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医師アルバイトを業務委託にすることで節税は可能?

更新日: 2025/05/20
医師アルバイトを業務委託にすることで節税は可能?
医師アルバイトとして働いて受け取る給与が大きいと、どうしても納税額が大きくなります。業務委託の場合は、経費計上が可能であるため、所得税を減らすことができれば節税が可能です。しかし、医師が労働の契約をアルバイトから業務委託にしても節税は難しいとされています。その理由についてご紹介します。

支払う税金が多いと、納税額をできるだけ抑えたいと思われるかもしれません。医師の仕事は、経費計上が難しい雇用契約である場合が多いため、節税が困難です。では、経費計上が可能な業務委託契約にすれば節税はできるのでしょうか。確かに、業務委託であれば経費計上は可能ですが、そもそも医師の仕事は業務委託契約として認められない場合が多いとされています。
本記事では、医師の労働の契約をアルバイトから業務委託にしても節税は難しいとされている理由について解説します。

 

結論:医師の場合はアルバイトから業務委託にしても節税は難しい

医師が医院でアルバイトとして働く場合、労働の契約として雇用契約を結びます。アルバイトではなく、業務委託として働く場合は、業務委託契約を結びます。雇用契約と業務委託契約はともに労働の契約ですが、細かな部分が異なる点がポイントです。
雇用契約と業務委託契約では、労働の対価としてお金を受け取ります。それぞれ、雇用契約では給与、業務委託契約では報酬を受け取り、後者の場合はかかった経費を差し引いた所得を自ら申告して税金を支払います。

経費が多ければ、それだけ課税対象となる所得が小さくなるため、節税が可能です。一方でアルバイトの場合は、働き先の医院が年末調整を行い、納税額を決定します。働き手の方で経費計上を行うことはほぼ不可能です。

以上を踏まえると、医師が雇用契約を結んでアルバイトとして働くより、自分で経費計上ができる業務委託契約の方が、節税効果が期待できると思われるかもしれません。
しかし、実際には医師が業務委託契約で節税効果を得るのは難しいとされています。経費計上や控除の問題ではなく、そもそも医師として働く都合上、受け取るお金は報酬ではなく給与と見なされることが多いためです。

 

雇用契約と業務委託契約の違いは?

なぜ医師が受け取る賃金が業務委託契約を結んでいても給与として見なされてしまうのか。そちらを詳しく理解するために、まずは雇用契約と業務委託契約の違いについて解説します。

雇用契約と業務委託契約の違い

労働の契約は、主に「業務委託契約」と「雇用契約」に分かれます。簡単にまとめると、以下の表のようになります。

業務委託契約 雇用契約
支払うお金の種類 報酬 給与
所得の種類 事業所得もしくは雑所得 給与所得
開業の可否 開業可 開業不可
青色申告の可否 開業の上で青色申告が可 青色申告不可
節税の可否 経費を使った節税が可 節税はほぼ不可
※参考:厚生労働省「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/index.html

次に、業務委託契約と雇用契約について具体的にどのように区別されるのか見ていきましょう。

アルバイトとして働く際は雇用契約を結ぶ

雇用契約はアルバイトの他、一般的な会社員や病院で勤務医として働く際に結びます。すなわち雇用契約とは、労働者側が働くことに従事し、契約する相手の使用者が給与を支払う契約形態です。
雇用契約の場合、労働基準法が適用される点がメリットとして挙げられます。これにより、労働者側の立場がある程度守られるのがポイントです。

一方で、受け取るお金は給与、所得の種類は給与所得として扱われる点が業務委託契約と大きく異なります。給与所得は一般的に経費計上がほぼ不可能なほどに難しいとされています。理由は、給与所得の場合、すでに「給与所得控除」という形で経費が概算で控除されているためです。この控除は、収入に応じて一定額が差し引かれる仕組みで、個別の経費を追加で計上する必要がないように設計されています。

また、業務委託契約のように開業することもできないため、確定申告は不要です。

能力を提供して対価を受け取る際は業務委託契約を結ぶ

業務委託契約とは、法の観点からは準委任契約あるいは請負契約に分類されます。

準委任契約とは、一定の事実行為に関して委託する契約を指します。また請負契約とは、仕事を完了させるべく相手に依頼し、それに対して報酬の支払いを約束する契約です。
雇用契約と比べると、報酬を支払う側である取引先と自分の能力を提供する側が対等な立場である点が異なります。報酬の場合、扱いとしては事業所得や雑所得となり、仕事を完了させるためにかかった経費の計上が認められます。
しかし、業務委託契約では労働基準法が適用されない点には注意が必要です。

