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【実体験】都心から地方へ転職した医師が語るメリット・デメリットとは?

更新日: 2026/08/21
【実体験】都心から地方へ転職した医師が語るメリット・デメリットとは?

一般的に医師の地方への転職については、そのデメリットが多く語られがちです。症例が少なく経験が積めない、指導医も少ない、医師数が少なく過重な勤務になりやすい、子どもの教育環境が充実していない、等でしょうか。しかし予め赴任先の状況を把握し、きちんと条件を整えておけば、デメリットの多くの部分は避けられますし、メリットへ転じることもあります。また全く異なる現場での経験は、その後の医師人生をより豊かにしてくれるかもしれません。

本記事では、都心から縁もゆかりもない地方への転職を経験した私が、その実態とよりよい転職を実現するためのポイントについてお伝えします。

<プロフィール>
大野史郎(総合内科・リウマチ膠原病専門医)
2009年地方国立大学卒業後、都市部の市中病院で初期研修を修了し出身大学へ入局。大学院修了後に自ら希望して地方僻地へ転職し、現在は再び地方都市で一般内科+専門科として勤務医を継続中。自身の経験から、地方勤務の経験はその後のキャリアの可能性を広げてくれると実感しています。

地方への転職を考えはじめた理由

私は市中病院で初期研修を修了し、その後出身校である地方都市の大学病院へ入局しました。内科医として研修をしながら、大学院で基礎研究にも携わるなど典型的な医局人としてのコースを歩みました。サブスペ専門医資格を取得、学位取得の目処もつき、それなりの充実感もありました。一方で敷かれたレールをひたすら走ってきただけの様な不全感もありました。この様な状況で、「さて次のキャリアをどうしようか」と考え始めた頃には医師10年目になっていました。

基礎研究を続ける意向はなく、貪欲にアカデミアでの地位を求めるほどの意欲も適正もないと自己分析。元々臨床志向でしたので、次は自分の臨床能力を高めるために今まで経験したことのない現場で働いてみようと考えました。

地方の転職先を探す方法

医局人事とは全く関係なく動いたので、自分の人脈や知り合いの紹介から探すことはできませんでした。まずは医師向けの求人サイトや病院独自の求人情報にあたり、求められる人材、給与水準など「相場感」を知る様に努めました。実際に紹介サービスを活用することはありませんでしたが、サイト内の転職に関するコラムなど、準備にあたって有用なことは多かったです。

その中で「僻地医療の研修」を提供することを目的に病院とのマッチングを行なっている団体にいき当たり、「どうせやるなら全く違う環境で」と思い地方へ転職することにしました。そこからはその団体にこちらの要望、希望条件を伝え、赴任先に病院を選定してもらいました。

スムーズだった医局への相談

実は大学院を修了した時点で、海外留学の打診もありましたが、先述の理由からお断りしました。勤務環境や給与面でも以前ほど医局に属し続けるメリットもないと感じていましたし、より主体的にキャリア形成をしていきたいとも思っていたからです。もちろん医局を離れることの不安もありました。その後医局の影響力のある地域での勤務が難しくなるかもしれない、仮に転職がうまくいかなかった際に後ろ盾が全くない状況でやっていけるのかといったその後のキャリアに対する不安や、同僚はじめ医局の仲間との交流が少なくなることへの名残惜しさもありました。ただそれでも、このタイミング踏み出さなければ今後も自ら動くことはできないだろう、という危機感の様なものが勝りました。

「医局で学んだことがどこまで通じるか腕試しをしたい。それは医局の評価にもつながるはず」という旨の話をして認めてもらいました。熱意が通じたのか諦められたのか、さして拗れることもありませんでした。それなりに医局内で仕事を全うしていたことを評価してくれたのかもしれません。

転職活動で苦労したこと

その一方で家族の説得はなかなか苦労しました。就学前の子がおりましたし、妻も子育て中に生活環境を大きく変えることに難色を示しました。結局単身赴任で期間限定ということで許してもらいました。幸い実親はまだ元気にしてくれていたので、遠方に赴任しても介護の問題は生じませんでした。その点でもよいタイミングの転職だったといえます。学生時代以来の単身生活でしたので、身の回りの準備にも手間がかかりましたが、住居の手配はじめ病院からのサポートもあり大きなトラブルなく進みました。

転職活動を上手く進めるためのポイント

赴任先でできるだけトラブルなく勤務できるかは、赴任前からの交渉、調整が重要だと自身の経験から実感しました。

まずはキャリアの現状と今後の希望を伝える

私の場合は、予め自分のそれまでのキャリアを包み隠さず伝え、専門医として対応可能なこと、および経験は乏しいが対応し得ること、未経験であるがぜひ新たに習得したい知識や技術について伝え、どの様な勤務体制とするか時間をかけて相談しました。

具体的には、内科については外来、入院とも専門分野によらず対応、救急、小外科やマイナー分野についても可能な範囲で対応するというものでした。内科、救急以外の対応をするのはほぼ初期研修医の時以来でしたが、最近は教科書やインターネット上など手軽に参照できるものも多く、意外となんとかなりました。僻地・地方の病院では、ジェネラルマインドを持った医師が歓迎されます。赴任時に新たなことに挑戦する意思を伝えておけば、周囲からのバックアップも得られやすいでしょう。

プライベートと仕事の両立を実現するための工夫

また単身赴任であることを考慮した勤務シフトも組んでもらいました。月数回休日勤務を行なうことで平日に休みを振り替え、1週間の連休を定期的にとることにしてもらいました。その休みを利用して帰郷したため、単身赴任でありながら長く家族と会えないということはありませんでした。また住まいも斡旋してもらうなど、事前準備は病院に大変お世話になりました。赴任を斡旋してくれた団体はこの様な交渉の際も適宜間に入ってくれました。自分1人ではなかなか気づかないこと、言い出しにくいことも調整してもらい非常に助かりました。

