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医師が開業するまでの流れとは?スケジュールや手順、やるべきことを解説

更新日: 2023/11/14
医師が開業するまでの流れとは?スケジュールや手順、やるべきことを解説
クリニックや医院の開業には1年半~2年程度の時間がかかります。準備期間中は資金調達、物件選定、人材採用など、経営や会計に関わる業務も必要です。個人での対応が難しい場合は開業支援サービスも活用するとよいでしょう。医師の開業までの流れを解説します。

医師がクリニックや医院を開業するときは、資金調達に人材採用、行政手続きなど、さまざまな業務を同時並行でこなさなければいけません。専門知識が必要な業務もあるため、個人のみでの対応が難しいときは開業支援サービスを活用するとよいでしょう。

本記事では、医師が開業するまでの流れとポイントを解説します。

 

医師の開業までの流れやスケジュール

医師が開業をする際は、まず開業コンセプトと事業計画の策定からスタートし、開業地の選定、資金調達、内装業者や医療機器の選定、スタッフの採用などをスケジュールに沿ってすすめていきます。

新規開業までの期間は規模や地域、物件などにより異なるものの、一般的には1年半~2年程度です。戸建てで新たにクリニックを建設する場合、土地探しが難航すればさらに時間がかかることもあります。

テナントなど、ある程度開業地の目途が立っている場合でも、半年~9カ月程度は準備期間として見込んでおきましょう。

開業までのおおまかなスケジュール

開業までのおおまかなスケジュールは以下のとおりです。どのようなことが必要なのか確認し、事前に計画を立てることが大切です。

開業までの月数 準備項目
~12カ月前 開業コンセプト、事業計画の策定
~8カ月前 開業地の選定、資金調達
~4カ月前 内装業者、医療機器の選定
~3カ月前 スタッフの採用、広告作成
~1カ月前 届出手続き

特に、開業前に行う開業コンセプト策定は今後のクリニックの方向性を決定づける重要なものです。土地を探したり、資金調達をしたりする前に決定しておいた方がよいでしょう。

コンセプトが決まれば、そのコンセプトを実現するための経営戦略を立てていきます。まずはどのような医院やクリニックにしたいかを明確にしましょう。

次から、医師が開業までに行う業務を詳しく解説します。

開業コンセプトを策定する

今後の医院の指標となる開業コンセプト(診療方針・経営基本計画)を策定します。

開業コンセプトを考える際は、どのようなクリニックにしたいのか、以下のポイントを基に掘り下げて考えるとよいでしょう。

  • どのような患者を診療するのか(ファミリー層、40代男性など)
  • どのような診療をするのか(一般外来、健康診断、予防接種など)
  • どのような診療はしないのか(オペは対応しない、など)

特に「何をしないか」を掘り下げることは、診療内容を決定することと同様に重要です。しないことを明確にすれば、必要な設備・クリニックに必要な面積・人員などもおのずと決まってきます。

開業コンセプトからさらに掘り下げる

ある程度開業コンセプトがまとまれば、以下のように内容を掘り下げて、具体的に決定していきます。

  • 診療内容
  • 開業時期
  • クリニック
  • 標榜科目
  • 診療時間
  • 休診日

このとき、一日当たりの患者受け入れ人数や希望年収なども数字で定めましょう。

なお、コンセプトの決定に迷った際は、先に開業している医師に相談したり、コンサルタントなどの専門家に相談したりするのもおすすめです。

 

開業地を選定する

開業地の選定は特に重要です。開業場所を間違えると「誰にどのような診療を提供するか」というコンセプト自体が実現できなくなります。

開業地選びに失敗したとしても簡単に場所を移せるわけではありません。開業地域の傾向や開業形態による違いをしっかりと把握した上で、実際の物件を確認して決めましょう。開業地選定のポイントは以下のとおりです。

  • 開業エリアの傾向を知る
  • 開業形態の違いを知る
  • クリニック
  • 実際に物件を探す
  • 紹介された物件を確認する

開業エリアの傾向を知る

開業エリアの傾向を知っておくことは重要なポイントです。開業エリアは主に都市と郊外に分けることができ、それぞれ特徴が異なります。

都市

都市の場合、医療が飽和状態にあるため一般的な開業が難しい場合があります。都市での開業を希望する際は、高い専門性に加え、他の医院と差別化できる要素が必要になります。

