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若手医師のホンネ座談会前編―令和版若手医師の働き方、キャリアの理想と現実

更新日: 2026/08/21
若手医師のホンネ座談会前編―令和版若手医師の働き方、キャリアの理想と現実
2004年の初期研修制度の開始から20年余り。医師の教育体制が整い、キャリアの選択肢は大きく広がりました。さらに2024年4月には医師の働き方改革が本格施行され、勤務医にも時間外労働の上限規制が導入されています。長時間労働を前提としてきた医療現場は、大きな転換点を迎えています。時短常勤や非常勤、フリーランスやスポット勤務、オンライン診療など、働き方の選択肢はかつてなく多様です。
一方で、選択肢が増えたからこそ、本当にやりたいことを見失い、理想と現実のはざまで悩む若手医師も少なくありません。今回、内科・産婦人科・形成外科という異なる領域で働く3名の若手医師が集まり、普段は語れない本音を語り合いました。本記事では、専門医取得までの軌跡、令和版の若手医師の働き方、そして若手が抱えやすい悩みやキャリアの分岐点をお伝えします。

座談会参加医師の紹介

ないぱぱ(内科・総合診療医/医師8年目)
大学医局に一度も属さず、市中病院で一般内科・総合診療を担う。既婚で、まもなく第一子が誕生予定。奨学金の義務年限を消化中。以前の職場で体調を崩した経験から、当直は月1〜2回。バイトはオンライン診療を時々行う程度で、メインは現在の勤務先。

ユッケ(産婦人科・麻酔科医/医師9年目)
産婦人科専門医の取得後に麻酔科研修を経て、現在は胎児診断クリニックで国内留学中。既婚で子どもあり。大学医局は一時的に離れ、留学後に戻る予定。週2回ほど自分で探した当直バイトに入り、時折スポットで訪問診療も行う。

se(形成外科医/医師9年目)
大学医局に所属し、地方の関連病院を中心に研鑽を積む。専門医取得後、市中病院の形成外科で勤務。独身で現在婚活中。当直は常勤先で月1〜2回。当直やオンライン診療などのバイトを経て、今は自由診療を学ぶため美容クリニックで非常勤をしている。

現在の立ち位置とそこに至るまでの軌跡

――まずは自己紹介を兼ねて、今の立ち位置とそこに至るまでの軌跡を教えてください。専門医の取得までに、どんな道のりを歩んできましたか。

ないぱぱ:私は大学病院に一度も属さずに内科専門医を取得しました。内科に進んだ人の8〜9割は医局に入る印象なので、マイナーなルートだと思います。理由は以下の3つですね。

①総合診療を幅広く学びたかった
②医局の雰囲気が合わないと思った
③研究より臨床をやりたかった

転勤の多さや人間関係など、自分でコントロールできない要素が増えるのが性に合わなくて。奨学金の関係で初期研修と今の勤務先は指定病院ですが、専門医研修は今の病院ではできず、有名な病院を見学した上で、知り合いの先生の勧めで決めました。

ユッケ:私は産婦人科専門医を取った後に、麻酔科研修を2年しました。科の中では珍しいと思います。地域柄、麻酔科に麻酔を頼むのが当たり前で、そのもどかしさから「自分で無痛分娩の麻酔をやりたい」と思ったのが動機です。

良かったのは総合力が上がり、バイトの幅や人脈が広がって視野が開けたこと。
苦しかったのは、産婦人科に割ける時間が減り、同期との差が広がるように感じたこと、ロールモデルがほぼいないことですね。それでも、興味のある分野を仕事にできるのは幸せです。

se:私は初期研修後に大学医局へ入り、地方の関連病院を転々としながら研鑽を積みました。ただ、専門医を取ることがゴールになり、取得後に何がしたいのかわからなくなった時期があって。育ててくれた医局には感謝していますが、転勤や人間関係を思うと、病院のプログラムに所属する道も考えればよかったな、と今になって思います。

【令和版】若手医師の働き方

――今の働き方は、ご自身が理想とする働き方と比べていかがですか。理想と現実のギャップも含めて、率直に教えてください。

ユッケ:今は理想へのプロセスの真っ最中ですね。「専門性を極めるための投資の期間」と割り切り、数年はやりたいことに浸かるつもりです。忙しいながらも充実しています。ただ、リアルなギャップは、子どもとの時間が全然足りないこと。明確なレールがない分、働き口が不透明で、将来への漠然とした不安もあります。給料も正直、医局員のときのほうが良かった。それでも「人生一度きり、なるようにしかならない」というマインドで生きています。

se:その言葉、今の自分と重なります。私も保険診療を週4日、美容の外勤を週2〜3日で、給料を諦めて学ぶことに専念しています。美容は非常勤だと指導を受けにくいので、あえて丁寧に教えてくれる職場を選び、技術習得を優先しています。高収入のバイトを選ぶ周りを見ると焦りますが、判断できるのは技術が身についてから。まだ程遠いですが、理想は週3日ほど保険診療、週1〜2日は自由診療、残りは産業医や予防医学、創作活動にも関わることですね。