新天地でうまく馴染むために大切なこと

この様に準備をした上で赴任した訳ですが、病院にうまく馴染めるかどうかはやはり実際に勤務してからの取り組みが大切になるでしょう。特にローカルルールをいかに尊重するか、ということがまず重要だと思います。これは都市部、地方に関わらないことですが、病院によって諸々の方針が異なることは当然のことです。明文化されていなくてもその様な方針となった歴史的な背景もあるでしょう。よぼど医学的に誤ったことでない限り、まずはその病院の方針を尊重する、そして周囲からの信頼を得てから「自分の色を出していく」ことをお勧めします。幸い私の場合は病院が公私ともども協力的でしたので、大きなストレスなく勤務することができました。

地方転職のメリット&デメリット|隠さずお伝えします

地方転職を検討している方にとって、実際のメリット・デメリットが気になることかと思います。ここでは医師が気になるであろうポイントに絞り、メリット・デメリットを包み隠さずお伝えします。

メリット:格差が少ない医療情報と職場環境

これだけ情報を得る手段が充実した現在では、医療情報について都市部と地方の格差はほとんどありません。適切なリソースを利用すれば、地方であっても最新の情報に触れることは難しくありません。勉強会やよりカジュアルな人的交流もWebやSNSで繋がることができる様になっています。実際私も定期開催されている地域医療のWeb勉強会に参加していました。もはや情報の格差は居住地域ではなく自分がどれだけ積極的に動くかにかかっており、この点は都市部であっても同様でしょう。

勤務環境についても私の場合は問題となりませんでした。平日、休日とも院外から当直医を招いておりましたので、当直の当番は月当たり平日2~3回、休日1回程度で済みました。上層部、事務方に「常勤医を守る」という意識が共有されており、過去に医師の確保で苦労した病院ならではだと感じました。

周辺知識が増えることで高まる専門性

専門的な症例の数はやはり少なく、専門性を発揮する機会はどうしても少なくなりました。それでも「専門性を支える裾野となる知識、能力を身につける場」と捉え直せば、自身の専門性と全く関連がない訳ではありません。

実際私の場合も、周辺知識が増えることで自身の専門分野がより見極めやすくなった気もします。専門研修の際には「自分の専門と他分野との境界領域を見極め適切に対応すること」こそが、専門家の最も重要な能力であると教えられてきました。そういう意味では地方でそれまでと異なる経験を積んだことは、結果的に専門性の向上にもつながりました。地方での勤務を継続するなら「専門分野をもったジェネラリスト」という地方で最も望まれる医師になれますし、後に都市部に戻ったとしても「ジェネラルな対応もできる専門家」として専門性により深みがでるでしょう。いずれにしても地方での経験は臨床医としてプラスになります。最近では、高度急性期向けの病床の削減、高齢者救急への対応強化などの政策誘導もあります。個々の医師もその様な変化に対応するために、率直にいえば今後様々な病院から必要とされる人材になるためにも、地方の経験は有益だと思います。

デメリット:学会へのアクセスの減少

ここまで良いことばかりお話ししていきましたが、デメリットももちろんありました。学会参加は、やはり以前ほど自由にはいけませんでした。院内のスタッフの数も少ないので、周りから自然と新たな医学知識を得ることは少なくなりがちです。その様なデメリットをできるだけ克服するには、先述の様に自分から積極的に繋がりを作ることが必要です。

可視化される働き方の評価

また「常勤医を守る」意識が強いことの反映として、医師の働きもきちんと評価されます。期間毎に外来・入院の担当患者数や救急対応件数など数値目標を定め、常にその達成状況を評価されました。厳しく聞こえるかもしれませんが、医師としての自身の貢献が可視化、適正に評価される様になり、私にとっては満足のいくものでした。医局と病院の馴れ合いの様な基準がはっきりしない事情で物事が動くより、よほど納得できました。働く環境が異なることに抵抗を感じる先生にとってはストレスとなり、デメリットになるかもしれません。

プライベートの刺激は少ない

生活環境に馴染めるかは人それぞれでしょう。日々の生活で都市部の様な刺激はやはり少なめです。食事をする店にしても選択肢は限られ、何度か行けば知り合いだらけ。人付き合いが苦手な方はちょっと辛いかもしれません。そのためにも予めまとまってその地域を離れられる時間を定期的に確保することは重要でしょう。娯楽に関してもなにか1人でリフレッシュできる趣味があった方がよいでしょう。私の場合はランニングが趣味だったので、ストレスが溜まってくるとひたすら走っていました。自然の多いところだったので、ランニングコースには事欠きませんでした。

まとめ

みると結構楽しいものですし、勤務環境も都市部より恵まれている病院もたくさんあります。しかしただ闇雲に飛び込むだけでは「こんなはずじゃなかった!」となりかねません。

よりより地方勤務のためには、事前の準備が非常に重要です。勤務時間や給与はもちろん、自身の希望、譲れない条件などを予め伝えて交渉しておきましょう。ひと昔前の医局人事での異動では、ある日突然転勤が決まり労働条件も働き始めてから初めて知るなんてこともありましたが、もはやそんな時代ではありません。人脈に頼った場合も、無理を頼まれても断りにくいなど、不便が生じることもあります。

ぜひ積極的に情報を集めて地方勤務にチャレンジしてみてください。

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