医師が退職する際には半年前ごろから退職の意思を伝えておきましょう。後任者や患者さんのためにも丁寧な引継ぎが求められます。円満に退職できるよう退職の理由として不平や不満を挙げるといったことは避けましょう。
退職する際は順を追って手続きをしていく必要があります。これは一般企業に限らず医師の退職でも同様です。退職時のトラブルを避けるために、マナーに従って手続きを進めていきましょう。
この記事では医師の退職に必要な手続きや流れについて解説します。
退職の意思を固めたら、職場に退職する旨を伝える必要があります。
民法では雇用期間に定めがない場合は、退職の2週間前までに職場に口頭もしくは文面で退職の旨を伝えることで退職が認められるとしています。(※)しかし、引き継ぎをはじめとして、トラブルを起こさないためにも余裕をもって退職の意思を伝えることが大切です。
また、退職の意思を伝えるタイミングは医局に所属しているかどうかで異なります。
医局に所属している場合は、まず医局に退職の意思を伝えます。医局から勤務先の医療機関に打診し、正式に退職が決まれば医師自らが人事担当者に退職について伝えるという流れです。退職日は後任者が着任する日に合わせて決まります。
医局に所属しているケースだと、医局から医療機関へ打診をするための時間が必要ですので、退職までの期間が長くなる可能性があります。遅くとも半年前までに退職の意思を伝えておきましょう。
医局に所属していないのであれば、退職を希望している日の半年前から3カ月前には上司もしくは人事担当者に退職の意思を伝えましょう。ただし、退職希望日に必ず退職できるわけではありません。職場の状況によっては退職日の変更を打診される可能性があります。具体的な退職日は職場と話し合って決めましょう。
クリニックの常勤医が退職を希望する場合は、遅くとも退職希望日の3カ月前には伝えるようにしましょう。ただし、クリニックの規模によっては退職されてしまうことで人手不足に陥ってしまうケースもあります。
退職を希望するクリニックの常勤医はクリニック側としっかりと話し合って退職日を決めましょう。話し合いの際は退職後のビジョンなどを具体的に伝えることで、退職日の調整がスムーズにいく可能性があります。
退職の意思を伝えた結果、引き留められることがあります。引き留める手段として給与のアップといった条件を提示されても、転職先が決まっている場合は固辞しましょう。
また、転職先が決まっていないとしても環境を変えてキャリアアップしたいと考えているのであれば、はっきりと断ることが大切です。
退職が決まったら退職届が必要になるのが一般的です。しかし、医局に所属している場合は、人事でローテーションが組まれていれば退職届が不要なこともあります。職場の事務担当者に退職届が必要かどうかを確認しましょう。
一方、医局に所属していない場合は退職届の有無は勤務先によって異なります。勤務先に退職届が必要かどうかを確認しましょう。もし退職届が必要であれば、届けの書式もあわせて確認するのがおすすめです。また、退職届の提出先も上司や人事部など勤務先によって異なりますのでしっかり確認しておきましょう。
退職届と似た言葉に退職願があります。両者の違いは提出するタイミングです。退職届は退職が決まったあとで勤務先に提出する書類であるのに対し、退職願は退職を願い出るタイミングで提出する書類です。つまり、退職の意思を伝える際に退職届を提出するのは誤りですので注意しましょう。
退職にあたっては自分が携わっていた業務を後任者へ引き継ぐ準備が必要です。
医局に所属していない場合は、引継書を用意しておきましょう。退職日までにすべての業務を引き継げるようにするため、これまでの業務を洗い出し漏れなく引き継げるようにしておきます。引き継ぎ内容を整理する際は、どこまで引き継ぎが終わっているかが分かるようなチェックシートを用意することで共有漏れを防げます。
一方、医局に所属している場合は後任者と連絡が取りやすいことから、引継書を用意することは基本的にはありません。
引き継ぎは後任者が業務しやすくなるだけではなく、患者さんのためにも重要です。例えば、長期入院している患者さんを主治医として担当しているのであれば、患者さんの情報を引き継ぐことが必要です。
円満に退職するためには引き継ぎ業務が欠かせません。丁寧に取り組むようにしましょう。
