合などにかかる費用 |
勤務必要費 | 衣服や接待など、職務上必要な交際費など(上限65万円) |
なお特定支出控除を受けるためには、支出を証明する明細書・領収書、源泉徴収票などが必要となります。
特定支出控除は2012年度、2016年度の改正によって適用範囲が拡大されました。これによって従来よりも活用しやすい制度となっています。一方、申請には明細書や領収書といった書類に加えて勤務先の押印がある証明書が必要なため、少額の申請だと煩わしく感じてしまうかもしれません。
勤務先から副業の許可を得ており、執筆や講演などの副業で収入を得ている場合はプライベートカンパニーの設立がおすすめです。2019年4月以降に会社を設立した法人の場合、法人税は所得額の15~23.2%と、課せられる税率が低くなっています。
ただし以下のような注意点もあるので確認しておきましょう。
プライベートカンパニーを設立して法人化することで経費として認められるのは、以下のようなものです。
従業員に支払う給与は経費として認められるため、節税効果が期待できます。さらに家族を従業員にして所得を分散することで、より節税が可能です。
自分に万が一のことがあった場合、財産を子どもや配偶者などの遺族に相続可能ですが、その際には相続税が発生してしまいます。相続税対策のひとつとして暦年贈与を行うケースがあります。暦年贈与は年間の贈与額は上限110万円まで非課税になりますが、贈与方法や期間によっては贈与対象になるため注意しましょう。
プライベートカンパニーの設立も相続税対策としても活用可能です。プライベートカンパニーの資産を株式として相続することで、株の相続税に関する特例が適用され、相続税対策となります。
プライベートカンパニーを設立するには初期費用が必要です。さらに税金や決算などについての専門的な知識や、従業員を雇う場合は労務についての知識も必要です。これらの知識は税理士や社労士に委託することでカバーできますが、顧問料が発生してしまいます。
所得が高い医師の中には、不動産投資によって節税対策するケースもあります。不動産購入には費用がかかりますが、物件購入費は減価償却費として経費計上できるうえに資産を形成できるという特徴が挙げられます。一般的に、減価償却費を計上している間は不動産所得が赤字となるため、給与所得と相殺することで節税になる仕組みです。
また不動産投資は相続税対策の効果も期待できます。安く購入した物件を高値で取引して利益を得るケースもあるので、不動産投資は節税対策以上のメリットを得られる可能性があります。
不動産投資を生命保険の代わりにするという考え方もあるようです。不動産を購入するにあたってローンを組んだ場合、団体信用生命保険に加入することで、もしローン契約者が亡くなったり生活に支障が出る高度障害状態になったりすると、ローンの残債が完済できるためです。残された家族はローンを支払わずに家賃収入を得ることが可能で、生命保険の死亡保障の代わりになるという考え方です。
プライベートカンパニーと同様に、不動産投資も節税対策として活用可能です。例えば6,000万円を現金として相続した場合は、相続した6,000万円に相続税が発生します。一方、6,000万円で購入した不動産を相続する場合は、不動産の固定資産評価額に基づいて相続税が発生するため、現金で相続するよりも相続税を抑えられる可能性があります。ただし相続税は現金で支払う必要があるため、不動産など現金ではないものを相続する場合は、相続税分の現金を用意しなければならない点を注意しましょう。
不動産投資を始めるにあたってローンを組んだ場合、高いレバレッジ効果が得られます。レバレッジ効果とは少額の資金で高い資産を得ることを指します。例えば自己資金が600万円の場合、ローンを活用しなければ600万円の不動産しか購入できません。対してローンを活用することで借入者によっては自己資金の10倍ほどの不動産も購入できるケースもあります。
FXもレバレッジを利かせることができますが、値動きが激しくリスクが高くなってしまいます。一方、不動産投資であれば満室になるよう運用できれば、安定して収入が得られるでしょう。
不動産投資では空室や家賃未払いといったリスクが発生する可能性があります。医師として勤務しながらこのようなリスクに対応するのは困難であるため、管理会社などへの依頼を検討してみましょう。ただし、管理会社に依頼した場合は管理手数料が発生します。
参考サイト:サラリーマン投資家の不動産投資ブログ
iDeCo(個人型確定拠出年金)は加入資格に応じた金額を毎月掛金として積み立て、運用を商品を選び資産運用していく私的年金です。毎月積み立てられる掛金は勤務医か開業医かで次のとおり異なります。
ただし勤務先は勤務先が掛金を積み立てる企業DC(企業型確定拠出年金)に加入しているか、DB(確定給付企業年金)に加入しているか、どちらも加入しているかで掛金が変動します。
iDeCOの特徴は掛金が全額所得控除されるという点です。そのため、掛金が多いほど節税効果が期待できます。
iDeCoで運用する商品は金融機関によって異なりますが、主に定期預金、保険といった元本確保型と国内株式型、国内債券型などの投資信託に分けられます。元本確保型の商品は、満期まで保有すれば基本的には元本が割れることはありません。そのため、節税しながら安定して老後に向けた資産形成が可能です。
iDeCoは年金制度のひとつであるため、原則60歳を迎えるまで掛金は引き出せません。マイホーム購入の頭金や子どもの教育資金としての活用など、60歳までにまとまった資金が必要となった場合でもiDeCoからは引き出せません。
基礎控除は医師に限らず、所得が発生しているすべての人に適用され、以下のように所得金額によって変動する仕組みです。(※)
合計所得金額 | 基礎控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万超え、2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万超え、2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超え | なし |
