医局を辞める際、自分の都合や考えだけで退局の意思を伝えると思わぬトラブルになることがあるので注意が必要です。本記事では、医局を辞める際の手順やタイミングを解説します。スムーズな退局を希望する方は、ぜひご一読ください。
医局の退局を考える際、できるだけスムーズに辞めたいと考えるのは自然なことです。しかし、医局によっては慢性的な人手不足などの理由でなかなか思うように辞められないケースもあるでしょう。
本記事では、医局を円満に辞める手順やタイミングを紹介します。少しの気遣いや伝え方でスムーズな退局につながるので、ぜひ参考にしてください。
医局を円満に辞める際に気をつけるべきポイントとして以下の9つ紹介します。
退局の意思の伝え方から引継ぎまで、医局を円満に辞めるためのポイントを押さえておきましょう。
退局の意思を伝える順序は以下のとおりです。
うっかり職場の同僚などに相談するとうわさが広まり、教授や医局長の耳に入ることもあります。退局の意思を人づてに知ることをあまりよく思わない人もいるので、伝える順序には十分注意しましょう。
退局の理由というと、激務でつらい、給料が安いなど、ついネガティブになりがちです。もちろん、それが本心なら仕方ありませんが理由がそれだけだと辞めにくくなる可能性があります。なぜなら、辞めたい理由を改善できれば辞めなくて済むと考えられてしまうからです。実際に勤務の負担を軽減するため異動になり、辞められなくなったケースもあるようです。
そこで、辞める際には前向きな理由も加えるとスムーズな退局につながります。「辞めても仕方ない」と納得してもらうことが大切です。
具体的には以下のような理由が挙げられます。
結婚や出産を控えていることを理由に退局を伝えるケースがあります。この際、ただその旨を伝えるだけでは、業務量の負担を条件に慰留されてしまうかもしれません。そのため、慰留をされないためにもはっきりと退局の意思を伝えるようにしましょう。
クリニックを開業することも退局の理由として挙げられます。医局を円満に辞めることで、患者さんを紹介してもらえる可能性もあるため、クリニックを開業するのであれば、円満に退局することをより一層心がけましょう。
転科することで医局との関係は希薄になります。退局しても科が変わらない限り、学会などで顔を合わせる機会があります。一方、転科することで医局との関わりがなくなるでしょう。このような点から、転科は医局での人間関係に息苦しさを感じている場合の対処法として、適しているといえます。
家族が経営している医院を継ぐことは珍しい話ではありません。そのため、実家のクリニックを継ぐという理由での退局は、医局側にも理解してもらいやすいでしょう。
スムーズに退局するためには辞める旨を断言しましょう。「辞めようか迷っている」のような曖昧な表現にすると引き止められて辞めにくくなります。辞めたいというしっかりとした意思がある場合は、「辞めます」「次の勤務先が決まりました」のように、退局を認めざるを得ない状況を作ることが大切です。
相談として退局したいことを伝えると慰留される可能性が高いため、しっかりと意思を伝えましょう。
過去に医局を辞めた医師の意見や実体験を参考にすることも、円満に医局を辞めるためのポイントです。一概に医局といっても、所属している医局ごとに実態は異なります。そのため、自分が所属している医局を過去に辞めた医師の情報や、医師本人から意見を聞くなどして、円満に辞めるための参考としましょう。
一般的な転職活動において、転職先を決めてから退職の旨を会社に伝えるケースがあります。医局を辞める際も同様で、転職先を決めたうえで退局を伝えましょう。医局を辞めることが決まってから転職先を探すとなると、転職先探しにじっくりと時間を使えない可能性があります。
退局の意向を伝えても、なかなか話が進まない状況もあり得ます。これは教授をはじめ医局側からすると、医師の退局はメリットにならないため、話が進展しないことが原因と考えられます。このような状況では話が一向に進みません。自分から退局までの道筋をつけていくことが大切です。
退局について不安があるのであれば、転職先へも相談しておきましょう。例えば医局の都合で退局時期が延びる可能性も予想されます。そのような際は転職先に相談しておくことで転職時期を調整可能です。
また退局の進捗(しんちょく)が芳しくない場合に、転職先の病院にアドバイスを求めることができるかもしれません。その際には転職先に不信感を与えないためにも、相談内容の伝え方には注意が必要です。
円満に医局を辞めるなら年度末の3月がよいでしょう。なぜなら、この時期は医局に人が増えるタイミングだからです。明らかに人員が少ない時期に辞めるのは波風が立ちやすく、業務にも支障が出る可能性があるのでおすすめできません。
次に医局長などに報告するタイミングです。通常の企業では退職の1カ月前までに報告するのが一般的ですが、医局の場合はそれでは遅すぎます。
次年度の医局の人事が決まるのは秋頃です。そのため、それまでには退局の意思を伝え、人事などに影響が出ないよう配慮しましょう。つまり、遅くても退局の半年前までに、可能であれば1年前に報告するのが理想的です。
退局を申し出てから退局するまで、任された仕事はしっかりとこなす必要があります。特に退局しても支障がないように、引継ぎ業務は入念に行いましょう。
また、それまでお世話になった人に対しては直接お礼を伝えることで円満な退局につながります。
医局を辞めるタイミングは医師によって異なりますが、一般的に次のとおりの勤続年数がひとつの区切りになると考えられています。
勤続3年目はまだ大きなポジションや役割を任されていないケースが多いため、比較的退局しやすいタイミングといえます。勤続3年から5年を過ぎた頃には、重要な役割やポジションに就くことも考えられるため、退局にあたって引き止めにあう可能性が高まるでしょう。