医師に限らず退職が近づいたら、お世話になったスタッフに退職の挨拶をするのが一般的です。円満に退職するためにも退職日の数日前からスタッフに挨拶をしていきましょう。
ただし、交替勤務制の医療機関では退職日当日に会えないスタッフがいる可能性もあります。シフト表を確認して各スタッフと一緒に勤務する最後の日に退職の旨を伝えるのがおすすめです。
お世話になったスタッフ以外にも、患者さんへ挨拶をすることもあります。入院患者さんを担当している場合、患者さんはもちろん、患者さんのご家族にも退職と後任に滞りなく引き継いだ旨を伝えることで、患者さんたちに安心してもらえるでしょう。
退職当日は健康保険被健康保険者証に加えて、次のような返却物を忘れずに持っていきましょう。
一方、勤務先からは以下のような書類を受け取ります。
雇用保険被保険者証は、雇用保険加入者を証明する証書で転職先に提出します。同様に源泉徴収票も転職先に提出する書類です。源泉徴収票は開業医やフリーランスを選択した場合であっても確定申告に必要になります。退職証明書は開業医やフリーランスとして、医師国民健康保険組合もしくは国民健康保険、国民年金に加入する際に提出を求められることがあります。
上記の書類以外に、後日離職票が郵送されてきます。また、年金手帳を受け取る場合もあるでしょう。
離職票は転職先が決まっているのであれば不要ですが、転職先が決まっておらず失業手当を受け取る際には必要です。離職票は退職日から2週間を目安に届くのが一般的でしょう。2週間を過ぎても届かない場合は以前の勤務先に確認が必要です。
以前の勤務先に連絡しても手元に届かない場合、ハローワークに相談してみましょう。
年金手帳はすべてのケースで返送されるわけではありません。場合によっては、すでに手元にある可能性も考えられます。厚生年金に加入する際、被保険者資格取得届に基礎年金番号を記入しなければならないため、年金手帳を勤務先に預けることがあります。その後、そのまま勤務先が保管している場合は退職時に返却されます。
退職にあたって返却する備品を探していたら、紛失してしまっていたということがあるかもしれません。備品を紛失してしまったら、上司や備品の担当者に報告しましょう。勤務先から支給されていた携帯電話やパソコンなどを紛失してしまったら、損害賠償が発生してしまうかもしれません。備品紛失時の対応は就業規則に従って行われるのが一般的です。
円滑に退職するためには、勤務先へも配慮し、余裕をもって意思表示することが大切です。意思表示のタイミング以外にも円滑に退職するために避けるべき行動があります。
退職の意思を告げると退職の理由を聞かれるのが一般的です。退職の理由は自分のキャリアアップといったポジティブなことを伝えるようにしましょう。たとえ勤務先に不平や不満があっても、そのまま伝えてしまうと退職を認めてくれないといったトラブルにつながりかねません。
退職について上司や担当者に切り出すと、後日話し合いの場を設けることを提案されるかもしれません。このように話し合いの機会を引き延ばしていくと、退職のタイミングがずるずると延びてしまいます。
そのため、なるべく話し合いの日程を引き延ばさないようにすることが大切です。もしやむを得ない事情で話し合いの機会を後日設けるのであれば、いつ行うかを明確に決めておく必要があります。
転職活動中であれば、応募先は今の職場の関係者に伝えないようにしましょう。退職について快く思っていない人による嫌がらせにあってしまうかもしれません。また、転職先が決まっても退職直前まで伝えないのが一般的です。
退職について引き留められた際にあいまいな返答は避けましょう。あいまいな返答をしてしまうと、それを理由に退職の意思を曲げたと勘違いされてしまうかもしれません。あいまいな返答はせずにはっきりと退職の意思を通す姿勢が求められます。
医師が退職するには、半年前といった早い段階から退職の意思を伝えておくことが大切です。そして、退職が決まったら後任者や患者さんのためにも丁寧な引き継ぎを心がけましょう。円満に退職するためには、余裕をもって退職の意思を伝え、また、退職理由はポジティブなものにしましょう。
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