脳外科は脳や脊髄、神経などの外科的治療を専門とする科です。対象となる症例には脳梗塞やくも膜下出血など命に関わる重大疾患も含まれるため、外科施術に対応する病院の医師は多忙を極めます。
そんな脳外科医の平均年収は一体どのくらいなのでしょうか。本記事では脳外科医の年収の目安や主な働き方、セカンドキャリアについて解説します。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が実施した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、脳外科医の平均年収は約1,480万円です。(※)
主な診療科別(その他含む13科)の中では最も収入の多い科です。「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、年収別の割合は以下のとおりです。(※)
年収 | 割合 |
300万円未満 | 1.0% |
300~500万円 | 3.9% |
500~700万円 | 2.9% |
700~1,000万円 | 10.7% |
1,000~1,500万円 | 21.4% |
1,500~2,000万円 | 40.8% |
2,000万円以上 | 19.4% |
500万円未満の割合はわずか5%程度に留まり、8割以上が年収1,000万円以上です。13科の平均年収が約1,267万円であることからもわかるとおり、脳外科は主な診療科の中でも特に年収の高い専門科と言えます。
なお、脳外科の平均月収は99.5万円で、月収別の割合は以下のとおりです。(※)
月収 | 割合 |
40万円未満 | 8.1% |
40~50万円未満 | 4.9% |
50~100万円未満 | 29.3% |
100~150万円未満 | 41.5% |
150万円以上 | 15.4% |
月収が50万円未満の割合は約1割強に留まっており、8割以上の人が50万円超の月収を得ています。さらに半数以上の人が月収100万円を超えており、他の診療科に比べて高収入であることがうかがえます。
脳外科専門医になるためには、2年間の研修を終えたあとに研修プログラムを通算で4年以上受ける必要があり、研修を修了すると専門医認定試験を受験することができます。独り立ちする頃には30代半ばを過ぎているケースが多いため、専門医認定試験合格後にどれだけ症例や手術の経験を積めるかがポイントです。
脳外科の症例経験を積める施設は大学病院や関連施設などに限られるため、医局に在籍して経験を積むケースが多くみられます。また、大きな病院で外科手術などを行う脳外科医の場合、オンコール対応や時間外労働、日当直なども多いため、日々の生活は多忙になりがちです。
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、脳外科医の週当たりの平均労働時間は53.3時間で、主な診療科では救急科に次いで長い時間です。(※)週あたりの労働時間の割合は以下のとおりです。
労働時間 | 割合 |
20時間未満 | 4.9% |
20~40時間未満 | 6.6% |
40~50時間未満 | 24.6% |
50~60時間未満 | 23.8% |
60~70時間未満 | 21.3% |
70~80時間未満 | 10.7% |
80時間以上 | 8.2% |
4割以上が週あたりの労働時間が60時間を超えているということからも、時間外労働が多い診療科であることがうかがえます。70時間超に限っても2割近い割合を占めており、働く場所によっては心身に大きな負担がかかるでしょう。
脳外科の週当たりの労働時間が長い理由について、救急搬送の患者が多いことがひとつ挙げられます。特に脳血管障害や脳腫瘍などは一刻を争うこともあるため、労働時間外でも呼び出されたり、緊急手術に対応したりしなければならないことがあります。
そのため加齢によって心身の衰えを感じるようになると、外科手術をともなう第一線を退き、新たなキャリアを選択する医師も少なくありません。脳外科医として長く活躍したい場合は早めにキャリアプランを考えたうえで、行動することが大切です。
脳外科医は脳や脊髄、神経に関する疾患の診断および治療を行うのが主な業務内容です。例えば脳血管障害や脳腫瘍、脊髄空洞症、頸椎症、てんかん、パーキンソン病などの診断・治療のほか、認知症の予防も脳外科医の業務の範疇です。また脳血管障害の予防や早期発見・早期治療のために、脳ドックや高血圧症の治療に携わることもあります。
開頭手術やカテーテル治療といった外科手術の他にも、症状によっては薬物治療や放射線治療、陽子線治療を行うことや、術後にリハビリテーションを実施することもあります。
特にリハビリテーションについては、実際にリハビリをサポートする理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などとコミュニケーションを取り、一丸となってリハビリを継続することが必要です。また、脳外科医の外科手術は非常に専門的かつ難度が高いため、常に知識・技術のアップデートが求められます。