また、固定費が高い点にも注意が必要です。

郊外

郊外の場合、競合医院が少ないため集客上有利に働きます。とはいえ、近隣にクリニックがなければ専門外の患者が来院することも多いため、幅広い対応が求められます。

なお、医院に適した建物は少なく、設備なども一から用意することが多いでしょう。初期費用が多く、開業までの時間もかかりやすい点に注意が必要です。

開業形態の違いを知る

開業形態の違いも知っておきましょう。開業形態はさまざまあります。

  • 戸建て開業(建て貸し、定期借地)
  • ビル開業
  • 医療モール
  • リースクリニック

戸建て開業の場合、どのような方法でも一から開業するとなれば多くの初期費用がかかります。また、土地や建物の契約期間がどれくらいなのかといったことにも注意が必要です。

なお、都市部ではビル開業が一般的で、比較的コストが抑えられる点がメリットです。しかし、電気容量の不足など、診療科によっては適さない物件もあるため契約時には内容をよく確認しましょう。

物件を探す

具体的な候補地と開業形態が決まった後は、物件探しを行います。物件探しは個人で行う以外にも、不動産会社や開業コンサルタントなどに依頼する方法もあります。

物件を確認する

候補物件を見つけた、または紹介されたら、実際に物件を確認しましょう。以下のポイントから、開業地として妥当か判断します。

  • 開業エリアの年齢層・人口
  • 開業エリアの交通の利便性
  • 競合医院の数や集客力

これらは診療圏調査を実施し確認してもよいでしょう。診療圏調査とは、候補地の来院数などを調査できる方法で、開業支援会社などで実施しています。

なお、選定時は資料のみで確認するのではなく、競合クリニックや土地の利便性など、現地での確認も大切です。

 

開業資金を借入れる

資金を全額用意できない場合は、金融機関から開業資金を借入れる必要があります。
全て借入れでまかなうことも可能ですが、自己資金をある程度用意しておいた方が開業後のゆとりにもつながるでしょう。
開業資金の額は医院の規模や開業場所により異なり、例えばビルのテナントで一般内科を開業する場合は、5,000~8,000万円程度の資金が必要です。

融資はメガバンク、地方銀行、政府系金融機関などから受けることが可能です。金融機関によって金利などの諸条件も異なるため、事前に確認し借入れ候補先を決定しましょう。

借入れ時は「事業計画書」などの各種書類の作成と、担当者との面談を行います。

金融機関から借入れする手順

金融機関から借入れを行う一般的な手順は以下のとおりです。

  • 事業計画書の作成
  • 金融機関担当者との面談
  • 銀行借入契約の締結

事業計画書の作成

金融機関担当者との面談に持参する事業計画書を作成します。事業計画書とは主に以下の内容をまとめたもので、融資審査の際、銀行側の判断資料になる重要な書類です。

  • 開業にあたり必要な資金総額とその調達方法
  • 事業内容や経営戦略
  • 開業後の収益の見込みと返済計画

なお、実際には損益を月ごとや勘定科目ごとに計算するなど、細かなシミュレーションにより現実的な計画を数字で表します。

事業計画書には決まった書式があるわけではないため、インターネット上で無料のテンプレートなどを活用することも可能です。作り方に迷う場合は税理士やコンサルタントなどに相談することをおすすめします。

金融機関担当者との面談

融資審査では書類の提出の他、金融機関担当者との面談も行います。面談では事業計画書の概要の説明や、これまでの経歴、クリニックの開業動機などを一通り説明します。

経営上の専門性が高い内容の説明も必要になるため、事前にしっかり準備しておきましょう。

銀行借入契約の締結

銀行によっても異なりますが、融資審査は2〜4週間程度かかります。無事に融資審査に通ったら、借用証書や同意書、契約書など、必要書類を準備し契約手続きを行いましょう。

融資金は契約後、3営業日程度で振り込まれます。融資後は、返済計画のとおり、毎月所定の元金と利息を返済していきます。

 

内装工事を依頼する

内装工事を行う際は、コストを抑えるためにも複数の設計事務所や施行会社に見積もりを取りましょう。また、医療機関の内装は放射線が漏れないようにするなど、独特の設備も必要となるため、経験のある業者への依頼がおすすめです。

内装はスタッフの動線を考えるだけでなく、患者が使いやすいことが大切です。例えば、近年のクリニックはバリアフリー設計が常識化しています。

内装はこだわればこだわるほど費用がかかってしまうため、事業計画書で策定した予算に収まるようにしましょう。設計事務所の担当者と面談の上、内装図面が確定したら、実際に内装工事を実施します。

クリニック名は開業届を提出するまで出せないため、ビニールシートなどで隠しておきましょう。

 