雇用契約と業務委託契約で受け取れるお金の違い

先述のように、雇用契約であれば給与、業務委託契約では報酬として、それぞれ労働に対する対価を受け取ります。また、給与や報酬は、それぞれ給与所得、事業所得として扱われます。
同じようにお金を受け取りますが、給与所得と事業所得ではそれぞれ扱い方が異なることも覚えておきましょう。

給与所得の場合は、働く曜日や時間があらかじめ決まっており、毎月決まった金額を受け取ります。一方、出勤時間は各々の自由であり、成果物に対して報酬が支払われるのが事業所得です。

 

雇用契約と見なされる条件

たとえ契約形態が業務委託契約であったとしても、働き方の実態次第で雇用契約と見なされる場合があります。ポイントは、契約を結ぶ当事者が「労働者」性を有しているかどうかです。
労働者の定義については、労働基準法の第9条で定められています。(※)労働基準法の第9条によれば、職業に関係なく、事業あるいは事業所で使用され、賃金が支払われる者が労働者です。これだけではやや曖昧な部分がありますが、昭和60年になされた労働基準法の研究報告の中で、より明確な基準が提示されています。

  • 仕事を断れない立場にいる
  • 仕事に対する取り組み方について指示や監督を受ける
  • 働く時間や場所が定められている
  • 自ら働くことが必要(外注ではない)
  • 働いた時間に対して給与が支払われる(成果報酬ではない)

これらの条件を満たす場合、雇用契約に該当する労働者だと判断されやすくなります。

※参考:e-Gov法令検索. 「労働基準法」.
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

業務委託として認められない例

医師が業務委託契約を希望しても、認められない例もあります。ここでは業務委託として認められなかった事例を紹介します。

勤務医のアルバイト

アルバイト先の病院に雇用契約から業務委託契約へ変更できないか交渉し、形式上は業務委託契約として勤務していた医師もいました。しかし、税務署の調査が入った結果、雇用契約と認定されると、追加徴税の可能性が生じます。

業務委託契約と雇用契約の判断は、契約の形式ではなく、実際の働き方の実態が重要です。たとえ業務委託契約を結んでいても、実態が雇用契約に近い場合は、雇用契約とみなされ、労働基準法などが適用される可能性がある事に注意が必要です。

※参考:楠本人事労務研究所「その業務委託契約は本当に業務委託契約ですか?」
https://kusumotosrlab.jp/social_worker1/20230531100222/#:~:text=%E6%A5%AD%E5%8B%99%E5%A7%94%E8%A8%97%E5%A5%91%E7%B4%84%E3%82%92%E5%88%A9%E7%94%A8,%E7%B7%A0%E7%B5%90%E3%81%99%E3%82%8B%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

麻酔科医のアルバイト

以前は業務委託契約で働く麻酔科医もいましたが、2012年に東京地裁は、病院やクリニックからの報酬を給与として受け取らずに法人口座へ振り込んでいた麻酔科医について「その報酬は給与所得に該当する」と判断し、業務委託契約の否認を認める判決を下しました。

この判例を踏まえると、現在では麻酔科医がアルバイトとして業務委託契約を結ぶことは難しくなっていると言えるでしょう。契約形態を決める際には、税務上の取り扱いや法的なリスクを十分に考慮する必要があります。

※参考:M&Mコンサルティング「【判例】業務委託契約を「給与」と否認された事例。事業所得はリスクを負うこと」
https://tenpo-syukyaku.com/2021/01/18/%E3%80%90%E5%88%A4%E4%BE%8B%E3%80%91%E9%BA%BB%E9%85%94%E5%8C%BB%E3%81%8C%E6%A5%AD%E5%8B%99%E5%A7%94%E8%A8%97%E5%A5%91%E7%B4%84%E3%82%92%E3%80%8C%E7%B5%A6%E4%B8%8E%E3%80%8D%E3%81%A8%E5%90%A6%E8%AA%8D/