ないぱぱ:私もse先生と同じで「ひとまず内科専門医を取る」が目標でした。今は奨学金の義務年限を消化中ですが、その後どうしたいかはよくわかっていません。「理想の働き方」が何かも正直曖昧で。ただ、当直で体調を崩した経験があるので、2〜3次救急や当直は避けたい。プライマリケアや慢性期、緩和ケアが相性良さそうで、産業保健にも関心があります。根底に「あまり働きたくない」があるのかもしれません(笑)。半年以内に子どもが生まれる予定なので、家族との時間も多く取りたい。今は救急も当直もあり、理想とは程遠い状況です。

若手医師が抱えやすい悩みー仕事とプライベートのバランスー

――キャリアの選択に加えて、仕事とプライベートのバランスや将来への不安も、若手に共通する悩みだと思います。実際のところ、いかがですか。

ないぱぱ:自分はかなりプライベートのウェイトが大きいタイプです。仕事は「プライベートを豊かにするための手段」という感覚が強くて。以前はもっと働かなければと思っていましたが、体調を崩してから、自分にとって何が大事かを整理するようになりました。まだバランスは模索中ですが、無理をしすぎず、仕事も私生活もそこそこ楽しめる形を見つけたい。ただ、医師余りの時代に生き残れるのかという不安もあり、無理のない範囲でも専門性は伸ばさないと、とは考えています。

se:私はレジデント時代、完全に仕事一筋でした。ところが地方を転々として大学に戻ったとき、給料が1年目とほぼ変わっていなくて。後輩が早く帰って家族と過ごすのを横目に「この5年間、何をやってきたんだろう」と初めて立ち止まりました。今は家庭がほしくて婚活中ですが、正直、仕事のほうがずっと楽で、婚活のほうが難しい(笑)。「プライベートの大切さにもっと早く気づくべきだった」と後輩には真っ先に伝えています。

ユッケ:お二人の話を伺い、優先順位は違っても、有限な体力と時間の配分に真剣に向き合う点が共通しているなと感じました。私もいろいろ興味が湧くタイプなので、「やらないこと」の基準を持つのは、プライベートの確保にも大事だと思います。好きなこと・興味のあることしか続かないので、それをライフワークにしつつ、収入はスポットの働き方をパズルのように組み合わせて補えたら、と。やはり「家族との時間あってこその人生」なので、投資期間が一段落したら、少し比重を家族に移したいですね。

若手医師が直面するキャリアの分岐点ー保険診療と自由診療の観点からー

――働き方を左右する分岐点として、保険診療と自由診療のどちらに軸足を置くか、という選択があります。科によっても距離感が違いそうですね。

ないぱぱ:保険診療に関しては皆さんある程度イメージはあるかなと思いますので詳細は省きます。内科診療のフィールドとしては病棟、外来、訪問診療、健診などがあります。最近はオンライン診療中心の先生もいます。内科分野の一部の自由診療に関しては、現時点では、適応やエビデンスの乏しい治療もあり、有効性や安全性について十分なエビデンスが得られたら携わりたいと思い、保険診療に比重を置きました。私自身は病院勤務が9割、オンライン診療が1割。例外的に許可されていますが、勤務先は原則アルバイト禁止で、他の仕事を増やせない状況です。地方で求人も少ないので、今はオンライン診療くらいが現実的ですね。

ユッケ産婦人科(胎児医学)や麻酔科では、出生前診断や無痛分娩が自費診療の枠組みなので、日々深く関わらざるを得ません。もともと自費と保険のハイブリッドが多い科なので、比較的フラットに関われている気がします。営利目的ではなく「高度な専門医療の提供と選択肢の拡充」が目的なので、丁寧なカウンセリングや結果へのコミットが求められます。トレンドやマーケティング主導ではなく、本当に価値を感じてくれる患者さんに、医療の質を最大化して関わり続けたいですね。

se形成外科は、今や自由診療と切っても切れない関係です。美容外科の常勤のほうが給与は良いことが多いのですが、私はまだ自由診療のみに絞る決意はできていません。長く保険診療をしてきた身として、適応しきれない部分もあります。ただ、痤瘡や傷跡、顔面神経麻痺など、保険診療だけでは諦めざるを得なかった患者さんに、自由診療が新たな選択肢になる場面も多く見てきました。保険という枠を超えてベストな選択肢を考えられる点に、意義を感じています。一方で大変なのは、片手間に習熟できないこと。すでにレッドオーシャンで、技術や知識に加えSNSやマーケティングも学ばないと生き残れない点もハードルです。割合は未定ですが、私自身は今後も関わり続けたいと思っています。

キャリアに正解はない。自分の軸で時間と体力の配分を

前編では、3名の医師の軌跡と働き方、悩み、そして保険診療か自由診療かという分岐点をお伝えしました。共通していたのは、限られた時間と体力をどう配分し、自分らしいキャリアをどう築くかという問いに、それぞれが真剣に向き合っている姿勢です。キャリアに決まった正解はなく、価値観やライフステージに応じて模索していくものですね。後編では、5年後・10年後の未来像、周囲の動向、悩んだときの相談先、そしてアルバイトに関して話していきます。

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