病理医とは、Doctor of Doctors(医師のための医師)や医療現場における縁の下の力持ちとも称されており臨床現場に欠かせない存在です。一般的には広く知られていない病理医の存在ですが、病理医なしには患者が適切な治療を受けることができません。本記事では病理医の概要や年収、仕事内容、やりがい、病理医に向いている人の特徴などを解説します。
病理医とは病理診断を行う医師のことです。患者から採取した組織や細胞を分析し、疾患の確定診断を行います。例えばがん患者の場合、手術の執刀医だけでなく病理医が正確な疾患の診断を行うことで、適切な治療方針を固めることができます。
場合によっては、他の医師が診断した結果の誤診を指摘することもあるため、Doctor of Doctors(医師のための医師)と呼ばれます。病理医は病理診断科もしくは病理科に所属します。
病理医は患者の疾患を確定するために欠かせない存在ですが、これまでは患者と接することは認められていませんでした。これは病理が診療科として認められていなかったためです。
ただ、2008年に医療法が改正され、病理診療科が診療科目として認められたほか、2010年には保険点数も認められるようになりました。そのため現在では、病理医も直接患者に対応できるようになっています。(※)
患者との接触が可能になったことで、一般的にも病理医の存在が知られてきています。また、病理医が携わる業務範囲も従来より幅広くなりました。
病理医の年収事情について見ていきましょう。
病理医の年収相場は、常勤の場合で1,000万円〜1,500万円といわれており、病理医の求人情報を見てみると2,000万円を超える求人もあります。また日本病理学会が作成した「目指せ病理医!」では、臨床医と比較して給与が低いことはないと紹介されています。(※1)
厚生労働省が実施した令和3年賃金構造基本統計調査によると、病院の規模ごとの医師全体の平均年収は以下のとおりでした。(※)
これは、きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与そのほか特別給与額によって算出された数値です。規模によって幅がありますが、病理医の年収相場は医師の平均年収と大きな差がないことがわかります。
どのような働き方をするかにもよりますが、一般的な医師の平均年収前後の収入は目指せるでしょう。
病理医も他の診療科と同じように、専門医制度が導入されている領域です。日本病理学会が示す病理医の本業は、病理解剖(剖検)、組織診断(生検および手術材料)、細胞診断の3つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
病理解剖は、亡くなった患者の死因を特定し、病態の解析や実施した治療の効果などを検証するために行われるものです。検証の結果は今後の医療に生かされます。
組織診断は、子宮粘膜の表面や乳腺近くの病変部など、疾患の状態を判定するために必要な細胞を採取して検査することです。病変部からの組織片採取を生検、手術で切除された腫瘍などを手術材料と呼びます。この作業を行うことで、患者の病状がどの程度進行しているのかを検証します。
また組織診断には手術中に行われる術中迅速診断も含まれています。手術中に採取した組織を短時間で病理診断し、手術方針を決定するためのものです。
細胞診断は、子宮粘膜の表面から細胞を採取したり乳腺近くの病変部から注射器を使って細胞を採取して検査することです。この細胞診断は、細胞検査士と日本臨床細胞学会認定の専門技師の共同で診断が行われます。診断の結果、判断が難しい場合はコンサルテーションシステムといって、臓器別専門病理医に標本を共有してアドバイスをもらうケースもあります。
日本病理学会は病理解剖(剖検)、組織診断(生検および手術材料)、細胞診断を本業としてあげていますが、病理医の仕事はこれだけではありません。
それぞれの臨床科と合同でカンファレンスを実施し、病理の見地から見解を述べることも重要な仕事です。院内で医療安全検討会の一員となり、意見を述べることもあります。医療法が改正されて患者に接することができるようになってからは、主治医の立ち会いのもと、病理医が直接患者に診断の説明を行うケースも増えてきました。
これまでの病理データを用いて、研究を行うのも病理医の仕事です。また、病理研修を開始した医師や日本病理学会で研究発表する医学生に対する指導など、これから病理の領域で活躍する人材の教育を行うことも病理医の重要な仕事になります。
縁の下の力持ちとして、患者の治療をサポートする病理医のやりがいについて解説します。病理医は自分自身が直接治療や執刀をしなくても、自分が行った検証や診断が患者の利益につながったときにやりがいを感じる方が多くいます。
具体的には、自分が下した診断によって患者に適切な治療ができたときや、その患者が完治したときにやりがいを感じることが多いようです。自分の診断によって、治療方針が大幅に変更になった場合にやりがいを感じる方もいます。また、病理診断でまだ発見されていなかった全身疾患を推定できたときにやりがいを感じることもあるようです。
病理医として特定の領域に深い知識を持つようになれば、診断技術の向上や新しい治療法の確立に携わる可能性もあります。医療の発展に貢献して、多くの人の未来を支えることにやりがいを感じることもあるでしょう。
疾患の正確な診断を行う病理医ですが、病理医として活躍している医師の数は決して多くありません。
令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況によると、病理診断科に従事する医師数は2,120人で、医師全体の0.65%にあたります。病理医の大半は病院に勤務している医師で、診療所で勤務する医師はわずか47人しかいません。(※)
重要な役目を担う病理医ですが、病理医の数は不足しており、売り手市場になっています。
ちなみに病院で働く病理医の男女割合は男性が68.3%、女性が31.7%です。診療所で働く病理医の男女割合にいたっては、男性が78.7%、女性が21.3%となっており、圧倒的に男性の数が多くなっています。
また、平均年齢は病院勤務の病理医が49.0歳、診療所勤務の病理医が66.6歳のため、医師全体の平均年齢は病院が45.1歳、診療所が60.2歳ですので平均よりも若干高年齢化しているといえるでしょう。
病理医は診療や手術で患者と向き合うわけではありませんが、患者が適切な治療をするために欠かせない仕事です。また、病理解剖や専門性を高めて新しい治療法の確立に携わることは、未来の医療を支えることにつながります。売り手市場で活躍できる現場も豊富なため、医師としてのキャリアプランに悩んでいるのなら、病理医を視野に入れてみることもおすすめです。
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