医療機器を選定する

レントゲンやエコー、内視鏡など、必要な機器を選定します。医療機器は購入するだけでなくレンタルすることも可能です。コストを考慮しながら、医院の形態や今後の展望などに合わせて選ぶとよいでしょう。

医療機器を購入する際は、同じ機器でもグレードに違いがあるため、医院に合ったグレードのものを選ぶことが重要です。

現在どのような医院でも必須となる機材が、電子カルテです。電子カルテは病院全体の連携を高め、業務の効率化にも役立ちます。

導入コストだけでなく、操作性やアフターフォローの充実度なども確認し、メーカーを選定するとよいでしょう。

内装工事が終わったら、選定した機材を搬入します。

おすすめの電子カルテについてはこちら:おすすめの電子カルテ比較【14選】特徴や料金など│bizne

 

スタッフを採用する

採用が必要なスタッフの業種や人数は、事業計画書に記載したものを基に決めていきます。賃金が低すぎると優秀な人材が集まらない恐れがあるため、相場も参考に適切な額を決めなければいけません。

募集方法はホームページや、新聞の折込み、人材募集サイトなどがあります。ハローワークは、開業前の求人は掲載できないので注意しましょう。看護師は人材不足が深刻なため、複数の媒体で募集を行うのもおすすめです。

応募があれば、面接を実施します。面接ではあらかじめ質問の内容をまとめ、評価項目を数値化した採点表も作成しておくと効率的に採用活動を行うことができます。

 

開業をPRする

新規開業時は、まず開業したことを知ってもらうことが大切です。以下のような方法で広告を出しましょう。

  • 医院のホームページ
  • 新聞折込み
  • ポスティング
  • 口コミ
  • 内覧会 など

近年では、受診する前にインターネットでどのような医院か確認してから来院する患者も増えています。そのため、患者目線で病院の特徴を分かりやすく記載したホームページの作成が欠かせません。

ホームページ作成の際は、Googleの検索品質ガイドラインの一つ「YMYL」を理解した作成そしてSEO対策が必須となります。
以下の企業では、クリニックのホームページ制作・SEO対策を得意としておりますので、ご覧ください。

また医院の場合、広告表記にはさまざまな規制があります。厚生労働省の「医療広告ガイドライン」(※)を確認した上で作成しましょう。
医院の広告で特に影響力が大きいのが口コミです。開業段階では口コミでの広告は難しいため、内覧会を実施し、医院の存在を近隣住人に認知してもらうとよいでしょう。

※出典:厚生労働省. 「医療法における病院等の広告規制について」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html

行政手続きを行う

開業前に複数の行政機関で手続きが必要です。中でも必須となる以下の2つの届出を解説します。

  • 開設届(保健所)
  • 保険医療機関指定申請(厚生局)

開設届

開設届とは、クリニックで自由診療の医療行為を行うために必要な届出で、保健所に提出します。(※)通常、内装工事が終わった後に提出するのが一般的です。

開設届の提出時は立ち入り検査を行うこともあります。この際、設備や管理運用方法などが確認されます。点検、指摘された箇所は改めなければいけません。

期限間近に提出すると開業日に準備が間に合わない恐れがあるため注意しましょう。

なお、開設届の提出期限は開設後10日以内です。

※出典:港区. 「診療所開設の手引き(個人開設)」.
https://www.city.minato.tokyo.jp/imuyakuji/kuse/egyokyoka/tetsuzuki/imu/documents/shinnryoujyokojin.pdf

保険医療機関指定申請

開設届が受理された後は、保険医療機関指定申請を厚生局に提出します。(※)届出が受理され「保険医療機関の指定」を受けると保険診療が可能になります。

なお、保険医療機関指定申請は受理までに1カ月程度かかります。また、提出期限も各月で定められているため、開業日から逆算して手続きを進めるようにしましょう。

※出典:厚生労働省 関東信越厚生局. 「保険医療機関・保険薬局の指定申請」.
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/ichiran_shitei_shinsei.html

医師の開業が難しいと感じたら支援サービスを活用しよう

医師が医院やクリニックを開業するまでには、コンセプト設計や資金調達、行政手続きなど、さまざまなステップがあります。さらに、経営や会計、税に関する知識が必要となる場面も多く、一人で全て行うのは非常に困難です。

開業準備の際にサポートが必要な場合は、開業支援サービスを活用するのがおすすめです。

MRTでは、医院やクリニックの開業支援サービスも行っています。開業形態に合わせた支援や専門性に特化したマーケットリサーチなど、幅広いサービスをご提供していますので、お気軽にご相談ください。

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