産業医のアルバイト

産業医として業務委託契約で働く医師もいましたが、裁判所や国税当局の判断により、個人で請け負う場合は給与所得に該当するとの結論が示されています。
例外的なケースも存在しますが、一般的には産業医業務は給与所得として扱われるのが原則となるでしょう。契約形態を検討する際は、この判断を踏まえて慎重に対応することが求められます。

※参考:日本嘱託産業医学会「37号告示:産業医業務委託契約の偽装請負における判断基準」https://jseo.jp/2025/02/24/37-kokuji-kaisetsu/

業務委託として認められる例

医師は多くの場合、業務委託契約を結んでも雇用契約だとみなされます。医師といっても、仕事の内容は様々です。内容によっては、業務委託とみなされることもあります。
業務委託として認められる4つの例について、ご紹介します。

条件を満たした場合の産業医

産業医は基本的には給与所得であるため、雇用契約と見なされますしかし、他の診療科とは事情が異なる部分があり、条件次第ではその場に限って業務委託と見なされるケースがあります。

産業医の契約は、医療施設で雇用契約を結ぶケースと、開業医が産業医契約を結ぶケース、医療法人を開業した医師が産業医契約を結ぶケースの、3つの種類があるのが特徴です。

1つ目が、医療施設で雇用契約を結んで働く勤務医です。病院や診療所と雇用契約を結び、その場で働きます。雇用契約を結んでいるため、受け取るお金は給与所得です。

2つ目が、開業医として働いている方が、医療施設と産業医契約を結んで働く場合です。開業医として働くには、個人事業主か医療法人のどちらかを選ぶ必要があります。個人事業主の開業医で働いていた場合、産業医契約を結んだその医療施設から受け取るお金は給与所得と見なされます。

3つ目が、医療法人として開業した医師が、医療施設と産業医契約を結ぶ場合です。医療法人の開業医として別の医療施設と産業医契約を結び、受け取るお金が医師個人ではなく、医療法人に入る場合に限り、業務委託契約と見なされます。

以上のように、条件次第で産業医は雇用契約ではなく業務委託契約を結ぶことが可能です。とはいえ、自分が医療法人を持っている必要があるため、ハードルは高いでしょう。

コンサルタント

コンサルタント業は、多くの場合、業務委託契約と見なされます。中でも広く知られているのが、労働衛生コンサルタントです。相手の要求に応じて、労働者の衛生の水準を上げるべく、事業場の衛生に関する診断や指導を行います。労働衛生コンサルタントとして働くには、専門の資格が必要です。

既に産業医の資格を持ち、長く実務を経験してきた医師が労働衛生コンサルタントの資格を取得し、医療施設とコンサルタント契約を結ぶケースがあります。この場合は、業務委託契約に該当するでしょう。

産業医だけでなく、医療訴訟に関するコンサルティングも業務委託契約として見なされます。

CRやMRIといった遠隔読影

自宅で自分が所有している機材を用いた場合に限り、遠隔読影は業務委託契約と見なされます。

業務委託契約としてCRやMRI、US、ECG、XPといった遠隔読影を行えるのは、放射線科の専売特許とされてきました。近年では、さまざまな診療科で遠隔読影の参入が可能です。
CTやMRIについてはこれまでと同様に放射線科の場合が多いですが、腹部エコーであれば消化器内科、頸動脈エコーは神経内科や脳外科などで扱われます。

その他にも、心電図・心エコーは循環器内科、胃透視は消化器内科や一般外科といったように、さまざまな診療科で業務委託契約として遠隔読影で働くことが可能です。

講演料や執筆料

医師として講演会に出席したり、本を出版したりすると、それによって講演料や執筆料、印税などが受け取れます。
こういった形で受け取るお金は給与ではなく報酬であり、業務委託契約と見なされます。

例えば、講演会に出席することになった場合、そのために必要な勉強やセミナーの他、移動のためにかかった移動費や旅費についても経費として計上できます。

また、教科書や本などを執筆する際も同様で、勉強やセミナー、移動費、旅費の経費計上が可能です。

 

医師は基本的に業務委託契約を結んで働くのが難しい

業務委託契約を結べば、経費計上によって課税対象となる所得額を減らすことで、ある程度の節税効果が見込めます。働いて受け取るお金が大きい方にとっては、できるだけ節税について考えたいところかもしれません。

しかし、医師の場合はたとえ業務委託契約を結んでいても、働き方の実態から雇用契約として見なされることが多いことを覚えておきましょう。

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