また給与所得控除は、給与収入金額から必要経費に相当する金額を控除します。(※)
給与収入金額 | 給与所得控除 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円~1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円~3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円~6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円~8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
上記の控除以外にも、同居する家族の収入などによっては配偶者控除・配偶者特別控除や扶養控除を受けられる場合があります。また以下内容の控除の対象となる可能性があるのできちんと確認しましょう。
※出典:国税庁.「所得税のしくみ」.https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_1.htm?_fsi=khG5N1Se
※出典:国税庁.「給与所得控除」.https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm?_fsi=khG5N1Se
配偶者控除は、配偶者が年間の合計所得金額が基礎控除48万円以下をはじめとした一定の条件を満たしている場合に適用される控除です。また配偶者特別控除は配偶者控除の対象にならない配偶者がいる場合に、納税者が一定の条件を満たしていると適用されます。控除額は配偶者の所得と納税者の所得によって異なります。
扶養控除とは配偶者以外の家族を扶養している場合に適用される控除です。扶養控除の対象は納税者の扶養親族で年間の合計所得金額が48万円以下などの条件があります。(※)控除額は扶養家族の年齢、同居の有無によって異なります。
※出典:国税庁.「No.1180 扶養控除」.https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
社会保険料控除によって健康保険、国民年金、国民年金基金などの社会保険料が控除されます。控除される金額はその年に支払った金額もしくは、給与や公的年金から差し引かれた金額です。
自分で加入している生命保険や個人年金の掛け金も控除可能です。控除される金額は払い込んだ金額に応じて変わります。なお生命保険料控除には保険会社が発行する生命保険料控除証明書が必要です。
火災保険の特約である地震保険も控除の対象となります。控除額はその年に支払った保険料によって変わります。なお地震保険料控除の対象となるのは、自宅や家族の住居を対象とした地震保険のみです。
1年間に発生した医療費も控除の対象です。医療費控除の対象は通院や入院はもちろん、処方された薬代も含まれます。また医療費控除は条件を満たせば家族のために支払った医療費も控除対象となります。
医療費控除の特例としてセルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)が2017年1月からスタートしています。この制度では対象となる医薬品を薬局で年間1万2,000円以上購入した場合に、健康診査の受診やワクチンの接種など一定の条件を満たすことで控除を受けられます。購入するのが税制の対象となる医薬であれば、品自分のためではなく、生計をともにする配偶者や親族であっても控除可能です。
ただし、通常の医療費控除を受けるとセルフメディケーション税制は適用されません。
寄付金控除とはふるさと納税に代表されるように、自治体や国、団体に寄付した金額が控除対象となります。寄付金控除の額は次のいずれかの低い金額から2,000円を引いたものです。(※)
※出典:国税庁.「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」.https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1150.htm.
住宅ローンを組んでいる場合も控除されます。住宅ローン控除は2022年の税制改正によって概要が変更になり、2022年以降の住宅ローン控除が適用される場合は、年末のローン残高の0.7%が最長13年間、控除されます。(※)
※出典:国土交通省.「住宅ローン減税」. https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000017.html.
所得税は超過累進課税制度を用いて計算するため、所得の増加部分に高い税率が課せられます。医師は比較的高所得であるため節税対策を講じることで大きな効果が期待できます。
また不動産投資のように節税しながら資産形成をすることもメリットのひとつです。医師は勤務医であれば厚生年金、開業したのであれば国民年金に加入します。そのため、当初想定している年金受給額よりも低くなってしまうケースがあります。このような状況に対応するためにも、節税をしながら資産形成をすることが大切です。
つみたてNISAは少額から投資できる制度です。つみたてNISAは投資で得た運用益が非課税となるだけで、iDecoのように、投資する金額が所得税、住民税の控除対象になるわけではありません。しかし、つみたてNISAであれば少額で投資がはじめられるうえにいつでも引き出せるため、学会への参加や医局費などの出費に対してもすぐに対応できます。
医師は給与水準が高い分、税金で損をしてしまう可能性があります。本記事で紹介した、「特定支出控除」「プライベートカンパニーの設立」「不動産投資」といった節税対策をとっていくことをおすすめします。
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