勤続6年目の時点で考えられるのが、専門医の資格を有している可能性が高いという点です。専門医の資格は取得するには研修期間も必要なため、勤続5年ほどかかるのが一般的です。勤続6年目で専門医の資格を有しているのであれば、転職の際に有利に働くでしょう。そのため専門医の資格を有している場合は、勤続6年目は退局のひとつのタイミングといえます。
勤続11年目になると、臨床知識が豊富になってきているうえに、人によっては部長のようにマネジメントを担う重要なポジションに就いている可能性があります。マネジメント経験は高く評価されるため、転職活動において有利に働くでしょう。
医局を辞めるにあたって退局することのメリット・デメリットも確認しておくことが大切です。退局を申し出たあとに撤回をすると、その後の信頼にも関わってきてしまう恐れがあります。また医局を辞めるかどうかを悩んでいる場合も同様に、退局によって発生するメリットやデメリットを理解する必要があります。
医局を辞めることで、勤務条件や待遇といった働き方や、キャリアを自分で決められるようになります。例えば患者数の少ない病院に勤務したい、子育てと両立するために勤務時間を変更したいといった希望をかなえやすくなるでしょう。
医局に在籍していると関連する病院への転勤を命じられることがあります。通勤範囲内であれば問題ないですが、転勤先が遠方になると引っ越さなければならなくなります。そのため医局を退局することで、勤務地が安定した状況で働ける可能性が高くなるでしょう。
2007年に厚生労働省が「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を策定したことを受けて、現代では仕事と生活(プライベート)の調和が取れたワーク・ライフ・バランスの実現が求められています。一方、医局に勤務していると、休日出勤や当直などがあるため、プライベートとの両立が難しい傾向があります。そのため退局することでワーク・ライフ・バランスを実現できる可能性があるのです。転職先によっては当直や休日出勤がなく、プライベートの充実が図れるでしょう。
大学病院は一般的に給与が低いとされていますが、退局して転職することで年収が上がる可能性があります。医局を辞めて年収を上げるためには、専門性など自分の強みを伝えるようにしましょう。
医局に所属していると医師同士の競争をはじめ、人間関係に悩まされることがあります。医局を退局することで、このような医局内の人間関係の煩わしさから解放されるでしょう。
医局を辞めるデメリットとして、学位や専門医の取得、基礎研究や留学、人的交流を通した経験値の向上の機会損失が挙げられます。
そのため、専門性を高めたかったり研究を続けたいと考えているのであれば、医局に所属しておくほうがよいでしょう。例えば大学病院や関連する病院の場合、新しい医療設備が整っている傾向があるため、新しい情報に触れやすい環境といえます。一方、民間病院やクリニックは勉強会やセミナーに参加するなど、自ら新たな技術や知識に触れる機会を設ける必要があります。
退局することで臨床経験は増える分、研究に割く時間が減ってしまいます。そのため、学会で自分の研究結果を発表したいと考えている場合は、退局がデメリットとして働いてしまうかもしれません。
医局のメリットとして、医局員との交流によって人脈が広がるという点が挙げられます。医局には同年代の医師はもちろん教授も在籍しているため、幅広い人脈からさまざまな情報を得られるでしょう。
専門医の資格がないことを理由に、なかなか医局を辞められないという人もいるかもしれません。確かに、医局にいれば論文に必要な症例が集めやすいなど、専門医の取得には都合がよいでしょう。
しかし、医局を辞めたからといって専門医を取得できないわけではありません。場合によってはプログラムを変更して研修を継続できることもあるので、まずは専門医を取得するための要件などについて確認しておきましょう。
医局を辞めた医師は、医局に所属している時よりも積極的に情報収集をして研鑽を積むことを心がけましょう。医局に在籍していた時には、幅広い人脈や設備からさまざまな情報や技術を得られていたのに対して、医局を辞めてしまうと自分から積極的に動かなないと情報が入りづらくなってしまいます。
医局を辞めるのであれば、これまでに知り合った医師をはじめ、さまざまな人との交流を通じて情報を収集し、医師としてのスキルを高めていくようにしましょう。
医局を辞めることを考える際の参考として、医局に所属しない医師は一定数いることを理解しておきましょう。厚生労働省が行った「令和2年臨床研修修了者アンケート調査」によれば、臨床研修後に医局に入局しないと答えた医師の数は全体の11.8%となっています。(※)
また、同調査の前年に行われた調査によれば、大学病院以外の病院で勤務を希望する医師のうち、26.8%が入局しないと回答しています。(※)
※出典:厚生労働省.「令和2年臨床研修修了者アンケート調査結果概要」.https://www.mhlw.go.jp/content/001000358.pdf
※出典:厚生労働省.「平成31年臨床研修修了者アンケート調査結果概要」.
https://www.mhlw.go.jp/content/000744938.pdf
医局を辞める際は、辞め方やタイミングが大切です。スムーズな退局を望む方は、辞めても仕方ないと思ってもらえるように、退局理由や申し出のタイミングの見極めが必要といえます。ただし医局を辞める前に、退局することのメリットやデメリットを一度考えておくことも大切です。
退局の意思を固めたのであれば、同時に転職先も早めに検討しましょう。医局を含め医師は3月末に退職することが多いので、4月入社の求人は通常秋頃から増えてきます。
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