学会への参加や、独学などでスキルアップを目指すのも脳外科医の重要な役割です。
脳外科は前述の通り多忙を極める専門科のため、早いうちからセカンドキャリアに進む方も少なくありません。その後のキャリアは人によって異なりますが、一般病院や診療所で外来診療を行ったり、予防医療の道へと進んだりするケースが多くみられます。また他科からのコンサルト依頼を受けて働くというケースや、病院のリハビリテーション科への転職というケースもあります。
一方、独立開業するというのも選択肢のひとつです。個人病院でもMRIやX線、心電図などを導入すれば各種検査を行え、検査結果に応じて適切な治療や指導を実施することも可能です。多くの人は頭痛やめまいなどの症状を感じた場合、大きな病院ではなく個人病院やクリニックを受診するため、ある程度の集患も期待できるでしょう。
一般的に外科手術は行わないため、重疾患の患者のオンコールや急患に対応することもなく、比較的ゆとりのある働き方を続けられます。しかし一人で診察から治療まで担当するとなると、心身にそれなりの負担がかかります。
開業医は自分の裁量で治療方針や働き方を決められるところが利点ですが、時間や体力に余裕ができるかどうかは、雇うスタッフの人数や処置範囲などにより異なります。勤務医を続けるか開業するか、自分のライフプランやキャリアプランに合わせてじっくり検討することが大切です。
現在の働き方を見直したい方、セカンドキャリアを考えている方が転職を検討する際に押さえておきたいポイントを4つ紹介します。
現在の職場がハードワークすぎて転職を考えたいという場合は、転職先のオンコールや当直の有無などをあらかじめ確認しましょう。
オンコールの状況は診療科によって異なりますが、脳外科はその性質上他科に比べると圧倒的にオンコールが多く、「オンコールのある働き方をしている」と回答した人の割合は97.6%と主な診療科の中でトップです。(※)なお、オンコールのある働き方をしている脳外科医の月あたりのオンコールの出勤回数の割合は以下のようになっています。
オンコールの回数 | 割合 |
0回 | 14.2% |
1~3回 | 49.2% |
4~6回 | 21.7% |
7~9回 | 5.0% |
10回以上 | 10.0% |
休暇の取りやすさについても考慮することが大切です。脳外科の年次有給休暇取得日数の割合は、「0日」と「1~3日」がそれぞれ27.6%で最も多く、3日間以内の人だけで半数を超えています。(※)
2019年4月1日からは働き方改革法改正にともない、年次有給休暇が年10日以上付与される労働者について自ら申し出て取得した日数や計画的付与で取得した日数を含め、年5日取得させることが義務づけられました。(※)
ただし年5日のラインを超えた分については取得が義務化されていないため、有給休暇を取れるか否かは労働環境に左右されます。体に負担をかけ過ぎずに働きたい場合は、オンコール状況や日直・宿直の有無、休暇の取得のしやすさなどをよく確認してから転職先を選びましょう。
※出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構.「勤務医の就労実態と意識に関する調査」.https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf,(入手日付:2023-2-20).
※出典:日本医師会.「働き方改革法改正で何が変わるの?」.https://www.med.or.jp/dl-med/kinmu/hatarakikata_leaflet1.pdf,(入手日付:2023-2-20).
脳外科医としてスキルアップすることを望んでいる場合は、手術経験を多く積める場所を選ぶことが大切です。具体的には大学病院や急性期病院、専門病院などが主な候補となります。
大病院ほど設備は充実していますが同じ脳外科医の在籍数が多い場合、手術をこなす回数が少なくなることもあります。また手術環境だけでなく、教育や指導の体制が整っているかどうかも重視したいポイントです。
脳外科の仕事には看護師を初め放射線技師や理学療法士、作業療法士など他科のスタッフとのコミュニケーションが必要不可欠です。他科との連携の仕方や職場の雰囲気は医療機関ごとに異なりますので、現地を見学したり人事担当者に尋ねたりして、事前にしっかり確認しておきましょう。
脳外科医は高い技術力と豊富な経験を求められる専門科です。その分、平均年収は約1,480万円と高めですが、時間外労働や日直・宿直、オンコール対応なども多いため、かなりのハードワークを強いられる場合があります。実際、心身に衰えを感じ始めた脳外科医は、負担の少ない職場に移るなど、セカンドキャリアを早めに検討する傾向があります。
一方、脳外科医としてよりスキルを磨きたいという場合でも、職場によってはチャンスに恵まれず、経験を積めない状況にあることも珍しくありません。脳外科医として働き方を見直したいと思ったら、他の職場を探す、専門科を変えるなど転職や転科の道を探してみるのもいいでしょう。
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