近年注目が集まっている医師と弁護士のダブルライセンスのメリットや、難易度の違い、働き方などについてご紹介します。どちらも超難関の資格ですが、ダブルライセンスを取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。キャリアアップのためにダブルライセンス取得を検討している方はぜひご覧ください。
ダブルライセンスとは、直訳どおり2つの資格を持つことを意味しています。医師の場合は、医師免許ともうひとつの資格を取得することを指しますが、近年注目されているのが医師と弁護士のダブルライセンスです。
そこで本記事では、医師免許と弁護士資格のダブルライセンスについてまとめました。医師と弁護士のダブルライセンスのメリット、試験の受験資格や難易度の違い、働き方などもご紹介します。医師+αの能力をつけたいと考えている方は参考にしてみてください。
ダブルライセンスとは、1人で2つの資格を持っていることを意味します。複数資格を持つことをダブルライセンスということもありますが、3つの場合はトリプルライセンスと呼ばれるのが一般的です。
ダブルライセンスは取得する資格の組み合わせが重要です。本業に関連する資格や、2つの資格を組み合わせることでうまく活用できる資格を取得すれば、活躍の場が広がります。さらにキャリアアップにもつながります。
医師と弁護士のダブルライセンスは、医師免許と弁護士資格の2つを取得していることを指します。どちらの資格も一般的にゴールドライセンスと呼ばれ、数ある資格の中でもかなり難易度が高いと言われる資格です。また、弁護士資格は、公認会計士、不動産鑑定士と並び、日本三大国家資格とされています。
難易度が非常に高い2つの資格を取得するためには、かなりの努力が必要です。学ぶべきことも多岐にわたるため、膨大な時間を勉強に費やさなくてはなりません。また、どちらの免許も受験資格があるため、医師と弁護士のダブルライセンスを目指すためには、それぞれの受験資格を満たす必要があります。
相当な努力をしなければ取得できない医師と弁護士のダブルライセンスですが、両方を取得するとどのようなメリットがあるのでしょうか。医師が弁護士資格を取得するメリット、弁護士が医師免許を取得するメリットをご紹介します。
医師が弁護士資格を取得するメリットは、患者との間に起きたトラブルや、労使問題などに法律の知識を活用できることです。
人の命を左右する医師は、どれだけ気をつけて日々の診察・治療・手術を行っていても、訴訟リスクと背中合わせです。弁護士資格を取得して法律の知識があったとしてても避けられない訴訟もありますが、法律に関する知識が自分自身や同僚を救うかもしれません。
また近年大きな問題となっているのがモンスターペイシェントです。モンスターペイシェントとは理不尽なクレーム、要求、暴言、暴力、医療費の未払いなどの問題行動を起こす患者を指します。医師法第19条で「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と定められており、これを応召義務と言います。(※)この応召義務があるために、モンスターペイシェントへの対応に苦慮している医師も多いでしょう。
法律の知識があれば、モンスターペイシェントとの間に起きているトラブルが、診療・治療を拒否する正当な事由かどうか正しく判断することができます。雇用主との間に生じる労使問題に関しても、法律の知識を活かして対処できるため、不当な待遇や処遇、退職トラブルなどを避けられる可能性があります。
※出典:厚生労働省「医師の応召義務について」.
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000357058.pdf
弁護士が医師免許を取得すると、医療紛争において医療の知識を活かすことができます。医療紛争を担当する際には、病院側・患者側どちらの弁護をするとしても、医学的見地を活かせるでしょう。医療紛争に強いことは弁護士としての強いアピールポイントです。医療紛争以外でも、扱う事件の内容によっては医学の知識が役立つケースが少なくありません。
多くの病院やクリニックや医療法人は顧問弁護士と契約しています。さまざまなトラブルが発生し、大きな問題になりかねない医療機関において、弁護士の存在は必要不可欠です。弁護士が医師免許を取得していれば、アドバイスする際に医学の知識を活かせるため、医療機関の顧問弁護士として働くことができるかもしれません。
医師免許取得を通して医療現場の実情に詳しくなるため、病院に弁護を依頼された場合でも、スムーズなやりとりができます。
医師国家試験と司法試験は、それぞれ受験資格が定められています。ダブルライセンスを目指すなら、それぞれの受験資格を把握しておきましょう。
医師免許の取得を目指して医師国家試験を受験するためには、まず日本で大学の医学部に入学する必要があります。医学部課程6年を修了すると、医師国家試験の受験が可能です。
この条件を満たしていない場合、医師国家試験予備試験を受験して合格すれば医師国家試験の受験資格が得られます。ただ、医師国家試験予備試験を受験する場合も、海外の医学校を卒業している人、海外で医師免許を取得した人などの条件があります。
なお医師国家試験に合格して医師として働くためには、免許取得後に2年間、研修医として臨床研修を受けなければなりません。
弁護士資格取得を目指して司法試験を受験するための受験資格を得る方法は、大きく分けて2つあります。
一つは日本の法科大学院を卒業し、2〜3年の課程を修了する方法です。修了すると、司法試験を受験できます。
もう一つは、司法試験予備試験に合格する方法です。司法試験予備試験は、医師国家試験予備試験のような受験資格が設定されていません。法学部以外に在籍している学生はもちろん、高校生でも受験できます。司法試験予備試験に合格すれば、法科大学院の全課程を修了した人と同レベルの知識があるとみなされ、司法試験を受験できます。
ちなみに弁護士資格を取得するためには、司法試験合格後に1年間司法修習を受けなければなりません。司法修習が終了して初めて弁護士資格が取得できます。
どちらもゴールドライセンスと呼ばれ、超難関資格とされている医師と弁護士です。では、どちらの方が難易度が高いのでしょうか。それぞれの試験の合格率・受験までのハードル・勉強時間から、難易度を考えてみます。
医師国家試験と司法試験の2021年から5年間の合格率を見てみましょう。
医師国家試験 | 司法試験 | |
2021年 | 91.4% | 41.5% |
2020年 | 92.1% | 39.2% |
2019年 | 89.0% | 33.6% |
2018年 | 90.1% | 29.1% |
2017年 | 88.7% | 25.9% |
合格率は医師国家試験が80%後半~90%前半と高い割合であるのに対し、司法試験は20%台から40%台とかなり低い割合であることがわかります。単純に合格率だけを見てみると、難易度が高いのは弁護士といえるでしょう。
ただ、超難関資格と呼ばれるのに医師国家試験の合格率が高いのは、受験資格を得るために通わなければならない医学部のカリキュラムが大きく影響しています。医学部は医師国家試験突破を目的としたカリキュラムになっているため、医学部の課程を修了すれば、合格のために必要な知識を身につけることができるのです。
前述したとおり、医師国家資格にも司法試験にも受験資格があります。
この受験資格を取得するまでのハードルは、医学部に入学し、6年の課程を終了しなければならない医師の方が高いといえます。医学部は学費も高いので、金銭的な負担も大きくなります。
司法試験は司法試験予備試験に合格すれば、法科大学院に通わなくても受験可能です。予備試験は受験料が17,500円で、これに合格すれば進学の費用も必要ありません。これらのことから、受験までのハードルは医師の方が高いと考えられています。
一般的に、医師になるために必要な勉強時間は医学部に入学するためには約5,000時間が必要と言われています。また、医学部入学後は最低でも入学までと同程度の時間を費やす必要があり、合計で約10,000時間の勉強時間が必要でしょう。
一方、弁護士になるためには、約3,000~8,000時間の勉強時間を確保しなければならないと言われています。中には10,000時間を費やす人もいるようです。予備試験の受験資格がなく、誰もが受験できるため、どのようなルートで弁護士を目指すかで必要な勉強時間は大きく変わってきます。
勉強時間に関しては個人差が大きく影響するため、一概にどちらの方が難易度が高いとは言えません。
医師と弁護士のダブルライセンスを目指す場合、どちらの資格から先に取得するべきなのでしょうか。どちらを本業にするかや、現時点でどの学部に在籍しているかによって変わってきますが、医師免許から取得するのがおすすめです。
医師免許を取得するためには、医学部で6年の課程を修了しなければいけません。弁護士資格を取得した後に医学部に通う場合、通いながら弁護士として働くことはほぼ不可能です。
また、弁護士資格は司法試験予備試験に合格すれば、法科大学院に通う必要はありません。そのため、医学部で学びながら司法試験予備試験合格のための勉強を同時に行うことも可能です。もちろん医学部で学びながら、法学を学ぶのはかなり難易度が高いですが、先に弁護士資格を取得して医学部に入り直すよりは、現実的だといえるでしょう。
医師と弁護士のダブルライセンスを目指している方にとっては「どちらの仕事を本業にした方が年収が高いのか」という点も気になるところではないでしょうか。
厚生労働省が実施した令和3年賃金構造基本統計調査によると、医師の平均年収は1,378.3万円でした。一方、弁護士の平均年収は945万3万円です。(※)
ただし日弁連が行った調査によると、2020年度の弁護士の平均年収は2,558万円、平均所得が1,206万円となっています。(※)個人事業主が多い弁護士は収入から経費を差し引いた所得が給与の代わりのようなものと考えられます。
単純比較はできませんが、どちらも収入が高いことには違いがありません。
※出典:e-stat.「令和3年賃金構造基本統計調査」.https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001164106&tclass2=000001164107&tclass3=000001164111&tclass4val=0
※出典:日弁連.「近年の弁護士の活動実態について」.https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2021/toku-1.pdf
医師と弁護士のダブルライセンスを仕事に活かすなら、医師として働くよりも弁護士として働く方がその知識や能力を活かせます。医師が弁護士資格を持っていても、実際の治療や手術に法学の知識は必要ありません。患者や雇用主・従業員とのトラブルに法律の知識を活かせますが、医師としての評価が上がるというわけではありません。
一方、弁護士が医師免許を持っていると、医療紛争やさまざまな裁判で医学の知識が活かせる可能性があります。病院の顧問弁護士として活躍できる可能性もあり、医学知識を持つことが弁護士としてのアピールポイントとなるはずです。
医師と弁護士のダブルライセンスを持つ人は数十名程度ともいわれていますが、中には医師と弁護士を両立して働いている人もいるようです。医師として働きながら弁護士として裁判に立つのは並大抵のことではありませんが、どちらの資格も最大限活かしたいなら、両立するのもひとつの方法です。
医師・弁護士のダブルライセンス取得を目指すなら、まずは医師免許を取得した後に弁護士資格を取得するのがおすすめです。かなりの努力が必要ですが、ダブルライセンスを達成すればどちらを本業にしても知識が活かせる可能性があります。興味がある方は、双方の資格取得までのプラン作りから始めてみましょう。
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